明るいパーティー(家族)計画!勇者になれなかった僕は…

にゃも

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マイオ村 ユウキとフレミア情報収集中。

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  (情報は酒のある所にやってくると言ったのは誰だったか…。)

 ユウキは激しく後悔する。

 「頼みます…嫁の為に…もうそれしかないのです。」

 「見ず知らずの男に抱かれて身籠られるのなら…まだ村長の推薦した顔のわかるお前さんの方が!」

 「どうせ…お前も俺達と同じようにやる前には勃たなくなるんだろう。」

 「ちっ、いい思いをしやがって。」

 酒場はカオスと化していた。

 持て余した負の感情を覇気のない男達がどこで発散しているかなど考えればわかりそうなものであるが酒場デビュー三回目のユウキに考えが足りないというのは可哀想なものであろう。

 「こんな時間からすでに飲んでいるなんてね。くさっ!くっつかないでよ!!」

 ユウキにしか聞こえない声でだがフレミアは悲鳴をあげていた。
 酒の匂いがする所にいるのと酒の匂いのする臭い男達に囲まれているのとでは全然意味合いが違うのだ。

 「ユウキ出ましょう!こんなダメな男達から得られるものなんてないわ!」

 フレミアは今にも泣きそうな声で胸を叩いてくる。

 (とはいえ、こんな人に囲まれてというか絡まれてたら抜け出せないぞ。)

 なんとか隙間を見つけ敵ディフェンダーの間を抜けるよう抜け出そうとするがファールも気にせずラグビーのように掴んだり抱き着いてきたりする酔っ払いの大勢を前にしてはバスケで鍛えた敵を躱すスキルも意味をなさない。数の暴力に簡単に捕まってしまう。

 「…あ、もうダメ。匂いで吐きそう。ごめんなさい。」

 未だかつて心底本気で謝った言葉を聞いたことがなかったフレミアが静かにギブアップ宣言をする。これにはユウキも少し慌てる。

 けれども、いくらトイレに行かせてくださいと言っても、用事がと言っても嫉妬とすがる男達の負の壁に阻まれ抜け出せない。

 誰かファウルを取ってくれる審判でもいればいいのだがと酒場のマスターを見るがマスターは勃たない側の男である。ユウキに同情の視線を向けはするものの、諦めろとでも言いたげに我関せずグラスを磨き始めている。

 胸を叩く力が段々と弱まって行きフレミアが何も言わなくなるのを感じるとユウキは本気で焦り始める。

 (ここから抜け出す為にリスクのある自己活性化を使うか?ティナもいない状況では危険だが…)

 心なしかフレミアが小刻みに震えているような気がするのだ。

 「離れろ!男ども!」

 救いの審判?達が酒場の入口からなだれ込んでくる。

 「な、なんだお前たち。」

 ユウキを離し後ずさる男達。

 完全にこの村での力の軍配がどちらにあるかを示しているかのような状況になる。

 「なんだとはなんだい?アタイを知らないわけではあるまい?」

 「ア、アルテミア様…どういった御用で?」

 「ちょいとな、アタイの雇い主からのご招待でそこのユウキを迎えに来たまでだ。ニーナ!」

 「ささ、こちらに。ユウキ様。」

 先頭で仁王立ちしているガタイのいい女性の合図により現れた小柄な女がユウキの腕を引いて外へと連れ出す。

 「はあ、はあ、大丈夫でしたか?ユウキ様。」

 見た目はティナと似ているのにアンバランスなモノを持った歳の近い少女が息を切らしながらユウキを見上げる。

 「私はミーナと言います。先ほど先頭に立っていたのは私達のリーダーをしているアルテミアさんです。」

 「リーダー?祭りの先導者か?」

 「先導者?アルテミアさんは昨年この街に来た冒険者ですよ?まあ確かに先導者的な立場にあるかも知れませんが。」

 ミーナは取り敢えずいいから私について来てくださいという。

 (あのまま酒場にいるよりはいいだろう。先ほどから無言が続いているフレミアが気になるし。)


