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フレミアとレイランの午後
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肉の香りが鼻をくすぐる。肉を焼く音がその味を想像させる。
「これ!これにしましょう!もう我慢できないわ!」
フレミアがポケットより顔を覗かせようとして慌ててレイランがフレミアを押し入れる。
「昼はこれにしますからもう少し大人しくしててください。」
レイランはこの小麦粉生地で巻かれた野菜と肉巻きの料理を2つ買う事にする。2つというのはレイランと買いに出るのが難しいカルメンの物である。
「あ、お兄さん!この小っちゃい生地貰ってもいいですか?」
レイランは胸のポケットを押さえながら前かがみになりその胸の谷間を露店の男に見せつける。
「……。」
「ね?お兄さんダメ?」
「はっ!?いい。いいですよ!もっと大きなものを!」
「この小さいのがいいんです。ありがとうございます。」
レイランは2つの肉巻きを受け取ると歩きながら小さい生地へ自身の分の肉と野菜を千切り小さな生地へと巻いていく。
「フレミア様、お待ちかねの料理ですよ。」
「ふ、ふふふ、このいかにも低所得の者が食べそうな雑多な料理なのにこの五感を刺激する料理は…じゅるり!」
「あのフレミア様、喋り方が少々おかしいのですが。」
「気にしないで!昔から祭りに出るというこうした料理の話をメイドたちから聞いていて一度は食べてみたいと思っていたのよね!!ん~…いい匂い、頂きます!」
夢中で食べているフレミアを覗き見て、レイランはきっとユウキもこういう気分だったんだなと想像しくすりっと笑う。食べかすがとか汁がとか思っていたに違いない。
レイランはフレミアが食べ終わるのを待ってからカルメンの部屋へと向かいながら先程の話を聞く。
「フレミア様、先程の話なのですが。」
「レイラン、貴女は世界樹の雫を知っているかしら?」
言われてレイランは何度かその手の伝説の話を酒場で冒険者たちに聞かされたのを思い出す。
「ええ、酒場で冒険者の話を聞いた程度ですが。」
「ユウキ玉は使用できる期間やどこまでかの実験は必要とはいえ、私の予想だと世界樹の雫に匹敵するのではないかと思っているのよ。死者に使用した事がないから世界樹の雫よりも上かはわからないけれどね。」
「それって凄いじゃないですか!伝説のアイテムと同じレベルの効力を持っているなんて、確か数十年に一度しか手に入れる事が出来ないという話ですよね。地面に落ちると能力が消える為、空中で小瓶などに入れなければならないという難易度の高い。」
「ええ、そしてそれを求めて二代前の我が国の王は帝都に戦争を仕掛けたわね。」
レイランはそれを聞き驚く。
「それってあの三つ巴の戦ですよね?戦の原因は獣人族が両国に戦いを挑んできたからだったのでは?そして、協力して戦っていた帝都が裏切って三つ巴の戦いになった。」
フレミアは幼少期に祖父より聞かされた話を思いだし嫌な顔をする。
「勝ったのは我が国らしいけれども。それに至る理由は嘘よ。本当は命惜しさに世界樹を奪い合った王達の私情からの戦争よ。」
祖父の父親が大病を患った際にその世界樹の雫によって一命をとりとめたという話。たったの一雫、その一滴により今の王国があるのだという。
祖父に場所と次はいつかなど散々教え込まれた記憶がよみがえりフレミアはそういえばそれもあと数年だっけと思いだす。
「そんな。それで戦争が?」
「そんな?重要な事よ。命のストックが一つあるような物よ。争いなく手に入るシロモノであるはずがないでしょう。」
レイランはカルメンの酒場へ戻り声を小さくしながらフレミアと話続ける。
「それが人間の身体からポンポン出るとわかったらどうなると思う?」
「それは…ユウキにお願いする人が後を絶たなくなる。」
「おめでたいわね。それなら穏便に金を市場価値に合わせて要求するだけだから簡単なのよ。けど答えは違うわ。世の中のすべてが敵になると思いなさい。」
