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第13話 尽くすことは間違いじゃない。尽くす相手を間違えた。
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家に帰ると手がかりを探しを始めた。
幸いにも、だらしない彼は身の回りに無頓着だった。
アリシアは、彼の部屋にあるものを一つ一つ丁寧に見て回った。
探せば探すほど、真っ黒だった。
見たことがない狩猟用のグローブにブーツ。
豪華な細工がある猟銃が数丁。
手入れ用の高いグロス。
アリシアが行ったこともない観劇チケットの半券が数枚。
洋服をリメイクして着まわしたり、お昼を抜いて一人で節約をしていたのは、なんだったんだろうなとアリシアは苦笑いをした。
最後に借用書が出てきた時には唖然とした。
軽く年収分の借金。
利子だけでも、そこそこの金額になる。
「もう・・・無理ね」
お金だけが問題なら、何とか立て直せる。
事情があるなら、一緒に頑張れるかもしれないと思っていた。
目を閉じて、彼との未来を考えてみた。
5年後・・・10年後・・・。
二人の幸せな生活が、全く見えなかった。
なにより、ここまでバカにされたのだ。
彼のために頑張ろうという気力が、全くなくなっていた。
「一人で生きていくための目途を立てよう。」
アリシアは証拠をまとめて、リュウの調査結果を待つことにした。
リュウから連絡があり、証拠持参で彼に会いに行った。
「黒ですね。」
リュウが調べた結果と、アリシアが持ってきた資料を照らし合わせる。
借金は結婚式をあげてから、すぐのものだった。
アリシアが仕事で稼いだお金を、借金返済にあてるつもりだったらしい。
結婚の相手として彼を決めたオリスナは、宮廷勤めなら彼女を養えると考え、ローカスは仕事をしている彼女なら自分が多少贅沢しても問題ないと考えていた。
だから、オリスナは彼女に仕事を辞めさせ、ローカスは借金をした。
ローカスにとっては、大きな誤算だった。
”損をするような投資はしない。結婚相手もまた然りだ。”
酔うたびに、周りに話していたそうだ。
結果、借金は彼の見栄を張り通すために使われた。
それも底をつきかけている。
利子の払いが滞り始めて、切羽詰まってアリシアを働かせようとしたのだった。
「もう・・・笑うしかないですね」
少しは、愛してくれていると信じたかった。
少なくとも、大切にされていると思いたかった。
(考えてみれば、家族にすら愛されないのに、赤の他人に愛される価値なんか私にあるわけがないか・・・)
リュウが、そっとハンカチを渡してきた。
アリシアは涙をこぼしていた。
「ありがとう・・・みっともないところみせましたね」
「そんなことないですよ」
リュウに向かって笑おうとして失敗してしまった。
彼は横を向いてアリシアが泣き止むまで見ないようにしてくれた。
「あ・・りがとう」
「先生は・・・」
リュウが彼女を見ないようにしながら、そっとつぶやいた。
「先生は・・・頭が良くて当時からカッコよかったですよ。自分より年下なのに・・・なんか悔しくて・・・それでいて、あんまり笑わないのに笑った時は綺麗でみんな見惚れてました。
今だってつらいのにがんばって・・・全然みっともなくないです」
今までと違い、ぶっきらぼうにぼそぼそと話すリュウの耳が少し赤かった。
アリシアは、本当の人の優しさに初めて触れた気がして心が温かくなった。
「ありがとう。
でも、もう先生じゃないから先生はやめてくださいね」
鼻を赤くしながらアリシアは笑った。
幸いにも、だらしない彼は身の回りに無頓着だった。
アリシアは、彼の部屋にあるものを一つ一つ丁寧に見て回った。
探せば探すほど、真っ黒だった。
見たことがない狩猟用のグローブにブーツ。
豪華な細工がある猟銃が数丁。
手入れ用の高いグロス。
アリシアが行ったこともない観劇チケットの半券が数枚。
洋服をリメイクして着まわしたり、お昼を抜いて一人で節約をしていたのは、なんだったんだろうなとアリシアは苦笑いをした。
最後に借用書が出てきた時には唖然とした。
軽く年収分の借金。
利子だけでも、そこそこの金額になる。
「もう・・・無理ね」
お金だけが問題なら、何とか立て直せる。
事情があるなら、一緒に頑張れるかもしれないと思っていた。
目を閉じて、彼との未来を考えてみた。
5年後・・・10年後・・・。
二人の幸せな生活が、全く見えなかった。
なにより、ここまでバカにされたのだ。
彼のために頑張ろうという気力が、全くなくなっていた。
「一人で生きていくための目途を立てよう。」
アリシアは証拠をまとめて、リュウの調査結果を待つことにした。
リュウから連絡があり、証拠持参で彼に会いに行った。
「黒ですね。」
リュウが調べた結果と、アリシアが持ってきた資料を照らし合わせる。
借金は結婚式をあげてから、すぐのものだった。
アリシアが仕事で稼いだお金を、借金返済にあてるつもりだったらしい。
結婚の相手として彼を決めたオリスナは、宮廷勤めなら彼女を養えると考え、ローカスは仕事をしている彼女なら自分が多少贅沢しても問題ないと考えていた。
だから、オリスナは彼女に仕事を辞めさせ、ローカスは借金をした。
ローカスにとっては、大きな誤算だった。
”損をするような投資はしない。結婚相手もまた然りだ。”
酔うたびに、周りに話していたそうだ。
結果、借金は彼の見栄を張り通すために使われた。
それも底をつきかけている。
利子の払いが滞り始めて、切羽詰まってアリシアを働かせようとしたのだった。
「もう・・・笑うしかないですね」
少しは、愛してくれていると信じたかった。
少なくとも、大切にされていると思いたかった。
(考えてみれば、家族にすら愛されないのに、赤の他人に愛される価値なんか私にあるわけがないか・・・)
リュウが、そっとハンカチを渡してきた。
アリシアは涙をこぼしていた。
「ありがとう・・・みっともないところみせましたね」
「そんなことないですよ」
リュウに向かって笑おうとして失敗してしまった。
彼は横を向いてアリシアが泣き止むまで見ないようにしてくれた。
「あ・・りがとう」
「先生は・・・」
リュウが彼女を見ないようにしながら、そっとつぶやいた。
「先生は・・・頭が良くて当時からカッコよかったですよ。自分より年下なのに・・・なんか悔しくて・・・それでいて、あんまり笑わないのに笑った時は綺麗でみんな見惚れてました。
今だってつらいのにがんばって・・・全然みっともなくないです」
今までと違い、ぶっきらぼうにぼそぼそと話すリュウの耳が少し赤かった。
アリシアは、本当の人の優しさに初めて触れた気がして心が温かくなった。
「ありがとう。
でも、もう先生じゃないから先生はやめてくださいね」
鼻を赤くしながらアリシアは笑った。
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