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15話
しおりを挟む「じゃあ、今日も一緒に寝ような!」
と大声で言って自分の執務室へと戻る殿下。
何でそんな皆が誤解するような事を大声で言うのよ!
周りの者達は信じられないような面持ちで私の反応を確認する。
顔が赤くなるのも抑えられず、私は直ぐ様踵を返して自分の執務室へと戻って行った。
「はぁ~」
気づけば、殿下に振り回されっぱなしだ。
ため息をつくのも仕方ないと言える。
「マイラ様…」
ダメだ。私が暗い顔をすれば、メリッサが心配する。
私は切り替える様に、
「ねぇ、最近入った新しい侍女はどう?」
とメリッサに新たな話題を振った。
殿下の言う事が本当なら、新しい侍女達は、エレーヌ様の手の者だと思われる。
所謂『見張り役』だ。
「新しい者達ですか?真面目に働いていますよ?王族に付くのは初めてだと言ってましたが、流石、公爵家で鍛えられた者達って感じです」
「公爵家?どこの公爵家で働いていたの?」
…嫌な予感がする。
「ロードスター公爵家だそうですよ。王弟殿下の所ですからね。やはり王族に連なる家柄で鍛えられただけありますよ。
でも…どうしたんです?急に」
とメリッサは私の質問の意図を訊ねてきた。
「う…ううん。何でもないの。
ほら…私、別にメリッサさえ居れば事足りるでしょう?もちろんメリッサを休ませる為に他に侍女が必要なのは理解しているけど、そんなたくさん必要かな?って思って」
と私が言えば、
「まぁ…今までも困った事はありませんでしたからね。
でも、マイラ様が殿下にあまり…その…」
と言葉を濁すメリッサ。
「蔑ろにされていたから、私の扱いはエレーヌ様以下だったものね。
…いいのよ。本当の事だもの。
エレーヌ様はこのままいけば、殿下の御子を身籠るでしょう。国母になるんだもの…大切にされて当然だわ」
と自嘲気味に私が言えば、メリッサは眉を下げた。
メリッサを悲しませたかった訳じゃないのだが、ダメな主だ。
「とにかく、急に『今まで少なかったから』と言われて、何だか変な気分だなって言いたかったの。忘れて」
と私は努めて明るくメリッサに言った。
しかし…やはりハロルド様が関わっている事が確認出来たのは、大きい。
どうにかして、その者達を私から遠ざける事は出来ないだろうか。私が少し考え込んでいると、
「あ!そう言えば、新しい侍女の1人が今朝、『どうして殿下と妃殿下が共に居るのか?』って訊ねてきたんですよね。
普通、そう思っても口には出さないじゃないですか?何か変だなぁって思って」
とメリッサは少し首を傾げた。
「そう…。公爵家から来た侍女のわりに…噂話が好きなのかしらね?」
と私は曖昧に笑った。
きっと、エレーヌ様に報告が行っているのだろう…。エレーヌ様だってこの1週間、殿下が自分の元へ来ていない事を不思議がっているに違いない。
もしかすると、彼女自身が動き出すのも時間の問題かもしれない。
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