45 / 162
第45話
「アリシア様が?」
執事が私に手紙を寄越した。差出人はアリシア様だ。
「はい。お茶会を欠席したお詫びだと」
「これって会員制のクラブ?」
「そのようです」
私は手紙に同封されていた招待状をよくよく確認する。
「男性方の社交クラブの話をよく聞くけど、女性用……?」
「マドリー公爵夫人が会長のようです」
マドリー公爵夫人か……。私の苦手とするご夫人だ。
マドリー公爵の後妻で随分と若く派手好きなご夫人だ。公爵との歳の差が確か三十歳以上だった気がする。
そのマドリー公爵夫人とアリシア様に交流があったことも驚きだ。
「アリシア様はマドリー公爵夫人と交流が?」
「私がハルコン侯爵家で働いていた時でしょうか……確か二、三度マドリー公爵夫人主催のお茶会の招待を受けられていた記憶があります」
「ふーん……。マドリー公爵夫人ね。私は今まで殆ど接点がなかったのだけど……」
マドリー公爵夫人は差別主義者だ。交流を持つのは侯爵以上の家門か、伯爵位でも金持ちや歴史ある家門の人間しか相手にしない。うちの実家は中流伯爵家。彼女の視界にも入ることもなかった……今までは。
「断る……のは不味いわよね」
「………」
執事もどう答えるべきか悩んでいるようだ。しかし身分的にも私が断るのは不可能だろう。
「分かったわ。お返事を書くから」
「畏まりました」
私が引き出しを開け便箋を取り出すと、執事は少しだけホッとしたような表情になった。
「レニー様、明日のダンスレッスンは中止です」
アリシア様からの突然の誘いを受けてから一週間。明日はそのクラブに顔を出さなければならない。会員の推薦がないと入れないクラブだと言う話だが、どうも気が乗らない。
「え?どうして?」
もうレニー様もレッスンは必要ないほどには踊れるようになった。別に毎日しなくても良いのでは?と思うのだが、生真面目に王宮から真っすぐ帰宅するレニー様に『もうレッスンは止めましょうか』と言ったが『まだ自信がない』と断られてしまった。しかし明日は無理だ。
「アリシア様にマドリー公爵夫人のクラブにご招待されておりまして」
「マドリー公爵夫人……あぁ、あの香水臭い女か……で、アリシアに誘われたのか?」
レニー様の記憶に残るマドリー公爵夫人……しかも覚えられ方が独特だわ。
「ええ。先日のお茶会を欠席したお詫びに……と。せっかくのお誘いですから」
気は乗らないけど……と内心付け加えた。
「アリシアとマドリー夫人が仲良くしてるとは知らなかったな……。それ、夜じゃなきゃダメなのか?」
「クラブが開かれるのは夜ですわ」
レニー様が貴族男性の通う社交クラブへ顔を出しているということは聞いたことがない。……そもそも、彼が他の当主達と領地経営などを語り合っている様子も想像できないが。
「そうか……。まぁ、仕方ない」
何が?何が仕方ないの?なんでちょっと不貞腐れてるの?……あぁ、なるほど。大好きなアリシア様に誘われたのが、私だから気に入らないのね。仕方ないじゃない、女性専用のクラブですもの。
「私も女性専用の社交クラブなど、初めてですので勝手が分かりませんが……一応楽しんできます」
つい『一応』って付けちゃった。消極的かつ後ろ向きなのがバレてしまう。また『せっかくアリシアがお詫びといっているのに、その態度はないだろう!』なんて言われちゃ、かなわない。
「あぁ、うん。まぁ、いいんじゃないか?偶には」
そう言ってレニー様はまた夕食を再開させた。私としては面倒くさいこと極まりないが、マドリー夫人に馬鹿にされない程度のドレスとアクセサリーを準備しなくちゃ……と、明日の装いに頭を頭を悩ませ、小さくため息をついた。
執事が私に手紙を寄越した。差出人はアリシア様だ。
「はい。お茶会を欠席したお詫びだと」
「これって会員制のクラブ?」
「そのようです」
私は手紙に同封されていた招待状をよくよく確認する。
「男性方の社交クラブの話をよく聞くけど、女性用……?」
「マドリー公爵夫人が会長のようです」
マドリー公爵夫人か……。私の苦手とするご夫人だ。
マドリー公爵の後妻で随分と若く派手好きなご夫人だ。公爵との歳の差が確か三十歳以上だった気がする。
そのマドリー公爵夫人とアリシア様に交流があったことも驚きだ。
「アリシア様はマドリー公爵夫人と交流が?」
「私がハルコン侯爵家で働いていた時でしょうか……確か二、三度マドリー公爵夫人主催のお茶会の招待を受けられていた記憶があります」
「ふーん……。マドリー公爵夫人ね。私は今まで殆ど接点がなかったのだけど……」
マドリー公爵夫人は差別主義者だ。交流を持つのは侯爵以上の家門か、伯爵位でも金持ちや歴史ある家門の人間しか相手にしない。うちの実家は中流伯爵家。彼女の視界にも入ることもなかった……今までは。
「断る……のは不味いわよね」
「………」
執事もどう答えるべきか悩んでいるようだ。しかし身分的にも私が断るのは不可能だろう。
「分かったわ。お返事を書くから」
「畏まりました」
私が引き出しを開け便箋を取り出すと、執事は少しだけホッとしたような表情になった。
「レニー様、明日のダンスレッスンは中止です」
アリシア様からの突然の誘いを受けてから一週間。明日はそのクラブに顔を出さなければならない。会員の推薦がないと入れないクラブだと言う話だが、どうも気が乗らない。
「え?どうして?」
