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第33話
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昼食が終わって早々、私はハロルドと厨房に居た。……何故かレニー様まで。
「レニー様、何故ここに?」
「……何をするのか見届ける義務がある」
今からはただジャムを作るだけなのだが……。
「ジャムの試作をするだけです。レニー様は領民の皆様へ挨拶がてら領地を見回ったら如何ですか?」
「……一人でか?」
何なの急に。まさか一人じゃ寂しいとか言わないでしょうね?
「護衛とご一緒に回られてください。馬車でも馬でもお好きな方で」
厨房にはエルダ、料理長、ハロルドのお母様、私、ハロルド、そしてメイドが一人。広い厨房だとはいえ、体躯の良いレニー様がいると、余計に窮屈に感じてしまう。
「分かった。じゃあ……」
レニー様はそう言うとやっと厨房を出て行った。
昨日から少し様子がおかしい。アリシア様に会えなくて寂しいのかしら?最近はずっと侯爵がハルコン侯爵邸にいらっしゃるみたいだから……って、当たり前なんだけど。
私はその背中を見送ってから、パン!と大きく手を叩いた。
「さぁ!気を取り直して始めましょうか!」
ハロルドは、私の指示通りに今準備出来る果物を集めてくれていた。
「今、収穫出来る果物です。さぁ……どれから試してみましょうか」
ハロルドもエプロンを着けて張り切っている。
「こんなにたくさんの砂糖……奥様、大変だったのでは?」
エルダが心配そうにそう尋ねた。
「大丈夫。かなり安い値段で仕入れさせて貰ったから。でも品質は折り紙付きよ。なんてったってレイノルズ伯爵領の砂糖だから。さぁ、色々と試してみましょう。まずは……リンゴと苺と……桃に、オレンジってところかしら?」
私もエプロンを着けると、皆が目を丸くした。
「奥様も?!」
「もちろん!……と言ってもジャム作りは初めてだから教えて貰えるかしら?」
というより料理らしい料理をしたことがない。
当然、私の危なっかしい包丁捌きに、そこにいた皆が何度も顔を青くしたのは間違いなかった。
皆で手分けしてジャムは完成した。まぁ……私は殆ど役に立たなかったのだが。
色とりどりのジャムが瓶に詰められる。
「綺麗ね」
「今まで苺とオレンジでしかジャムを作ったことはありませんでしたけど、意外と色んな果物でも作れるんですねぇ」
エルダが腰に手を当てて、感心したように言う。その時、ハロルドの母親のバーバラが言った。
「奥様、ジャムも良いですが……ドライフルーツはどうでしょう?」
「ドライフルーツ?それは何?」
初めて聞く名前だった。
「手間ひまがかかるので、あまり作る人はおりませんが、果物を乾燥させて作ります。そうすれば日持ちしますしね。私は余った果物を使って作っておりました」
「そういえば……子どもの頃おやつに食べてたな……」
ハロルドが呟いた。
「ならばそれも作ってみましょう。時間がかかるのなら、あまりたくさんは作れないかもしれないけれど、王都の人々は珍しいものを好むわ」
「貴族の方々はいつもはみずみずしい新鮮な果物を口にしているでしょうから、かえって受けるかもしれませんね」
料理長もウンウンと頷いた。
「じゃあ、作り方を教えてちょうだい!」
と私が包丁を構えると、何故か皆はそれを慌てて止めた。……もう二度と包丁を持つなということらしい。
「レニー様、何故ここに?」
「……何をするのか見届ける義務がある」
今からはただジャムを作るだけなのだが……。
「ジャムの試作をするだけです。レニー様は領民の皆様へ挨拶がてら領地を見回ったら如何ですか?」
「……一人でか?」
何なの急に。まさか一人じゃ寂しいとか言わないでしょうね?
「護衛とご一緒に回られてください。馬車でも馬でもお好きな方で」
厨房にはエルダ、料理長、ハロルドのお母様、私、ハロルド、そしてメイドが一人。広い厨房だとはいえ、体躯の良いレニー様がいると、余計に窮屈に感じてしまう。
「分かった。じゃあ……」
レニー様はそう言うとやっと厨房を出て行った。
昨日から少し様子がおかしい。アリシア様に会えなくて寂しいのかしら?最近はずっと侯爵がハルコン侯爵邸にいらっしゃるみたいだから……って、当たり前なんだけど。
私はその背中を見送ってから、パン!と大きく手を叩いた。
「さぁ!気を取り直して始めましょうか!」
ハロルドは、私の指示通りに今準備出来る果物を集めてくれていた。
「今、収穫出来る果物です。さぁ……どれから試してみましょうか」
ハロルドもエプロンを着けて張り切っている。
「こんなにたくさんの砂糖……奥様、大変だったのでは?」
エルダが心配そうにそう尋ねた。
「大丈夫。かなり安い値段で仕入れさせて貰ったから。でも品質は折り紙付きよ。なんてったってレイノルズ伯爵領の砂糖だから。さぁ、色々と試してみましょう。まずは……リンゴと苺と……桃に、オレンジってところかしら?」
私もエプロンを着けると、皆が目を丸くした。
「奥様も?!」
「もちろん!……と言ってもジャム作りは初めてだから教えて貰えるかしら?」
というより料理らしい料理をしたことがない。
当然、私の危なっかしい包丁捌きに、そこにいた皆が何度も顔を青くしたのは間違いなかった。
皆で手分けしてジャムは完成した。まぁ……私は殆ど役に立たなかったのだが。
色とりどりのジャムが瓶に詰められる。
「綺麗ね」
「今まで苺とオレンジでしかジャムを作ったことはありませんでしたけど、意外と色んな果物でも作れるんですねぇ」
エルダが腰に手を当てて、感心したように言う。その時、ハロルドの母親のバーバラが言った。
「奥様、ジャムも良いですが……ドライフルーツはどうでしょう?」
「ドライフルーツ?それは何?」
初めて聞く名前だった。
「手間ひまがかかるので、あまり作る人はおりませんが、果物を乾燥させて作ります。そうすれば日持ちしますしね。私は余った果物を使って作っておりました」
「そういえば……子どもの頃おやつに食べてたな……」
ハロルドが呟いた。
「ならばそれも作ってみましょう。時間がかかるのなら、あまりたくさんは作れないかもしれないけれど、王都の人々は珍しいものを好むわ」
「貴族の方々はいつもはみずみずしい新鮮な果物を口にしているでしょうから、かえって受けるかもしれませんね」
料理長もウンウンと頷いた。
「じゃあ、作り方を教えてちょうだい!」
と私が包丁を構えると、何故か皆はそれを慌てて止めた。……もう二度と包丁を持つなということらしい。
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