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フレミアの提案と今後の方針
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「ただいま、誰もいないの?ユウキ?」
レイランは部屋に入って行く。静まり返った部屋には誰の気配もなくシンとしていた。
「ティナとどっか買い物にでも出かけたんじゃない?」
フレミアがレイランの元から抜け出し、お気に入りの海の見える奥のテーブルに飛んでいく。
「そうよね。一日中、部屋に居るわけないわよね。」
「アタシは部屋に居たよ?ユウキは用事があるって出てったけど。」
「きゃっ!?」
「おかえり、レイラン。」
レイランは部屋の入口に視線を戻すとそこに静かに座っているティナを発見し胸をなでおろす。
「驚いた、ティナそんな所で何をしているの?」
「気配を消す訓練。少しでも役にたてるように。」
ティナはゆっくちと立ち上がるとレイランの元に来る。
「レイランは友達見つけられた?あとフレミア様どうしたの?ケンカでもした?」
「友達は見つけられたわ。その帰り道から気になる事があるってフレミア様ずっとああして考え込んでいらっしゃるのよ。」
「ねえ、レイラン。その手に持っている紙は?」
ティナはレイランの手に持たれている紙を見て気になり質問する。
「ああこれね、隣国のお祭りのチラシよ。踊りの大会があるみたいなの。ユウキにちょっと相談しようかなって。」
「お祭り!!アタシ祭りはあの村が初めてだったけど全然皆と回れなかったし面白くなかったから今度は皆と楽しみたい!」
「そうね、でも私はちょっとだけ一緒にまわれないかもしれないのよね」
「どうして?」
「貴女聞いてなかったの?レイランは言ってたわよ。踊りの大会があるって。我が国のトップの踊り子が行くんだからそれに出るに決まってるじゃない」
ようやく考えがまとまったのかフレミアがティナに言う。
「そうなんだ?」
「ユウキに聞いてからだけどね。そうだ、訓練もいいのだけれども少し私の練習に付き合ってくれないかしら?久しぶりにどう?」
日も暮れ、レイランとティナが踊りの練習をし終える頃になりようやくユウキは部屋に戻ってきた。
ティナが午後に行動を別にした後、しっかりと近隣を探索し美味しい店を探してくれていたおかげで夜はフレミアも満足できる低価格でも美味しい食事を取れる事が出来た。四人は食事を終えると誰からともなく今日一日の出来事を話し始めた。
「ユウキの所はユウキの所で色々とあったみたいね……ここの司教の名は確かウルガだったと思うわ」
フレミアはウルガ司教の噂を色々と耳にしたことがあった。教会には二タイプの人間がいる。純粋に神を信仰し人々の為にその力を平等に使おうとする現教皇派と一部の枢機卿が自己の利益に走っているという噂のある教会の闇の部分の一派である黒十字教と呼ばれる教会を隠れ蓑に暗躍していると噂のある闇の組織である。そして調査対象にはウルガ司教の名があったとフレミアは記憶している。
「なるほどね、二人の持ち寄った問題…というかこれもう高難度のクエストレベルよね。目の見えない妹の為に回復魔術を覚える為に教会に入ろうとする少女を助けるのと踊れなくなった病の踊り子の復活の手助けとか。」
フレミアがまとめるとレイランはちらりとユウキを見る。その視線に気づいたフレミアが先制して言葉を発する。
「けれど、どんな事情が誰にあろうとも今の所、私達のこのパーティー以外のメンバーにあれを使うのはダメよ。ユウキもいいわね。」
「でも、レイランにとって大事な人なんだろ?そりゃ、作らなくてもいいならその方がいいけど…痛みもあるし。」
ユウキはレイランの為なら構わないと話を聞きながら思っていただけにフレミアの禁止発現に戸惑う。
「でもそうすると見捨てるって事?」
ティナの発言にレイランはギュッと手を握る。それを視界に捉えていたフレミアは頭を掻くと爪楊枝を人目を気にしながら取り出しテーブルの真ん中に立つと三人に自身を隠すように近づくようにいう。
「あなた達が本気で彼女たちの為に何かしたいというのなら一つだけ策があるわ。ユウキの力も使わず、教会の力も借りないでこれらの問題を解決し、同時に街の人たちにも関わるこの問題を解決する方法がね。でも、それをやるには覚悟が必要よ。」
