愛人を作ってもいいと言ったその口で夫は私に愛を乞う

初瀬 叶

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第122話

「僕は君の能力を高く買っている。まさかあのレイノルズ伯爵から砂糖を安く買い叩いているとはね」

『買い叩いている』なんてちょっと言い方がどうかと思う。おじさまは私のやりたいことに興味と将来性を見出しそれに賭けてくれたのだ。この賭けに負けたら、ブラシェール伯爵領の復興に陰りが差す。おじさまとの約束の期限は迫っているが私はもちろん諦めていない。

しかし……砂糖の仕入れ値は極わずかな人物しか知らないはずなのだが、何故それをクラッド様が知っているのか……ちなみにレニー様も細かい仕入れ値については知らないはずだ。

「安く買い叩いているなんて……。私がブラシェール伯爵領の為にと奮闘している姿を見て、手を貸してくださっただけです」

「亡くなった婚約者の父親とはいえ、彼は人との付き合いをかなり制限しているからね。君がそこまで気に入られているとは思っていなかったよ。それに、果物そのものを売るのではなく、加工品を王都で売るとは考えたね。ブラシェール領は王都まで果物を運ぶには不利な場所にある。その上専門店も始めるんだって?カフェまで併設とは中々やるね。いいアイデアだ」

どうしてクラッド様はこうも詳しいのだろう。私は眉を潜めた。レニー様もそこを不審に思ったようだ。

「誰からそれを聞いた?」

クラッド様は微笑んであっさりとその名を口にする。

「お前の所の執事だよ」

やっぱりと言うべきか。執事の行動には説明がつかないことが多々あった。家令もきっとそれを感じていた筈だ。

「スパイか……?」
レニー様は不快感を顕にする。

「最初はデボラの不満を僕に相談に来たことがきっかけだ。あいつは元々うちの執事の補佐をしていた男だが、亡くなった父にかなり世話になっててね。ハルコン侯爵家に使えることを生きがいとしているような男だった。ブラシェール伯爵家の執事にと任命した時も随分と不服そうだったが、ハルコン侯爵となった僕には逆らえないからね」

うちの執事はブラシェール伯爵家で働きながら、クラッド様を主としていたようだ。……執事失格ということだと私は納得した。


クラッド様は続けた。

「だが、話を聞けば聞くほど僕はデボラに興味を持った。レニーにしっかり者のデボラを選んで良かったと心から思っていたよ。だが……そんな中でアリシアの浮気を知った。そこからだ、僕の中でアリシアとデボラを比べるようになったのは」

アリシア様はいまだ顔を埋めたままだが、自分の名が聞こえたせいか、肩をピクリと動かした。


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