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第5話

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領地経営は思いの外大変だった。

でも、何故かセドリックは自らやって来ては私を助けてくれる。

「貴方、私が困っている時に限ってタイミング良く現れるのね?」
と私が少し驚いたように言えば、

「何となく分かるんだよ。お前の困りそうな時がさ」
とまるで超能力者の様な事を言っていた。

だが、彼はこの国の宰相だ。
自分の仕事で手一杯の筈なんだけど。

しかし、私がその事に対して申し訳ない気分になると、彼は決まって、

「俺がお前に会いたくて来てるんだ。お前の為じゃなく、俺の為」
と先回りして私にお礼を言わせないでいた。

そういう所がズルいと思う。

モテる男は違う…とは思うが、そう言えばセドリックの浮いた噂などは全く耳に入ってこない。

婚約者選びの進捗具合も全く聞こえてこない。
どうなってるんだ?

でも、私が訊ねても『お前に心配されなくても大丈夫。ちゃんと考えているから』と言われておしまい。

確かに…私に関係ないって言われたらそれまでだ。
元婚約者の出る幕ではない。




「ちょっと小耳に挟んだんだけどな」
と、セドリックが書類から目を上げずに私に話しかけてきた。

「ん?何を?」
私も書類からは目を離さずに答える。

「お前の母親な…男がいるぞ?」
と言われて、私は思いっきり顔を上げた。

「は?男?どういうこと?」

「お前の母親が毎日どこに行ってるか知ってるか?」

セドリックは私と目線を合わせて、私に伺う様に訊いた。

「知らない。興味ないし」

「お前なぁ…。もう少し興味持ってやれよ。っていうか、もう少し管理した方が良いぞ?あの女…役者に入れあげてる」
というセドリックの顔は不快そうに歪んだ。

「入れあげてるって…どういう事?貢いでる…って事?」

「そうだな。今、パトロンみたいになってるぞ?お前が王妃から降りて、お茶会や音楽会に呼ばれなくなって寂しくなったんだろ。お前…あの女が使ってる金、調べた方が良いぞ?」
とセドリックに言われて、私はもう1つの疑問を口にする。

「その…役者の男性と母は…体の関係が?」
と私が恐々訊ねれば、

「多分な。俺がこんな事、噂レベルで口にする事はないから…まぁ、そういう事だ」

セドリックの情報網はとてつもない。
きっと間違いない情報なのだろう。

私はそれを聞いて頭を抱えた。
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