「覚悟?」
ティナが聞き返す。
フレミアは緑豆を爪楊枝でさして机に置く。これが教会、これが元々あった街医師、これが薬師の店ねと言いながら三つ豆を並べる。
「そうでしょう。他の街では教会があっても薬師やはぐれの魔術師が病気になった人を見たりして稼いだりしているのにこの街には徹底して排除したかのように居ないのよ?それに、はぐれで経営しないように回復の魔術を使えそうな人を教会が裏口で迎え入れたり。はぐれで生きていくよりも教会に入れれば衣食住の保証と神のご加護が与えられると市民は考えているでしょう?冒険者になりたいっていう術師でもなければ、いい暮らしが出来ると噂される教会の人間になりたいって思うわよ。」
フレミアは豆を二つゴルフのように爪楊枝で弾き教会のそれだけが残った状態をみせる。
「冒険者の中に回復が使える人がいてクエスト依頼でもかけで引っかかればいいわよ。けれど、なければ病気になったら教会に行くしか助かる方法がないのよ。もし、今カルメンのような病気が町中に広がったら?」
「教会だけが儲かる。」
「それだけじゃない。助けられた人は教会に信仰心を抱くのでは?」
レイランがそれに答え、ユウキが言葉を繋げる。
「この玉、何処かで見た事があると思ってたのよね。」
フレミアは残された豆の横に同じような大きさのそれを置く。
「これ、中が塩分で凝縮された塩の塊と周りを豆の薄皮で覆った物よ。それにちょっとした呪いがかけられているわ。」
「呪い!?」
レイランが驚き手にしたそれをナイフで半分に割る。
「これはクスリの粉ではないの?」
「舐めて確かめるのはおススメしないわよ。さっきも言った通り呪いがかけられているから。で、昔の王族の数名がね同じ病でなくなっているのを思い出したのよ。足が腫れあがり、手が腫れあがり、いずれは腐っていくね。そして、塩の過剰な取り過ぎわねあまり広がっていないようだけれども死に至るのよ。身体のこことここを侵してね。死に至る程、普通は料理に使われないしこうして塊で飲む事なんてないでしょう?飲めばそのしょっぱさや喉の渇きで水を補給したりで薄めたりするのだから。けど、こうして呪いでその感覚を麻痺させて飲ませ続ければどうなるか。この毒薬とも呼べる知識は市民には伝えないようにしていたのよ。けど、王族内でしか使われていなかった毒薬が…。そもそも誰がこの古くからある古典的な毒を使う事を考えたのか?カルメンの言う薬師とは何者?こんな物を使うなんて裏にいるのは王族に近しい貴族か教会じゃないかしらね。」
フレミアは豆を再度一つ爪楊枝で突き刺すと教会の横に並べる。
「自ら毒を撒き、お金を持ってきた病人を治して教会の価値を高め、さらに別の人に毒を撒きお金を回収しながら信仰を煽る。なんて悪質なのかしらね。」
「それじゃ、カルメンは…」
「たぶん思ってる通りよ。街で評判な踊り子と言うか酒場の女店主が教会で病気を治したとしたらその評判は街に轟くでしょう?飲み屋仲間でも話題になるでしょうし、酒場はいい情報の拡散場ましね。予定と外れて従業員の子を治してしまって、目当ての相手のお金がなくなるとは思わなかったでしょうけどね。まあ、でもあの足でも抱いて金を出してる男がいればいずれは教会に治しに来るとか司教は思っているんじゃないかしら。普通、レイランや私のように移る病気だと思うんじゃない?あんな状態なの見せられたら。それでも抱くなんてよっぽどあのカルメンが好きなファンなのか教会から使わされている男達でしょうね。教会内では性欲は隠す物。けど教会の連中の上層部は違う。まあ、性欲処理と自分たちの都合の為に身体の調子を見極めながらギリギリまで性欲処理の道具として使って、いよいよ危なくなったらお金を多めに渡して治させるとか考えているんじゃないかしら?来てる男は多分、回復魔法を使えて病状の進行を見極めれるレベルの男達だと思うわよ。で、治れば評判も遅いながらもついて来る。普通にファンは多いんでしょ?」
「そんな、じゃあお金を渡して教会で治させるとかは?」
「結局は教会の評判をあげるのに手伝うだけで根本の解決にはならないでしょう?」
フレミアはもう一つ緑の豆を突き刺す。
「ならフレミアの言う覚悟とその案っていうのは?」
ユウキはフレミアに尋ねる。