レイランは絶句する。
「驚くことではないわよ。バレればユウキはよくて人体実験の道具ね。もちろん大量に精製させた後ね。方法があれだから多少はいい思いも出来るのかもしれないけど。でもね、アレが保存の効くモノならどれだけ価値のあるモノになると思う?過去に戦争の火種にもなっている奇跡の雫。ちなみにだけど、売買するとしたら小さな街をまるまる買えると思うわよ?」
「街が!?」
危うく階段を踏み外す所であった。冗談だろうと思いたいがフレミアの表情を見る限りそれは本当なのだろう。
「ええ、だから不味いのよ。仮にユウキ玉で治すにしてもユウキは魔術で治している魔術師であり”教会と同じ”レベルの効果程度を使用できる者としておきたいのよね。」
フレミアは食べ終わると話は取り敢えずこのくらいにして戻りましょうと言う。
「お帰りなさい。なんか申し訳ないわね。本来なら私がご馳走できればいいのだけれども。」
部屋に戻るとカルメンがお茶を用意して待ってくれていたようだ。
「いいですよ。昔助けてもらったお礼です。はい、どうぞ。」
「じゃあ、遠慮なく。久しぶりに肉を食べる気がするわ。…最近野菜ばかりだったから。」
カルメンはゆっくりと肉巻きを頬張る。レイランはそれを見てから少しづつ自分も食べ始める。
「残すなら頂戴ね!まだ、食べれるから!」
「ん?今何か言ったかしら?ごめんなさい、聞きとれなくて。」
「そうそう私がおかわりのお茶を入れるって言ったのよ。」
レイランは慌てて残りを口に入れると席を立ちお湯を探す。
「私はまだあるからいいわ。それよりもレイラン。貴女も出て見ない?これに。」
「ええ!?」
「別に驚くことではないでしょう?踊り子の祭りなのだから。」
「それはそうかもしれないけど。」
「隣国のフェイ王子が国王に書状を送ってたのは知ってる?噂のレベルではあるのだけれども、なんでもこの国の一番の踊り子を我が国に招待したいって話したらしいわよ。」
「そんなの私は…あっ!?」
城からの出頭命令が確かにあった。でもそれは…。
(ないわ、書状でしょう?あんたに執着してたハゲ大臣がいたわよね?あれが他国に逃げられるかもしれないような機会や口実を与えるわけないじゃない。話があったとしたんならそれは、自分のモノにしたいからか勇者の慰み者にさせて権力をより得る為よ。)
カルメンの手前いろいろと気になる事が聞けないのだがそういえばそういう話もあった。
ユウキと旅をしているうちに忘れていたが勇者の慰み物になるという噂もあったのだ。
「どうしたの?やはり何かあった?」
「ううん。けど祭典か…」
「私はねレイラン。最後になるにせよそうでないにせよ。貴方ともう一度踊ってみたいのよ。観客のいるステージで。レイランからしたら相手にもならないかもしれないけど。」
「そんなことないですよ。でも、来月ですよね。」
「そう。来週にはエントリーしに行かなきゃいけないのよ。」
「…少し考えさせてもらえませんか。」
「そうよね、貴女のいい人にも話しておかないといけないものね。」
「ち、ちが…は~もういいですよ。じゃあ、また来ますね。」
「待ってるわ。今週中に答えを出してね。」
レイランは立ち上がると舞踏祭のチラシを一枚もらい、フレミアに言われていたあの薬をそんなに効くのならと一錠だけ貰うと部屋を後にするのだった。
(でも私が隣国に行くって言ったらユウキはなんて言うだろう。また私が踊っている所を見たいって言ってくれてた。きっと喜んでくれるに違いないよね。でも、引きとめて欲しいという気持ちもあるのよね。ああ、最近の私はどうしてしまったのだろう。ユウキの事ばかり考えている気がする。踊りの祭りもそうだけど、今はカルメンさんの足を治すことを第一に考えなきゃいけないはずなのに。)
いつものフレミアならレイランがユウキを好きだという事にここで気づいただろう。
けれどフレミアは珍しく役に立つことを考えていた為にレイランの機微に気づかなかった。
(あの薬と足の腫れ方なーんか引っかかるのよね。どこで見たんだっけ…。教会じゃないわよね。…王城?)
