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第35話
しおりを挟む「何だか嵌められた様な気分なのは何故かしら?」
私は自分のウェディングドレス姿を鏡で見ながら呟いた。
「ジュネ公爵様の粘り勝ちですかね」
そう言いながら私を仕上げてくれているのは、ナラだ。
「ナラってば、セドリックの気持ちを知ってたの?」
「知らないのはクロエ様だけです」
そう言われれば、黙るしかない。
大体の支度が整った頃、ドアをノックする音と共に、
「クロエ!祝いに来たぞ!1番乗りだろ?」
と陛下が勢い良く入って来た。
「……陛下……。入室の許可をとってから入って下さい」
「あぁ、ごめん、ごめん。とりあえずセドリックより、リッチより早くクロエのウェディングドレス姿が見たくてな。二人の悔しがる顔を思い浮かべると、愉快だ」
……この国の国王が何故そんな事を宰相と競っているのか。……しかもマルコ様は今、関係なくない?
すると、開いたドアから、
「陛下!!花嫁の控え室に花婿より先に入るなど、何を考えているのですか!!」
とセドリックが怒りながら入ってきた。
どうして2人とも入室許可を得ずに入って来るのだろう?私の意思は無視なの?
そしてふと視線を感じてドアの方を見ると、マルコ様がドアの影からジッとこちらを見ていた。……え?何だか怖いんですけど?!
何故か私の控え室がワイワイしている。……何だか悩んでいたのが馬鹿らしい。
そう、私は結構悩んでいたのだ。
セドリックの気持ちを聞いた時には、正直驚いた。
セドリックの事は尊敬している。もちろん好意もあるが、恋愛感情かと問われれば首を傾げざるを得ない。
セドリックはこの国の宰相でジュネ公爵家の当主。結婚相手なんて選り取りみどりの筈なのだ。
断れない状況ではあったが、私なんかが伴侶になって良いのだろうか?
私はこれから先もオーヴェル侯爵だ。
そう。侯爵でありながら、ジュネ公爵夫人……。
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それをセドリックに素直に告げれば、
『別に公爵夫人の仕事などしなくて良い。今まで通り、お前はオーヴェル侯爵として領地や領民を守っていけ。
俺はそれを全力で支えるから』とさらっと言われてしまった。
……少しだけそれをかっこいいと思ったのだが認めるのは悔しいので内緒にしておこう。
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