「だから、作ってしまえばいいのよ。私達で診療所を。作るのは簡単よ。診療所を作るのに許可や申請何てないのだから。できたばかりの診療所なんて教会もすぐには手を出さないと思うわよ。だって実績のない出来立ての診療所にこれだけ教会を頼ってる街の人たちが行くと思う?同じお金、もしくは少し安いだけなら確実な神の保証がある教会に行くわよね。だからこそ、そこに隙が出来るのだけれども。」
フレミアはあくどい顔をする。へっへっへっへっ……と笑うフレミアを知らない人間が見たとしたらそれこそ怪しい魔女か何かだと思うに違いない。事実は妖精であり、王女であるのだが。
そして、緑の豆を一つ距離をあけ教会と薬師の横に置く。そして、さらに一つ二つと豆を足していく。
「有名になっても一人だと潰されるでしょうね。だからね、組織も作ってしまうのよ王室医療班のような複数の人たちを同時に同じ場所で勤務させる。半年以内に出来れば二、三ヶ所は施設を作りたいわね。私だから思いついた画期的な診療所よ!軍事施設でもないのに医療を行える人間が大勢いて、薬師もそこに常駐するようにすれば奴らも迂闊には手を出せなくなるわ。もちろんフレミアの名で許可通すし。最悪、勇者と知り合いなんだから勇者にユイトが言えばいいんだし。」
「レイはともかく。なるほどね、個人経営の診療所ではなく病院を作ってしまうのか。それを経営しているのが冒険者だったりすれば教会も手が出しにくくなる。」
理解できていないティナとレイランを他所にユウキはフレミアの提案に賛同する。
「病院が何かは知らないけど…ユウキのいた国には普通にあったのかしら?」
「ああ、至る所にあったよ。例えば、歯を診る先生だったり、鼻や耳や喉を診る先生、身体の中を診る先生。身体の皮膚や身体の調子を診る先生。魔法や魔術のない国だったからね。人の手で直接切ったり縫合したり…」
「魔術がないからこその細分化された診療所の集合組織ってわけね。それ面白いわね。」
フレミアはいいわねと言うと皆に言う。
「私の考えはこう、カルメンのあの酒場をその病院とやらにしてしまうのよ。そして、あのマッサージにいる教会に入ろうとしている才能はあるけどお金のない人たちをごっそりと貰ってしまうのよ。教会にどうしても入りたいって子でなくユウキの言ってたミミルみたいな子が他にもいれば……私達出資者がいるわけだからお金もちゃんと貰えるし軌道にのれば、私達も投資 以上のお金が戻って来るわ。どちらにとっても教会に縛られるよりも稼げるならいい話じゃない?」
ティナがスッと手を挙げて発言の許可を得ようとする。
「なにか聞きたいことでもあるの?」
「でも、教会じゃないと魔術を教えられないんじゃ。フレミア様、回復系ってほとんどは儀式とか継承とか段取りがないと覚えられないって聞いた事ある。」
レイランもそれが気になっていたのだ、それが出来ないからこそ皆教会で学ぼうと彼女らはしているのだろう。
冒険者の中で回復の魔術が使える者は大抵は教会から逃げ出した者がほとんどなのだ。使えても儀式を覚えていたりするものはあまりいない。もちろん、王室医療班を引退した人間が弟子を取って田舎で余生の中で教えるなどもあるし、はぐれの術師がいるのも事実でありどういった経緯で受け継がれ生まれてくるのかは知らないが。
そんな心配をしているレイランに何を今更と教会の豆を突き刺し端を食べるフレミア。
「場所はある、回復の魔術を使える才能がある人間も目星が複数いる。儲かる見込みも多いにある。それに足が治れば今後の管理を任せる役にカルメンを置けば普通に私達は旅も出来る。初めの出資者はユウキだけど運営が順調にいけば、将来的にはいいパトロンがつく事になるわよ?しかも、必要に応じていつでも貴重な回復魔術を使える者達を自分たちの元やどこかに派遣したりもできる。そして、あなた達の一番の問題になっている教えるがいないという事だけれども、何か忘れていないかしら?」
フレミアは食べかけの豆のついた爪楊枝をユウキ達にビシッと向ける。その重さによろけなければ格好がついたのだが。
「おっとと。こ、ここには国内最高の魔術知識と魔術力を持った天才たる私がいるのよ?ユウキのような非常識な回復能力はないけど、当然、教会が扱える程度の回復魔術の継承と言うか伝承に近いのだけれども私にかかれば簡単に出来るわよ!」
ふんぞり返るのはいいのだが妖精姿を見られるわけにはいかないのにどう教えるのだろうか……。