部屋に戻るまでフレミアは微動だにせず、珍しく無言を貫いていた。
「これ!これにしましょう!もう我慢できないわ!」
フレミアがポケットより顔を覗かせようとして慌ててレイランがフレミアを押し入れる。
「昼はこれにしますからもう少し大人しくしててください。」
レイランはこの小麦粉生地で巻かれた野菜と肉巻きの料理を2つ買う事にする。2つというのはレイランと買いに出るのが難しいカルメンの物である。
「あ、お兄さん!この小っちゃい生地貰ってもいいですか?」
レイランは胸のポケットを押さえながら前かがみになりその胸の谷間を露店の男に見せつける。
「……。」
「ね?お兄さんダメ?」
「はっ!?いい。いいですよ!もっと大きなものを!」
「この小さいのがいいんです。ありがとうございます。」
レイランは2つの肉巻きを受け取ると歩きながら小さい生地へ自身の分の肉と野菜を千切り小さな生地へと巻いていく。
「フレミア様、お待ちかねの料理ですよ。」
「ふ、ふふふ、このいかにも低所得の者が食べそうな雑多な料理なのにこの五感を刺激する料理は…じゅるり!」
「あのフレミア様、喋り方が少々おかしいのですが。」
「気にしないで!昔から祭りに出るというこうした料理の話をメイドたちから聞いていて一度は食べてみたいと思っていたのよね!!ん~…いい匂い、頂きます!」
夢中で食べているフレミアを覗き見て、レイランはきっとユウキもこういう気分だったんだなと想像しくすりっと笑う。食べかすがとか汁がとか思っていたに違いない。
レイランはフレミアが食べ終わるのを待ってからカルメンの部屋へと向かいながら先程の話を聞く。
「フレミア様、先程の話なのですが。」
「レイラン、貴女は世界樹の雫を知っているかしら?」
言われてレイランは何度かその手の伝説の話を酒場で冒険者たちに聞かされたのを思い出す。
「ええ、酒場で冒険者の話を聞いた程度ですが。」
「ユウキ玉は使用できる期間やどこまでかの実験は必要とはいえ、私の予想だと世界樹の雫に匹敵するのではないかと思っているのよ。死者に使用した事がないから世界樹の雫よりも上かはわからないけれどね。」
「それって凄いじゃないですか!伝説のアイテムと同じレベルの効力を持っているなんて、確か数十年に一度しか手に入れる事が出来ないという話ですよね。地面に落ちると能力が消える為、空中で小瓶などに入れなければならないという難易度の高い。」
「ええ、そしてそれを求めて二代前の我が国の王は帝都に戦争を仕掛けたわね。」
レイランはそれを聞き驚く。
「それってあの三つ巴の戦ですよね?戦の原因は獣人族が両国に戦いを挑んできたからだったのでは?そして、協力して戦っていた帝都が裏切って三つ巴の戦いになった。」
フレミアは幼少期に祖父より聞かされた話を思いだし嫌な顔をする。
「勝ったのは我が国らしいけれども。それに至る理由は嘘よ。本当は命惜しさに世界樹を奪い合った王達の私情からの戦争よ。」
祖父の父親が大病を患った際にその世界樹の雫によって一命をとりとめたという話。たったの一雫、その一滴により今の王国があるのだという。
祖父に場所と次はいつかなど散々教え込まれた記憶がよみがえりフレミアはそういえばそれもあと数年だっけと思いだす。
「そんな。それで戦争が?」
「そんな?重要な事よ。命のストックが一つあるような物よ。争いなく手に入るシロモノであるはずがないでしょう。」
レイランはカルメンの酒場へ戻り声を小さくしながらフレミアと話続ける。
「それが人間の身体からポンポン出るとわかったらどうなると思う?」
「それは…ユウキにお願いする人が後を絶たなくなる。」
「おめでたいわね。それなら穏便に金を市場価値に合わせて要求するだけだから簡単なのよ。けど答えは違うわ。世の中のすべてが敵になると思いなさい。」
レイランは絶句する。
