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旅立ち
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風呂を出るとティナが既に部屋を掃除、換気し終えていた。
「ご主人様、アタシ流のやり方でだけど荷物も纏めておいたからいつでも出れるよ。」
ティナは言葉遣いと態度からは想像できないが意外と女子力が高いのかもしれない。元盗賊という事で色々と雑なイメージがあったのだ。
「な、なんだよ。ダメだったか?」
「いや、助かったよ。ありがとうなティナ。」
「本当か?よかったー。いじられたくないモノとかあったらどうしようとか考えたんだけど。どうしてもアタシやりたくなってさ。」
つい、頭を撫でてしまう。
「えへへへっ。」
(…犬みたいだよな。ティナって。しっぽがあったら絶対に左右に振っているだろうな。)
「あー…ゴホンッ。私が居る事を忘れないで欲しいのだけれども。」
フレミアは外に出ていたのかフワフワとどこからともなく飛んでくると、すっかり定着してしまった上着のポケットにすっぽりと収まると顔だけ出す。
「ご、ごめん。フレミア姫様。」
「ああ、いいわよ。奴…じゃなかったティナ。私の事はフレミアさんで。」
「は、はい。フレミアさん。」
「じゃあ行きましょう。レイランはもう外で待っていたわよ?」
『あっ!』
ユウキとティナは二人して声をハモらせる。
「アンタたち…まさか忘れてたの?レイランの事。」
「……。」
「呆れた。あれだけパーティーとか平等にとかいう事を言ってたのに。」
「申し訳ない。」
「レイランに言った方がいいと思うわよ。凄く不機嫌だったから。美人って怒るとあんなにも怖いのね。」
しかし、あれほど表に出るなとリズにも言われていたのにフレミアは外に出たようである。
(お前、外に出たのか?)
(仕方がないじゃない!事情があったのよ私にも!)
(くれぐれも、俺達以外には見つかるなよ?)
(わかってるわよ!)
そういうフレミアからは石鹸の香りが漂ってくるのであった。
(風呂か。おや?気のせいだろうか。少しポケットの中が昨日より重く感じるのだが…)
外に出ると壁にもたれかかるようにしてレイランが座り込んでいた。
「…皆、遅い。」
『ごめんなさい。』
三人は何も言わずにレイランに謝罪をしたのだった。
「昨日は…」
どこにと言いかけたユウキに即答でレイランは顔を赤くしまくしたてる。
「私は眠かったから隣の部屋でさっさと寝たわよ!三人の話声が聞こえたから戻らずにね!おかげで三人と違ってよく寝れたわ!だから遅刻もしてないし!何時まで起きて喋っていたのよ!」
「そ、そうなんだ。遅れてごめん。な、何時に寝たんだろう?あははは…。」
(よかった。気づかれてなかったのか。でも、朝に合流する時間なんて決めてたっけ?)
というユウキの呟きを聞き、フレミアだけはこれからどうなるのか先が思いやられるわと思うのであった。
フレミアだけは機嫌の悪いレイランの目の下にくまがあり、それを隠すようにメイクがされているのに気づいたのだった。
(そりゃそうよね。気絶していた私でさえ起こされるんだもの。あんなの聞かされてたら寝れないわよね。同じ状況だった女同士だもの…多分同じだったのかもしれないわね。レイランに今日は特に優しくしましょう。)
フレミアは自分の事のようにレイランの状況と行動を正しく把握していたのであった。
********************************
食事が終わると、一行は昨日の馬車を手配していた業者の元へと向かう。
「おおっ!凄ごいな!」
二頭立ての馬車がそこにはあり、座席が対面にある天蓋付きの箱形のスペースとその後ろには荷物が載せられるスペースが備えられていた。八人乗りだったものを寝泊まりしたいという話から後部の四席をなくした特殊な作りになっている為、普通に座れる者は御者一名と座席に座る四名のあわせて計五名となっている。
「いくらしたのよこれ。昨日は注文だけつけて値段はユウキにまかせて聞いてなかったけれど…私達の契約も含めて結構な金額を既に使っているのよね?大丈夫なの?」
「…絶対にダイジョブじゃないと思う。」
レイランの不安にティナが答える。この二人は守銭派である。
「まだ少しはあるけど、確かにこれからは節約しないとな…でも、旅の道すがら冒険者らしく依頼も受けていけば何とかなるだろ?」
「そうよね、野宿のあげくに草の上なんて私も考えられないもの。」
ユウキとフレミアは楽観主義であり散財派であるようだ。
ユウキの場合は無理にそうなろうとしているようにレイランには見えているのだが。
「…まあ、最悪の場合は私が歌って踊って稼ぐわ。そういう契約だしね。本当に不安よこのパーティー。いくら城に行きたくないとはいえ…早まったかしら。はあ。」
「アタシも稼ぐ!元盗賊だし!」
「…意気込みはいいのだけれども犯罪だけは止めてねティナ。兵に捕まってこの国の本来行かされる予定だったあの王城に逆戻りなんて事は私嫌だからね。」
妙にやる気を見せるティナにため息をつく。
(まだまだこんなに子供なのにね…。)
レイランは昨日の光景が頭をよぎり慌てて頭を振る。
「?」
「なんでもないわよ。気にしないで。いや、これからは気にして欲しいのだけれども…。」
「???」
そんな一行にさっそく問題が突きつけられるのであった。
「あの~」
それは多めの金額を支払ってもらう代わりに一昼夜寝ずにこの箱馬車を作るのに働き続けた寝不足の業者からの一言だった。
「ところでどなた様が御者様なのですか?説明したいのですけれども…。」
その一言に、三人が三人ともにお互いを見合うのであった。