**********************************
 ユウキとミーナは教会に着く。

 「すいません!シスターニーナはいますか?」

 ミーナは勢いよく扉をあけると祈りを捧げていたシスターに向かってドカドカと歩いていく。

 協会は小さく、決して上手く経営がなされているとは思えない外装の割には中はシンとしていて空気が澄んでおり独特の雰囲気を漂わせている。ここだけ外界と遮断された空間であるかのように。

 そして、そこに一人この世界の神なのであろうかその像の前で膝まづき祈りのポーズを取っている美しい女性がいた。

 (いいのか?何かこう近寄ってはダメな雰囲気がしているのに。)

 ユウキは無宗教ではあるが、シスターが祈りを捧げている姿を見て声をかけてはいけない厳かな雰囲気を感じていた。

 「ねえ?シスター?ニーナ寝てるの?」

 「……。」

 ミーナはシスターの正面に回り込むと顔を覗き込む。

 「…邪魔をしないどくれミーナ。今は祈りの時間さね。久しぶりに顔を出したかと思ったらもう忘れてしまったのかい?」

 声のする方向をみると横の扉から修道服を着た老婆が一人歩いてくる。

 「貴方がユウキさんかね?」

 「はい。貴女は?」

 老婆はニッコリと笑う。

 「わたしの名前はシスター、ダーニャ。あそこで祈りを捧げているのはニーナ。そこのミーナの姉さね。」

 老婆はそういうと部屋に隣の部屋に来るように促す。

 「ささ、こっちに来て座るさね。」

 何もない所で申し訳ないがこれで我慢しておくれというと温かいお茶が出てくる。
 運んできてくれたのはユウキよりも年下の女の子である。

 「大体言いたい事は察しがつくさね。ここは教会だが大人はわたしとニーナのみ。後は皆大きくなったらここを出て行くことになるのさね。たまにニーナのように協会に残る子もいるのだけれどね、大抵は本山へ送られるのさ。」

 「そうですか。ここは孤児院みたいなものですか。」

 「孤児院が何かは知らないけど多分ユウキさんの想像している通り捨てられた家であり、隣の家では子供たちを預かったり、時に勉強なんぞも教えているのさ。まあ、寄付金だけでは教会を維持していくのは大変なのさ。四年前まではよかったんだけれどもね。」

 「やはり四年前ですか。」

 「あいつが帰ってきた翌年からだ!」

 ミーナが怒りテーブルを叩く。

 「これ、ミーナ。そう怒るでないよ。ようやく来たチャンスなのだ。ユウキさんに悪い印象を与えて信用されなければ全てがダメになるよ。いいのかい?」

 「でも…わかった。」

 拗ねたようにミーナはテーブルの下で足をブラブラと左右交互に動かしている。

 「すまないね。本当ならアルテミア様の方が同席にはいいとは思うのだがね…あの子は脳が筋肉で出来ているような子だからね…。」

 「あ、あははっ」

 ユウキは冗談なのか判断がつかなかったが無理に笑顔を作り笑っておく。

 「さて、本題に入るとするかね。ミーナ。ニーナが祈りを終えたらこちらに連れてきておくれ。」

 「ん?」

 「察しが悪いのは昔のままかい。ユウキさんと話があるからここから出てけと言っているのさ。」

 「ぶー…。」

 トコトコとミーナは出て行く。

 「だいぶイメージが違いますね、来るまでのミーナさんとここでのミーナさんは。」

 「あの子はこの教会で一番の甘えっこだったのさ。ここに戻ると自然と子供に戻ってしまうのだろうね、お客人の前だというのに情けないさね。」

 シスターダーニャは懐かしそうに眼を細めると窓の外を見ながら語り始める。

 「さて、では村長から夕刻に来いと言われていると聞く。茶も飲んだようだし手短にすまそうかね。」

 ダーニャは振り返り左手を捲り始める。

 左手には拳ほどの大きさの模様のような痣が浮き出ている。

 「わたしが先々代の先導師、村の女性を統括していた元女性長さね。そして、今の先導師が先程祈りをささげていたニーナさね。」 
 
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