「驚くことではないわよ。バレればユウキはよくて人体実験の道具ね。もちろん大量に精製させた後ね。方法があれだから多少はいい思いも出来るのかもしれないけど。でもね、アレが保存の効くモノならどれだけ価値のあるモノになると思う?過去に戦争の火種にもなっている奇跡の雫。ちなみにだけど、売買するとしたら小さな街をまるまる買えると思うわよ?」
「街が!?」
危うく階段を踏み外す所であった。冗談だろうと思いたいがフレミアの表情を見る限りそれは本当なのだろう。
「ええ、だから不味いのよ。仮にユウキ玉で治すにしてもユウキは魔術で治している魔術師であり”教会と同じ”レベルの効果程度を使用できる者としておきたいのよね。」
フレミアは食べ終わると話は取り敢えずこのくらいにして戻りましょうと言う。
「お帰りなさい。なんか申し訳ないわね。本来なら私がご馳走できればいいのだけれども。」
部屋に戻るとカルメンがお茶を用意して待ってくれていたようだ。
「いいですよ。昔助けてもらったお礼です。はい、どうぞ。」
「じゃあ、遠慮なく。久しぶりに肉を食べる気がするわ。…最近野菜ばかりだったから。」
カルメンはゆっくりと肉巻きを頬張る。レイランはそれを見てから少しづつ自分も食べ始める。
「残すなら頂戴ね!まだ、食べれるから!」
「ん?今何か言ったかしら?ごめんなさい、聞きとれなくて。」
「そうそう私がおかわりのお茶を入れるって言ったのよ。」
レイランは慌てて残りを口に入れると席を立ちお湯を探す。
「私はまだあるからいいわ。それよりもレイラン。貴女も出て見ない?これに。」
「ええ!?」
「別に驚くことではないでしょう?踊り子の祭りなのだから。」
「それはそうかもしれないけど。」
「隣国のフェイ王子が国王に書状を送ってたのは知ってる?噂のレベルではあるのだけれども、なんでもこの国の一番の踊り子を我が国に招待したいって話したらしいわよ。」
「そんなの私は…あっ!?」
城からの出頭命令が確かにあった。でもそれは…。
(ないわ、書状でしょう?あんたに執着してたハゲ大臣がいたわよね?あれが他国に逃げられるかもしれないような機会や口実を与えるわけないじゃない。話があったとしたんならそれは、自分のモノにしたいからか勇者の慰み者にさせて権力をより得る為よ。)
カルメンの手前いろいろと気になる事が聞けないのだがそういえばそういう話もあった。
ユウキと旅をしているうちに忘れていたが勇者の慰み物になるという噂もあったのだ。
「どうしたの?やはり何かあった?」
「ううん。けど祭典か…」
「私はねレイラン。最後になるにせよそうでないにせよ。貴方ともう一度踊ってみたいのよ。観客のいるステージで。レイランからしたら相手にもならないかもしれないけど。」
「そんなことないですよ。でも、来月ですよね。」
「そう。来週にはエントリーしに行かなきゃいけないのよ。」
「…少し考えさせてもらえませんか。」
「そうよね、貴女のいい人にも話しておかないといけないものね。」
「ち、ちが…は~もういいですよ。じゃあ、また来ますね。」
「待ってるわ。今週中に答えを出してね。」
レイランは立ち上がると舞踏祭のチラシを一枚もらい、フレミアに言われていたあの薬をそんなに効くのならと一錠だけ貰うと部屋を後にするのだった。
(でも私が隣国に行くって言ったらユウキはなんて言うだろう。また私が踊っている所を見たいって言ってくれてた。きっと喜んでくれるに違いないよね。でも、引きとめて欲しいという気持ちもあるのよね。ああ、最近の私はどうしてしまったのだろう。ユウキの事ばかり考えている気がする。踊りの祭りもそうだけど、今はカルメンさんの足を治すことを第一に考えなきゃいけないはずなのに。)
いつものフレミアならレイランがユウキを好きだという事にここで気づいただろう。
けれどフレミアは珍しく役に立つことを考えていた為にレイランの機微に気づかなかった。
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