レイランは部屋に入って行く。静まり返った部屋には誰の気配もなくシンとしていた。
「ティナとどっか買い物にでも出かけたんじゃない?」
フレミアがレイランの元から抜け出し、お気に入りの海の見える奥のテーブルに飛んでいく。
「そうよね。一日中、部屋に居るわけないわよね。」
「アタシは部屋に居たよ?ユウキは用事があるって出てったけど。」
「きゃっ!?」
「おかえり、レイラン。」
レイランは部屋の入口に視線を戻すとそこに静かに座っているティナを発見し胸をなでおろす。
「驚いた、ティナそんな所で何をしているの?」
「気配を消す訓練。少しでも役にたてるように。」
ティナはゆっくちと立ち上がるとレイランの元に来る。
「レイランは友達見つけられた?あとフレミア様どうしたの?ケンカでもした?」
「友達は見つけられたわ。その帰り道から気になる事があるってフレミア様ずっとああして考え込んでいらっしゃるのよ。」
「ねえ、レイラン。その手に持っている紙は?」
ティナはレイランの手に持たれている紙を見て気になり質問する。
「ああこれね、隣国のお祭りのチラシよ。踊りの大会があるみたいなの。ユウキにちょっと相談しようかなって。」
「お祭り!!アタシ祭りはあの村が初めてだったけど全然皆と回れなかったし面白くなかったから今度は皆と楽しみたい!」
「そうね、でも私はちょっとだけ一緒にまわれないかもしれないのよね」
「どうして?」
「貴女聞いてなかったの?レイランは言ってたわよ。踊りの大会があるって。我が国のトップの踊り子が行くんだからそれに出るに決まってるじゃない」
ようやく考えがまとまったのかフレミアがティナに言う。
「そうなんだ?」
「ユウキに聞いてからだけどね。そうだ、訓練もいいのだけれども少し私の練習に付き合ってくれないかしら?久しぶりにどう?」
日も暮れ、レイランとティナが踊りの練習をし終える頃になりようやくユウキは部屋に戻ってきた。
ティナが午後に行動を別にした後、しっかりと近隣を探索し美味しい店を探してくれていたおかげで夜はフレミアも満足できる低価格でも美味しい食事を取れる事が出来た。四人は食事を終えると誰からともなく今日一日の出来事を話し始めた。
「ユウキの所はユウキの所で色々とあったみたいね……ここの司教の名は確かウルガだったと思うわ」
フレミアはウルガ司教の噂を色々と耳にしたことがあった。教会には二タイプの人間がいる。純粋に神を信仰し人々の為にその力を平等に使おうとする現教皇派と一部の枢機卿が自己の利益に走っているという噂のある教会の闇の部分の一派である黒十字教と呼ばれる教会を隠れ蓑に暗躍していると噂のある闇の組織である。そして調査対象にはウルガ司教の名があったとフレミアは記憶している。
「なるほどね、二人の持ち寄った問題…というかこれもう高難度のクエストレベルよね。目の見えない妹の為に回復魔術を覚える為に教会に入ろうとする少女を助けるのと踊れなくなった病の踊り子の復活の手助けとか。」
フレミアがまとめるとレイランはちらりとユウキを見る。その視線に気づいたフレミアが先制して言葉を発する。
「けれど、どんな事情が誰にあろうとも今の所、私達のこのパーティー以外のメンバーにあれを使うのはダメよ。ユウキもいいわね。」
「でも、レイランにとって大事な人なんだろ?そりゃ、作らなくてもいいならその方がいいけど…痛みもあるし。」
ユウキはレイランの為なら構わないと話を聞きながら思っていただけにフレミアの禁止発現に戸惑う。
「でもそうすると見捨てるって事?」
ティナの発言にレイランはギュッと手を握る。それを視界に捉えていたフレミアは頭を掻くと爪楊枝を人目を気にしながら取り出しテーブルの真ん中に立つと三人に自身を隠すように近づくようにいう。
「あなた達が本気で彼女たちの為に何かしたいというのなら一つだけ策があるわ。ユウキの力も使わず、教会の力も借りないでこれらの問題を解決し、同時に街の人たちにも関わるこの問題を解決する方法がね。でも、それをやるには覚悟が必要よ。」
「覚悟?」
ティナが聞き返す。
フレミアは緑豆を爪楊枝でさして机に置く。これが教会、これが元々あった街医師、これが薬師の店ねと言いながら三つ豆を並べる。
