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第44話 Sideアリシア
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〈アリシア視点〉
読書や刺繍をしろというレニーに苛立ちを覚えた。私が活字に触れると頭が痛くなることや、刺繍が苦手なことも知っているくせに。
「本を読むと頭が痛くなるし、細かい手作業は苦手だわ。私はこうしてレニーとお喋りしている方が楽しいの」
私はレニーの膝に置かれた手にそっと触れた。いつものレニーなら、顔を赤くしながら、私のその手に自分のもう片方の手を重ねてくれていたのだが、今日のレニーは少し困惑したように私の手をもう片方の手でそっと外した。
「ひ、冷えると悪いから、手は直しておいた方がいい」
シーツを捲り、私の手をそこへ仕舞い込む。
今日のレニーは何だか様子がおかしい。
「そうね……。ついレニーと一緒に居ると子ども時代を思い出して甘えてしまうわ」
「確かに子どもの頃はずっと一緒だったけど……」
レニーはそう言って少し俯いた。沈黙が怖くなって、私は話題を変える。
「ねぇ、レニーも夜会の準備で忙しいの?夕食に誘っても来てくれないし……」
「あ……あぁ。忙しいけど……僕は当日は夜会に参加するから、他の騎士達よりは……」
「え?レニーは夜会に参加するの?」
クラッドからは自分は殿下の側に居なければならないから、アリシアは夜会に一人で参加してくれと言われていた。私はそれが嫌で、クラッドと大喧嘩になったのだが、クラッドは折れてくれなかった。結婚すると、男ってこうも冷たくなるものなのかと私は憤慨したのだった。
「うん……。殿下に結婚の挨拶を改めて二人揃ってした方が良いって言われて」
「え?なら私も参加しようかしら?」
レニーと一緒なら夜会も悪くない。クラッドとの喧嘩の後、私は絶対に夜会に出ないと欠席の返事をしたが、レニーが居るなら……。あぁ、ドレスはどうしようかしら?急いで作らせなきゃ。レニーの瞳の色である紫にした方が良いかしら?
私の頭の中には、レニーにエスコートされる自分が居た。
「ん?出席しないつもりだったのか?」
「だって……クラッドとは入場の時以外一緒に居られないのよ?ダンスを踊る相手もいないのなら……惨めだわ」
壁の花なんて私には似合わない。
「そんなもんか?ダンスせずに済むなら、それはそれでラッキーだと思うけどな」
「ウフフッ。そういえばレニーはダンスが苦手だものね」
「まぁな。でも今は毎日練習してるから、一曲は踊れるようになったんだ」
照れたように頭を掻くレニー。その様子はどこか嬉しそうだ。
「本当に?なら私と踊りましょうよ」
レニーの色を纏った私とレニーが踊っている場面を想像する。きっと皆羨望の眼差しだろう、学生の時のように。私は緩む頬を隠しきれなかった。
「いや……僕が踊るのはデボラだけだよ。僕の妻はデボラだしね。彼女はこんな僕のダンスレッスンに毎日根気よく付き合ってくれてる。彼女のお陰で何とか僕のダンスもさまになってきたんだ」
レニーの顔がほころぶ。私の胸はザワザワと嫌な音を立てた。
読書や刺繍をしろというレニーに苛立ちを覚えた。私が活字に触れると頭が痛くなることや、刺繍が苦手なことも知っているくせに。
「本を読むと頭が痛くなるし、細かい手作業は苦手だわ。私はこうしてレニーとお喋りしている方が楽しいの」
私はレニーの膝に置かれた手にそっと触れた。いつものレニーなら、顔を赤くしながら、私のその手に自分のもう片方の手を重ねてくれていたのだが、今日のレニーは少し困惑したように私の手をもう片方の手でそっと外した。
「ひ、冷えると悪いから、手は直しておいた方がいい」
シーツを捲り、私の手をそこへ仕舞い込む。
今日のレニーは何だか様子がおかしい。
「そうね……。ついレニーと一緒に居ると子ども時代を思い出して甘えてしまうわ」
「確かに子どもの頃はずっと一緒だったけど……」
レニーはそう言って少し俯いた。沈黙が怖くなって、私は話題を変える。
「ねぇ、レニーも夜会の準備で忙しいの?夕食に誘っても来てくれないし……」
「あ……あぁ。忙しいけど……僕は当日は夜会に参加するから、他の騎士達よりは……」
「え?レニーは夜会に参加するの?」
クラッドからは自分は殿下の側に居なければならないから、アリシアは夜会に一人で参加してくれと言われていた。私はそれが嫌で、クラッドと大喧嘩になったのだが、クラッドは折れてくれなかった。結婚すると、男ってこうも冷たくなるものなのかと私は憤慨したのだった。
「うん……。殿下に結婚の挨拶を改めて二人揃ってした方が良いって言われて」
「え?なら私も参加しようかしら?」
レニーと一緒なら夜会も悪くない。クラッドとの喧嘩の後、私は絶対に夜会に出ないと欠席の返事をしたが、レニーが居るなら……。あぁ、ドレスはどうしようかしら?急いで作らせなきゃ。レニーの瞳の色である紫にした方が良いかしら?
私の頭の中には、レニーにエスコートされる自分が居た。
「ん?出席しないつもりだったのか?」
「だって……クラッドとは入場の時以外一緒に居られないのよ?ダンスを踊る相手もいないのなら……惨めだわ」
壁の花なんて私には似合わない。
「そんなもんか?ダンスせずに済むなら、それはそれでラッキーだと思うけどな」
「ウフフッ。そういえばレニーはダンスが苦手だものね」
「まぁな。でも今は毎日練習してるから、一曲は踊れるようになったんだ」
照れたように頭を掻くレニー。その様子はどこか嬉しそうだ。
「本当に?なら私と踊りましょうよ」
レニーの色を纏った私とレニーが踊っている場面を想像する。きっと皆羨望の眼差しだろう、学生の時のように。私は緩む頬を隠しきれなかった。
「いや……僕が踊るのはデボラだけだよ。僕の妻はデボラだしね。彼女はこんな僕のダンスレッスンに毎日根気よく付き合ってくれてる。彼女のお陰で何とか僕のダンスもさまになってきたんだ」
レニーの顔がほころぶ。私の胸はザワザワと嫌な音を立てた。
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