愛人を作ってもいいと言ったその口で夫は私に愛を乞う

初瀬 叶

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第45話

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「アリシア様が?」

執事が私に手紙を寄越した。差出人はアリシア様だ。

「はい。お茶会を欠席したお詫びだと」

「これって会員制のクラブ?」

「そのようです」

私は手紙に同封されていた招待状をよくよく確認する。

「男性方の社交クラブの話をよく聞くけど、女性用……?」

「マドリー公爵夫人が会長のようです」

マドリー公爵夫人か……。私の苦手とするご夫人だ。
マドリー公爵の後妻で随分と若く派手好きなご夫人だ。公爵との歳の差が確か三十歳以上だった気がする。
そのマドリー公爵夫人とアリシア様に交流があったことも驚きだ。

「アリシア様はマドリー公爵夫人と交流が?」

「私がハルコン侯爵家で働いていた時でしょうか……確か二、三度マドリー公爵夫人主催のお茶会の招待を受けられていた記憶があります」

「ふーん……。マドリー公爵夫人ね。私は今まで殆ど接点がなかったのだけど……」

マドリー公爵夫人は差別主義者だ。交流を持つのは侯爵以上の家門か、伯爵位でも金持ちや歴史ある家門の人間しか相手にしない。うちの実家は中流伯爵家。彼女の視界にも入ることもなかった……今までは。

「断る……のは不味いわよね」

「………」

執事もどう答えるべきか悩んでいるようだ。しかし身分的にも私が断るのは不可能だろう。

「分かったわ。お返事を書くから」

「畏まりました」

私が引き出しを開け便箋を取り出すと、執事は少しだけホッとしたような表情になった。


「レニー様、明日のダンスレッスンは中止です」

アリシア様からの突然の誘いを受けてから一週間。明日はそのクラブに顔を出さなければならない。会員の推薦がないと入れないクラブだと言う話だが、どうも気が乗らない。

「え?どうして?」

もうレニー様もレッスンは必要ないほどには踊れるようになった。別に毎日しなくても良いのでは?と思うのだが、生真面目に王宮から真っすぐ帰宅するレニー様に『もうレッスンは止めましょうか』と言ったが『まだ自信がない』と断られてしまった。しかし明日は無理だ。

「アリシア様にマドリー公爵夫人のクラブにご招待されておりまして」

「マドリー公爵夫人……あぁ、あの香水臭い女か……で、アリシアに誘われたのか?」

レニー様の記憶に残るマドリー公爵夫人……しかも覚えられ方が独特だわ。

「ええ。先日のお茶会を欠席したお詫びに……と。せっかくのお誘いですから」

気は乗らないけど……と内心付け加えた。

「アリシアとマドリー夫人が仲良くしてるとは知らなかったな……。それ、夜じゃなきゃダメなのか?」

「クラブが開かれるのは夜ですわ」

レニー様が貴族男性の通う社交クラブへ顔を出しているということは聞いたことがない。……そもそも、彼が他の当主達と領地経営などを語り合っている様子も想像できないが。

「そうか……。まぁ、仕方ない」

何が?何が仕方ないの?なんでちょっと不貞腐れてるの?……あぁ、なるほど。大好きなアリシア様に誘われたのが、私だから気に入らないのね。仕方ないじゃない、女性専用のクラブですもの。

「私も女性専用の社交クラブなど、初めてですので勝手が分かりませんが……一応楽しんできます」

つい『一応』って付けちゃった。消極的かつ後ろ向きなのがバレてしまう。また『せっかくアリシアがお詫びといっているのに、その態度はないだろう!』なんて言われちゃ、かなわない。

「あぁ、うん。まぁ、いいんじゃないか?偶には」

そう言ってレニー様はまた夕食を再開させた。私としては面倒くさいこと極まりないが、マドリー夫人に馬鹿にされない程度のドレスとアクセサリーを準備しなくちゃ……と、明日の装いに頭を頭を悩ませ、小さくため息をついた。
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