(…誰も馬に乗れないのに昨日は内装やら機能やらで意見を言い合ってたのね。)
唯一馬に乗れるフレミアはユウキの胸ポケットで頭を抱えるのだった。
「ご主人様、アタシ流のやり方でだけど荷物も纏めておいたからいつでも出れるよ。」
ティナは言葉遣いと態度からは想像できないが意外と女子力が高いのかもしれない。元盗賊という事で色々と雑なイメージがあったのだ。
「な、なんだよ。ダメだったか?」
「いや、助かったよ。ありがとうなティナ。」
「本当か?よかったー。いじられたくないモノとかあったらどうしようとか考えたんだけど。どうしてもアタシやりたくなってさ。」
つい、頭を撫でてしまう。
「えへへへっ。」
(…犬みたいだよな。ティナって。しっぽがあったら絶対に左右に振っているだろうな。)
「あー…ゴホンッ。私が居る事を忘れないで欲しいのだけれども。」
フレミアは外に出ていたのかフワフワとどこからともなく飛んでくると、すっかり定着してしまった上着のポケットにすっぽりと収まると顔だけ出す。
「ご、ごめん。フレミア姫様。」
「ああ、いいわよ。奴…じゃなかったティナ。私の事はフレミアさんで。」
「は、はい。フレミアさん。」
「じゃあ行きましょう。レイランはもう外で待っていたわよ?」
『あっ!』
ユウキとティナは二人して声をハモらせる。
「アンタたち…まさか忘れてたの?レイランの事。」
「……。」
「呆れた。あれだけパーティーとか平等にとかいう事を言ってたのに。」
「申し訳ない。」
「レイランに言った方がいいと思うわよ。凄く不機嫌だったから。美人って怒るとあんなにも怖いのね。」
しかし、あれほど表に出るなとリズにも言われていたのにフレミアは外に出たようである。
(お前、外に出たのか?)
(仕方がないじゃない!事情があったのよ私にも!)
(くれぐれも、俺達以外には見つかるなよ?)
(わかってるわよ!)
そういうフレミアからは石鹸の香りが漂ってくるのであった。
(風呂か。おや?気のせいだろうか。少しポケットの中が昨日より重く感じるのだが…)
外に出ると壁にもたれかかるようにしてレイランが座り込んでいた。
「…皆、遅い。」
『ごめんなさい。』
三人は何も言わずにレイランに謝罪をしたのだった。
「昨日は…」
どこにと言いかけたユウキに即答でレイランは顔を赤くしまくしたてる。
「私は眠かったから隣の部屋でさっさと寝たわよ!三人の話声が聞こえたから戻らずにね!おかげで三人と違ってよく寝れたわ!だから遅刻もしてないし!何時まで起きて喋っていたのよ!」
「そ、そうなんだ。遅れてごめん。な、何時に寝たんだろう?あははは…。」
(よかった。気づかれてなかったのか。でも、朝に合流する時間なんて決めてたっけ?)
というユウキの呟きを聞き、フレミアだけはこれからどうなるのか先が思いやられるわと思うのであった。
フレミアだけは機嫌の悪いレイランの目の下にくまがあり、それを隠すようにメイクがされているのに気づいたのだった。
(そりゃそうよね。気絶していた私でさえ起こされるんだもの。あんなの聞かされてたら寝れないわよね。同じ状況だった女同士だもの…多分同じだったのかもしれないわね。レイランに今日は特に優しくしましょう。)
フレミアは自分の事のようにレイランの状況と行動を正しく把握していたのであった。
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食事が終わると、一行は昨日の馬車を手配していた業者の元へと向かう。
「おおっ!凄ごいな!」
二頭立ての馬車がそこにはあり、座席が対面にある天蓋付きの箱形のスペースとその後ろには荷物が載せられるスペースが備えられていた。八人乗りだったものを寝泊まりしたいという話から後部の四席をなくした特殊な作りになっている為、普通に座れる者は御者一名と座席に座る四名のあわせて計五名となっている。
「いくらしたのよこれ。昨日は注文だけつけて値段はユウキにまかせて聞いてなかったけれど…私達の契約も含めて結構な金額を既に使っているのよね?大丈夫なの?」
「…絶対にダイジョブじゃないと思う。」
レイランの不安にティナが答える。この二人は守銭派である。
「まだ少しはあるけど、確かにこれからは節約しないとな…でも、旅の道すがら冒険者らしく依頼も受けていけば何とかなるだろ?」
「そうよね、野宿のあげくに草の上なんて私も考えられないもの。」
ユウキとフレミアは楽観主義であり散財派であるようだ。
ユウキの場合は無理にそうなろうとしているようにレイランには見えているのだが。
「…まあ、最悪の場合は私が歌って踊って稼ぐわ。そういう契約だしね。本当に不安よこのパーティー。いくら城に行きたくないとはいえ…早まったかしら。はあ。」
「アタシも稼ぐ!元盗賊だし!」
「…意気込みはいいのだけれども犯罪だけは止めてねティナ。兵に捕まってこの国の本来行かされる予定だったあの王城に逆戻りなんて事は私嫌だからね。」
妙にやる気を見せるティナにため息をつく。
(まだまだこんなに子供なのにね…。)
レイランは昨日の光景が頭をよぎり慌てて頭を振る。
「?」
「なんでもないわよ。気にしないで。いや、これからは気にして欲しいのだけれども…。」
「???」
そんな一行にさっそく問題が突きつけられるのであった。
「あの~」
それは多めの金額を支払ってもらう代わりに一昼夜寝ずにこの箱馬車を作るのに働き続けた寝不足の業者からの一言だった。
「ところでどなた様が御者様なのですか?説明したいのですけれども…。」
その一言に、三人が三人ともにお互いを見合うのであった。
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