〈If...〉婚約解消された私はお飾り王妃になりました。でも推しに癒されているので大丈夫です!

初瀬 叶

文字の大きさ
31 / 38

第31話

しおりを挟む

エリザベート様はぐっと下唇を噛み締めて私を睨み付けた。
握った拳は小刻みに震えている。

そこで、でしゃばって来たのは公爵だ。

「両陛下に申したい事が御座います。お2人のお気持ちは十分理解いたしましたが、だからといって今のやり方では、どのみち納得出来ない貴族を押さえる事が出来なくなるのは明らかです。
ここは、私にお任せ下さい!私がしっかりとおさめてみせます。…それで…良ければ私を宰相の座に戻していただきたいのです」

はい?エリザベート様の側妃の件は?敗戦濃厚になったからってあっさり諦めるの?

エリザベート様も自分の父親の変わり身の早さに、目を丸くする。

「お父様!私の事をいかがなさるおつもりなのですか!!私はお父様に言われたから…公爵と離縁したのですよ?」
と反論するエリザベート様に、

「あの男はもう終わりだ。沈みかけた船にいつまでもしがみついていたって仕方ないだろう!」
と小声で諌めるサーチェス公爵。

…とはいえ、バッチリ聞こえてるけど。

「そんな…。公爵は離縁した途端にあの女と結婚したんですよ!
あの女は私が逃げ出すのを待っていたんです。お父様に言われなければ、私は逃げ出さず、あの女の思う通りにならなくて済みましたのに!」

「お前だって、あんな男を好いていた訳ではあるまい。あんな馬鹿は熨斗をつけてあげてしまえば良いんだ。
それに、このまま側妃になったとしても、さっき言われた通り、お飾りになるだけ。お前に従う者など居なくなってしまうのだぞ!」


『あの女』だの『あの男』だのと言っていても、結局は自分達に火の粉が振りかかる前に、さっさと見切りをつけただけではないか。
エリザベート様はヘリッジ公爵と愛人がすんなり結婚した事が悔しいみたいだが。

「だからといって、側妃にならなければ、私はどうなるのです?あのままであれば少なくとも公爵夫人ではいられましたのに…!」

「だ、か、ら!私が宰相に返り咲けば、お前にも良い相手を見つけてやる事が出来るだろう!
お前は黙って私の言う通りにしておきなさい。あの時だって…お前が勝手に婚約破棄などしなければ良かったんだ。そうしたら王妃はお前のものだった!」


「そんな!お父様は私のしたいようにすれば良いと言ったではないですか!それにヘリッジ公爵との結婚だって、お父様が見つけてきたご縁。
私はちゃんとお父様に従いましたわ!」


…私達の目の前で醜い親子喧嘩が繰り広げられている。
呆れるばかりだ。

「おい!いい加減にしないか!サーチェス公爵。お前を宰相にするつもりはない。
何を勝手に話を進めているんだ。
私とクロエはどんなに反発されても今の方針を変えるつもりはない。
しかしな。領民が豊かになれば、間違いなく領主も豊かになれる。時間はかかっても、その結果、貴族達にも良い結果をもたらす事になると私は…いや、私とクロエは信じているんだ。
少しずつでも納得してもらえるように結果を出していくしかない。
長い道のりであったとしても…だ。だから、お前に頼るつもりもない」
と陛下が言うも、

「いずれ後悔なさいますよ!」
とあくまでも、サーチェス公爵は強気にそう言った。

「あ~うるさいな。もう黙ってくれないか?お前達の声は胎教に悪い」
と陛下が言うと、サーチェス公爵は真っ赤になって、

「ふざけるな!」
と怒り出した。

すると、陛下の側近が何やら緊迫した面持ちで駆け寄ると、陛下に耳打ちをした。

陛下は頷いて、側近に何かを指示すると、

「サーチェス公爵。お怒りの所、申し訳ないが、もうこの話は終わりだ。
そして、2度と私の前に顔を見せるな。…いや…もう見せる事が出来なくなるかもしれないな」
と陛下は言うと、ニヤリと笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【本編完結】笑顔で離縁してください 〜貴方に恋をしてました〜

桜夜
恋愛
「旦那様、私と離縁してください!」 私は今までに見せたことがないような笑顔で旦那様に離縁を申し出た……。 私はアルメニア王国の第三王女でした。私には二人のお姉様がいます。一番目のエリーお姉様は頭脳明晰でお優しく、何をするにも完璧なお姉様でした。二番目のウルルお姉様はとても美しく皆の憧れの的で、ご結婚をされた今では社交界の女性達をまとめております。では三番目の私は……。 王族では国が豊かになると噂される瞳の色を持った平凡な女でした… そんな私の旦那様は騎士団長をしており女性からも人気のある公爵家の三男の方でした……。 平凡な私が彼の方の隣にいてもいいのでしょうか? なので離縁させていただけませんか? 旦那様も離縁した方が嬉しいですよね?だって……。 *小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?

みこと。
恋愛
男爵令嬢マチルダが現れてから、王子ベイジルとセシリアの仲はこじれるばかり。 婚約破棄も時間の問題かと危ぶまれる中、ある日王宮から、公爵家のセシリアに呼び出しがかかる。 なんとベイジルが王家の禁術を用い、過去の自分と精神を入れ替えたという。 (つまり今目の前にいる十八歳の王子の中身は、八歳の、私と仲が良かった頃の殿下?) ベイジルの真意とは。そしてセシリアとの関係はどうなる? ※他サイトにも掲載しています。

幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係

紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。 顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。 ※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

私は彼を愛しておりますので

月山 歩
恋愛
婚約者と行った夜会で、かつての幼馴染と再会する。彼は私を好きだと言うけれど、私は、婚約者と好き合っているつもりだ。でも、そんな二人の間に隙間が生まれてきて…。私達は愛を貫けるだろうか?

処理中です...