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14話
しおりを挟む「結局…裏帳簿が見つかって、院長が私的に寄付金を着服している事がわかりました」
帰りの馬車の中、私は殿下に報告していた。
「は~。悪そうな人には見えなかったけどなぁ」
「私も院長を信じていましたから。事務官もグルだったなんて…信じられません」
王太子妃の予算を管理する事務官の1人が院長と共謀していた事も露呈した。
…本当に頭が痛い。
「まぁ…仕方ないよ。マイラのせいじゃない」
「とはいえ、私に与えられた予算は国民の税です。それを…」
と私が項垂れると、
「たくさんの人が働いていれば、そんな事もあるだろ。
逆に今、わかって良かったって思えば?」
確かに。今日殿下が来なければ、この事は不分仕舞。
ずっと私は騙されたままだっただろう。
「今日、殿下が来て下さったお陰です。ありがとうございました」
と私が素直に礼を言えば、殿下は目を丸くして、
「へぇ~。結構素直なんだな」
と言った。
「…私は礼が言えない程、不躾な人間ではありません」
と私が少し不機嫌そうに言うと、
「あ、違う違う。漫画ではさぁ、マイラってプライドが高くて、結構嫌な奴なんだよ。
エレーヌが主人公だからさ、俺って言うかフェルナンドもすげぇ馬鹿な奴に描かれててさ」
と殿下は自分の頭の後ろで腕を組んだ。
「殿下が馬鹿なのは、その通りでは?」
と私が言い返せば、
「確かに。エレーヌからの気持ちが本物の愛だって疑う事もせずに、彼女に溺れてるんだもんなぁ。
それに仕事だっておざなりだろ?本当ならリオンの方が次期国王に相応しいかもな」
と言う殿下はどこまでも他人事のような口振りだ。
孤児院での不正が見つかった為、すっかり時間が下がってしまった。
既に外は少し暗くなり始めている。
教会への視察はまた次回となってしまった。
「エレーヌ様は…本当に殿下の事を愛していないのでしょうか?」
私はつい疑問を口にした。
こんな事、こいつに訊いても仕方ないのに。
「あの女は俺を殺した後、ハロルドの恩恵でリオンの正妻になるんだ」
と言う殿下。
「へ?そんな事…陛下がお許しになる筈ありませんわ」
と私は驚く。
例え殿下からリオン様へと王太子が変更になっても、その側室を新しい王太子妃にするなど聞いた事がない。
「それが漫画なんだよ。漫画だから、少し辻褄が合わなくても許される。
俺が殺されて、マチルダ王妃はおかしくなって幽閉されるんだ。
陛下はマチルダ王妃の重圧がなくなって、側室を娶るんだが、その人物がこれまたハロルドの息のかかった者でさ。
後はハロルドとエレーヌの良いように事が運ぶんだ。
しかし…そこでエレーヌは初めて人を心から好きになる。それがリオンって訳」
未来に起こる…かもしれない事を淡々と話す殿下。それを黙って聞いている私。なんなのこれ?
「あんなに可愛らしいエレーヌ様がそんな野心を持っているなんて…想像も出来ませんわ」
と私がため息混じりに言えば、
「可愛いかぁ?俺はどちらかと言うと、可愛いより綺麗系の方が好きだから、マイラの方が好みだけどな」
とサラッと殿下が言った。
私は思わず顔が赤くなる。嫌いな男に言われたのに、何で赤くなるのよ!私!
馬車の中は夕暮れに伴って、薄暗くなっていた。…顔が赤い事がバレていませんように!
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