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レイの過去編 歪な心 (小学生)

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   レイはクラスメイトから嫌われていた。

 太っていてどんくさく常にユウキの後ろに隠れているレイ。幼馴染という理由で学年のマドンナであるナツミにユウキと同様に特別扱いされ世話を焼かれている事をクラスメイトの男たちは気に食わずにいた。

 しかしそれは男に限らず、帰宅時にユウキの隣を独占する邪魔な幼馴染であるレイを疎むクラスメイトの女にも言える事である。裏で男達を動かしてたのはクラスメイトの女達であった。

 幼馴染であるユウキとナツミとクラスが離れた小学校5年の時、レイはイジメられるようになる。

 ユウキや周りの大人達の見えないところでクラスメイトはレイに対して毎日のようにイジメを繰り返していた。

 小学校5年生の夏休み明け。

 隠された上履きを探しながらレイは涙を流す。夏休み明けの今日、彼らのイジメも夏休みに過ごした夏の楽しさで自分の事など忘れてくれるのではないか、もう放っておいてくれるのではないかと期待していただけに久しぶりの登校初日に受けた行為が今まで以上に胸に刃となって突き刺さった。

 「…そんな所で何してるんだ?レイ。」

 そして、よりにもよって一番見られたくなかった相手についに見つかってしまう。

 隣のクラスで一番の人気者であり、運動も勉強もなんでもできる幼馴染のユウキ。

 「何だこれ!誰がやった!」

 ユウキは遠くから見ていたのだろう主犯と思われる男とその手下たちを見つけると走り出す。

 「げっ!2組のユウキだ!」

 少年たちは逃げようとするがユウキに捕まりボコボコにされる。泣いて謝る少年たちをユウキは許さず、レイの元まで連れていくと

 「謝る相手が違うだろ!」

 そう言うとレイの前に四人を並ばせ謝らせる。

 「もういいよ。これからは二度とこんな事しないで……」

 「ちっ、ナツミさんの……」

 「おい、お前達ナツミにまで手を出そうとしてたのか?」

 ユウキが睨むと慌てて4人は全力でそれを否定するとそのまま逃げていく。

 「……ごめんユウキ。」

 ユウキは大きくため息をつくと拳でレイの頭を小突く。

 「痛いっ」

 「当たり前だ。レイ、なんで僕に言わなかったんだ?いつからだ?」

 「だ、だって……」

 レイは言葉を呑み込む。

 (あいつらはナツミが好きなのだ。しかし、ナツミはいつもユウキと僕といる。ユウキには勝てないから必然的に僕に彼らは八つ当たりに来ていたなんてユウキに言えないよ。ユウキ、人気があるのに暴力振るってたら皆から嫌われちゃう……こんなにどんくさくて醜い僕と仲良くしてくれてるユウキに迷惑はかけられないよ。)

 そんなレイの心情を知らないユウキは溜息を吐くとレイの頭を撫でる。

 「あのな……レイ。僕たちは幼馴染で親友だろ?言いたい事は言うべきだし遠慮はしちゃだめだ。」

 「でも……」

 「それが嫌なら……ほいっ!」

 ユウキは草むらの中でレイの上履きを見つけレイに投げ渡す。

 「わっわわ。」

 レイはなんとかそれをキャッチする。

 「ナイスキャッチ!」

 ユウキは二カッと笑うとレイに言う。

 「僕がお前達の勇者になってやる!だからお前も俺達の勇者になれ!」

 「ぷっ、なにそれ勇者が二人になってるよ。」

 「ん、そうか……同じくらい強くなって対等になればお互いに助けられるだろっていいたかったんだけど……わかりにくいか?まあいいや、とにかくお互いがお互いに勇者になってナツミを含めて幼馴染同士守りあおうぜ!だからお前も僕を守れるように強くなれよ!そしてモテる男になれ!」

 「何それ?モテるの関係ないだろ?」

 「え、だって勇者ってモテた方がカッコいいじゃん!!」

 「ぷっ、そうだね……うん。ユウキがそういうなら僕……俺も頑張って勇者になる!」

 「よし!じゃー僕たちは今日から勇者コンビだ!」

 それからだ。

 レイは自分を変える為に丸い身体を鍛え、気にしていなかった容姿をよくするために雑誌を買い、ワックスを使い髪を整えることを覚えた。

 それでもイジメは隠れた所で起きてはいたがレイは理不尽なイジメには決して負けないと立ち向かっていった。

 時折、クラスメイトの女子が相手となってあらわれた時や対処できない人数で来られた時は、ユウキにも助けを求めた。ユウキはいつでも目の前でカッコよく対応してくれた。

(絶対にユウキの隣で守られてるだけじゃなく、共に堂々と歩いて行ける勇者になるんだ!)
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