「そうでしょう。他の街では教会があっても薬師やはぐれの魔術師が病気になった人を見たりして稼いだりしているのにこの街には徹底して排除したかのように居ないのよ?それに、はぐれで経営しないように回復の魔術を使えそうな人を教会が裏口で迎え入れたり。はぐれで生きていくよりも教会に入れれば衣食住の保証と神のご加護が与えられると市民は考えているでしょう?冒険者になりたいっていう術師でもなければ、いい暮らしが出来ると噂される教会の人間になりたいって思うわよ。」
フレミアは豆を二つゴルフのように爪楊枝で弾き教会のそれだけが残った状態をみせる。
「冒険者の中に回復が使える人がいてクエスト依頼でもかけで引っかかればいいわよ。けれど、なければ病気になったら教会に行くしか助かる方法がないのよ。もし、今カルメンのような病気が町中に広がったら?」
「教会だけが儲かる。」
「それだけじゃない。助けられた人は教会に信仰心を抱くのでは?」
レイランがそれに答え、ユウキが言葉を繋げる。
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フレミアは残された豆の横に同じような大きさのそれを置く。
「これ、中が塩分で凝縮された塩の塊と周りを豆の薄皮で覆った物よ。それにちょっとした呪いがかけられているわ。」
「呪い!?」
レイランが驚き手にしたそれをナイフで半分に割る。
「これはクスリの粉ではないの?」
「舐めて確かめるのはおススメしないわよ。さっきも言った通り呪いがかけられているから。で、昔の王族の数名がね同じ病でなくなっているのを思い出したのよ。足が腫れあがり、手が腫れあがり、いずれは腐っていくね。そして、塩の過剰な取り過ぎわねあまり広がっていないようだけれども死に至るのよ。身体のこことここを侵してね。死に至る程、普通は料理に使われないしこうして塊で飲む事なんてないでしょう?飲めばそのしょっぱさや喉の渇きで水を補給したりで薄めたりするのだから。けど、こうして呪いでその感覚を麻痺させて飲ませ続ければどうなるか。この毒薬とも呼べる知識は市民には伝えないようにしていたのよ。けど、王族内でしか使われていなかった毒薬が…。そもそも誰がこの古くからある古典的な毒を使う事を考えたのか?カルメンの言う薬師とは何者?こんな物を使うなんて裏にいるのは王族に近しい貴族か教会じゃないかしらね。」
フレミアは豆を再度一つ爪楊枝で突き刺すと教会の横に並べる。
「自ら毒を撒き、お金を持ってきた病人を治して教会の価値を高め、さらに別の人に毒を撒きお金を回収しながら信仰を煽る。なんて悪質なのかしらね。」
「それじゃ、カルメンは…」
「たぶん思ってる通りよ。街で評判な踊り子と言うか酒場の女店主が教会で病気を治したとしたらその評判は街に轟くでしょう?飲み屋仲間でも話題になるでしょうし、酒場はいい情報の拡散場ましね。予定と外れて従業員の子を治してしまって、目当ての相手のお金がなくなるとは思わなかったでしょうけどね。まあ、でもあの足でも抱いて金を出してる男がいればいずれは教会に治しに来るとか司教は思っているんじゃないかしら。普通、レイランや私のように移る病気だと思うんじゃない?あんな状態なの見せられたら。それでも抱くなんてよっぽどあのカルメンが好きなファンなのか教会から使わされている男達でしょうね。教会内では性欲は隠す物。けど教会の連中の上層部は違う。まあ、性欲処理と自分たちの都合の為に身体の調子を見極めながらギリギリまで性欲処理の道具として使って、いよいよ危なくなったらお金を多めに渡して治させるとか考えているんじゃないかしら?来てる男は多分、回復魔法を使えて病状の進行を見極めれるレベルの男達だと思うわよ。で、治れば評判も遅いながらもついて来る。普通にファンは多いんでしょ?」
「そんな、じゃあお金を渡して教会で治させるとかは?」
「結局は教会の評判をあげるのに手伝うだけで根本の解決にはならないでしょう?」
フレミアはもう一つ緑の豆を突き刺す。
「ならフレミアの言う覚悟とその案っていうのは?」
ユウキはフレミアに尋ねる。
「だから、作ってしまえばいいのよ。私達で診療所を。作るのは簡単よ。診療所を作るのに許可や申請何てないのだから。できたばかりの診療所なんて教会もすぐには手を出さないと思うわよ。だって実績のない出来立ての診療所にこれだけ教会を頼ってる街の人たちが行くと思う?同じお金、もしくは少し安いだけなら確実な神の保証がある教会に行くわよね。だからこそ、そこに隙が出来るのだけれども。」