もうレニー様もレッスンは必要ないほどには踊れるようになった。別に毎日しなくても良いのでは?と思うのだが、生真面目に王宮から真っすぐ帰宅するレニー様に『もうレッスンは止めましょうか』と言ったが『まだ自信がない』と断られてしまった。しかし明日は無理だ。
「アリシア様にマドリー公爵夫人のクラブにご招待されておりまして」
「マドリー公爵夫人……あぁ、あの香水臭い女か……で、アリシアに誘われたのか?」
レニー様の記憶に残るマドリー公爵夫人……しかも覚えられ方が独特だわ。
「ええ。先日のお茶会を欠席したお詫びに……と。せっかくのお誘いですから」
気は乗らないけど……と内心付け加えた。
「アリシアとマドリー夫人が仲良くしてるとは知らなかったな……。それ、夜じゃなきゃダメなのか?」
「クラブが開かれるのは夜ですわ」
レニー様が貴族男性の通う社交クラブへ顔を出しているということは聞いたことがない。……そもそも、彼が他の当主達と領地経営などを語り合っている様子も想像できないが。
「そうか……。まぁ、仕方ない」
何が?何が仕方ないの?なんでちょっと不貞腐れてるの?……あぁ、なるほど。大好きなアリシア様に誘われたのが、私だから気に入らないのね。仕方ないじゃない、女性専用のクラブですもの。
「私も女性専用の社交クラブなど、初めてですので勝手が分かりませんが……一応楽しんできます」
つい『一応』って付けちゃった。消極的かつ後ろ向きなのがバレてしまう。また『せっかくアリシアがお詫びといっているのに、その態度はないだろう!』なんて言われちゃ、かなわない。
「あぁ、うん。まぁ、いいんじゃないか?偶には」
そう言ってレニー様はまた夕食を再開させた。私としては面倒くさいこと極まりないが、マドリー夫人に馬鹿にされない程度のドレスとアクセサリーを準備しなくちゃ……と、明日の装いに頭を頭を悩ませ、小さくため息をついた。
あなたにおすすめの小説
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
「妾の子だから」と呑気に構えていたら、次期公爵に選ばれました
木山楽斗
恋愛
父親であるオルガント公爵が大病を患った、その知らせを聞いた妾の子のヘレーナは、いい気味であるとさえ思っていた。
自分と母を捨てた父のことなど、彼女にとっては忌むべき存在でしかなかったのだ。ただ同時にヘレーナは、多くの子がいるオルガント公爵家で後継者争いが起こることを予感していた。
ただヘレーナは、それは自分には関係がないことだと思っていた。
そもそも興味もなかったし、妾の子の中でも特に存在感もない自分にはそんな話も回ってこないだろうと考えていたのだ。
他の兄弟達も、わざわざ自分に声をかけることもない。そう考えていたヘレーナは、後継者争いを気にせず暮らすことにした。
しかしヘレーナは、オルガント公爵家の次期当主として据えられることになった。
彼の兄姉、その他兄弟達が彼女を祭り上げたのだ。
ヘレーナはそれに困惑していた。何故自分が、そう思いながらも彼女は次期当主として務めることになったのだった。
※タイトルを変更しました(旧題:「どうせ私は妾の子だから」と呑気にしていたら、何故か公爵家次期当主として据えられることになりました。)
あなたの隣に私は必要ですか?
らんか
恋愛
政略結婚にて、3年前より婚約し、学園卒業と共に嫁ぐ予定であったアリーシア。
しかし、諸事情により結婚式は延期され、次の結婚式の日取りさえなかなか決められない状況であった。
そんなアリーシアの婚約者ルートヴィッヒは、護衛対象である第三王女ミーアの傍を片時も離れようとしない。
月1回の婚約者同士のお茶会もすぐに切り上げてしまい、夜会へのエスコートすらしてもらった事がない。
そんな状況で、アリーシアは思う。
私はあなたの隣に必要でしょうか? あなたが求めているのは別の人ではないのでしょうかと。
花嫁は忘れたい
基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。
結婚を控えた身。
だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。
政略結婚なので夫となる人に愛情はない。
結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。
絶望しか見えない結婚生活だ。
愛した男を思えば逃げ出したくなる。
だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。
愛した彼を忘れさせてほしい。
レイアはそう願った。
完結済。
番外アップ済。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
【完結】魅了魔法のその後で──その魅了魔法は誰のため? 婚約破棄した悪役令嬢ですが、王太子が逃がしてくれません
瀬里@SMARTOON8/31公開予定
恋愛
その魅了魔法は誰のため?
一年前、聖女に婚約者である王太子を奪われ、婚約破棄された悪役令嬢リシェル・ノクティア・エルグレイン。
それが私だ。
彼と聖女との婚約披露パーティの噂が流れてきた頃、私の元に王太子が訪れた。
彼がここに来た理由は──。
(全四話の短編です。数日以内に完結させます)
【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!