フレミアはあくどい顔をする。へっへっへっへっ……と笑うフレミアを知らない人間が見たとしたらそれこそ怪しい魔女か何かだと思うに違いない。事実は妖精であり、王女であるのだが。
そして、緑の豆を一つ距離をあけ教会と薬師の横に置く。そして、さらに一つ二つと豆を足していく。
「有名になっても一人だと潰されるでしょうね。だからね、組織も作ってしまうのよ王室医療班のような複数の人たちを同時に同じ場所で勤務させる。半年以内に出来れば二、三ヶ所は施設を作りたいわね。私だから思いついた画期的な診療所よ!軍事施設でもないのに医療を行える人間が大勢いて、薬師もそこに常駐するようにすれば奴らも迂闊には手を出せなくなるわ。もちろんフレミアの名で許可通すし。最悪、勇者と知り合いなんだから勇者にユイトが言えばいいんだし。」
「レイはともかく。なるほどね、個人経営の診療所ではなく病院を作ってしまうのか。それを経営しているのが冒険者だったりすれば教会も手が出しにくくなる。」
理解できていないティナとレイランを他所にユウキはフレミアの提案に賛同する。
「病院が何かは知らないけど…ユウキのいた国には普通にあったのかしら?」
「ああ、至る所にあったよ。例えば、歯を診る先生だったり、鼻や耳や喉を診る先生、身体の中を診る先生。身体の皮膚や身体の調子を診る先生。魔法や魔術のない国だったからね。人の手で直接切ったり縫合したり…」
「魔術がないからこその細分化された診療所の集合組織ってわけね。それ面白いわね。」
フレミアはいいわねと言うと皆に言う。
「私の考えはこう、カルメンのあの酒場をその病院とやらにしてしまうのよ。そして、あのマッサージにいる教会に入ろうとしている才能はあるけどお金のない人たちをごっそりと貰ってしまうのよ。教会にどうしても入りたいって子でなくユウキの言ってたミミルみたいな子が他にもいれば……私達出資者がいるわけだからお金もちゃんと貰えるし軌道にのれば、私達も投資 以上のお金が戻って来るわ。どちらにとっても教会に縛られるよりも稼げるならいい話じゃない?」
ティナがスッと手を挙げて発言の許可を得ようとする。
「なにか聞きたいことでもあるの?」
「でも、教会じゃないと魔術を教えられないんじゃ。フレミア様、回復系ってほとんどは儀式とか継承とか段取りがないと覚えられないって聞いた事ある。」
レイランもそれが気になっていたのだ、それが出来ないからこそ皆教会で学ぼうと彼女らはしているのだろう。
冒険者の中で回復の魔術が使える者は大抵は教会から逃げ出した者がほとんどなのだ。使えても儀式を覚えていたりするものはあまりいない。もちろん、王室医療班を引退した人間が弟子を取って田舎で余生の中で教えるなどもあるし、はぐれの術師がいるのも事実でありどういった経緯で受け継がれ生まれてくるのかは知らないが。
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「場所はある、回復の魔術を使える才能がある人間も目星が複数いる。儲かる見込みも多いにある。それに足が治れば今後の管理を任せる役にカルメンを置けば普通に私達は旅も出来る。初めの出資者はユウキだけど運営が順調にいけば、将来的にはいいパトロンがつく事になるわよ?しかも、必要に応じていつでも貴重な回復魔術を使える者達を自分たちの元やどこかに派遣したりもできる。そして、あなた達の一番の問題になっている教えるがいないという事だけれども、何か忘れていないかしら?」
フレミアは食べかけの豆のついた爪楊枝をユウキ達にビシッと向ける。その重さによろけなければ格好がついたのだが。
「おっとと。こ、ここには国内最高の魔術知識と魔術力を持った天才たる私がいるのよ?ユウキのような非常識な回復能力はないけど、当然、教会が扱える程度の回復魔術の継承と言うか伝承に近いのだけれども私にかかれば簡単に出来るわよ!」
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ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
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