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第17話 周りに恵まれたおかげでなんとか生きていけそうです。
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アリシアは王都に戻り、小さな部屋を借りた。
貴族ではなく、ただのアリシアとして再出発することにした。
身元は、リュウと騎士団長が保証人となってくれた。
報告とお礼を兼ねて、騎士団長夫妻の家を訪れた。
「今回、私が余計なことを言ったばかりに・・・」
テアは、自分が離婚の原因ではないかと気に病んでいた。
「いいえ、違います。
どちらにしろ、離婚していたと思います。
むしろ、人生のやり直しができるうちに別れることができて・・・テア様には感謝しております。」
「そう言ってもらえるなら、よかったわ」
テアは、複雑な笑みを浮かべる。
ただ、アリシアにも悩んでいることがあった。
ミアの家庭教師は、ローカスの紹介だ。
続けることで、迷惑にはならないだろうか?
「ああ、それなら我が家は問題ない。
ぜひお願いしたい。」
騎士団長のリウスが、笑いながら応える。
「よろしいのですか?」
「もちろん。ミアに恨まれたくないしね。
それに、今のアイツとは距離を置いているしな」
「それは・・もしかして私のせいでしょうか?」
アリシアが心配そうに見つめる。
「違う、違う。
借金の取り立てが職場まできて騒いだらしく、周りから距離をおかれているんだ」
リウスの話だと、ローカスは借金の利子を払えず、職場に押しかけられたらしい。
今では、趣味で集めたものや家財道具のほとんどを売って、返済に充てているようだ。
実家であるクルード家からも冷遇され、自分でなんとかしろと突き放されたらしい。
そうなると狩猟クラブに顔をだすこともできず、どこに行っても肩身が狭い状態の日々を送っているそうだ。
「そんな人だったなんて・・・
アリシア先生が離婚なさって、本当に良かったですわ!」
テアが憤慨する。
「私も、そう思いますわ」
そう言って、アリシアは笑った。
負担にならないならば、他にも何件か家庭教師の口を紹介してくれると二人は言う。
アリシアは、心から感謝をした。
これで、当面の生活費の目途は立った。
精神的に辛い日々だったが、学ぶことと教える経験を与えてくれたことだけは、両親に感謝をしても良いかもしれないとアリシアは思った。
あの家と離れることで・・・いつか関係が改善できたらいい・・・。
そんな日がくるかわからないけど・・・。
新居に戻ると、家の前にリュウが立っていた。
「こんばんは、先生」
「どうしたんですか?いつからここに?」
「来たばかりですよ。それよりこれを」
リュウが小さな花かごを差し出した。
「今日、引っ越しだと聞きました。お祝いにと思いまして。」
「ありがとう。うれしいわ。」
アリシアが笑顔を向けると、リュウは視線をそらし、口元を手で覆った。
花に目を取られていたアリシアは、それに気が付かなかった。
「家にお招きしたいところなのだけれど、お客様用には片付いてなくて・・・」
「いえ、いきなりやってきたのは、こちらですから。
むしろ、なんかすみません」
「ふふ、謝るようなことじゃないですよ」
アリシアは、おかしそうに笑った。
「あの・・・もし、夕飯がまだならお誘いしたいのですけど」
リュウが、遠慮がちに申し出た。
「私、あまりお値段が高いところに行く余裕がなくて・・・」
「大丈夫です。気軽にいけるところですし、お誘いしたのは私です。
私が全部持ちます」
「そんな負担をさせてしまうのは、申し訳ないというか・・・」
アリシアが、少し困った顔を見せる。
「お祝いです。
先生の再出発のお祝いですから。
元教え子からの気持ちだと思ってください。それに・・・」
「?」
「アリシア先生には、昔迷惑かけたことを謝りたいですし・・・」
(迷惑?・・・思い当たることはないけれど)
アリシアは首を傾げた。
「それじゃ、お言葉に甘えますね。それから・・・」
アリシアは腰に手を当てる。
「もう先生じゃないので、先生はなしで。
"様"もいりません」
リュウは少し驚いたように目を見開く。
「はい、じゃあ、アリシアさん」
そう言って二人は笑いあった。
貴族ではなく、ただのアリシアとして再出発することにした。
身元は、リュウと騎士団長が保証人となってくれた。
報告とお礼を兼ねて、騎士団長夫妻の家を訪れた。
「今回、私が余計なことを言ったばかりに・・・」
テアは、自分が離婚の原因ではないかと気に病んでいた。
「いいえ、違います。
どちらにしろ、離婚していたと思います。
むしろ、人生のやり直しができるうちに別れることができて・・・テア様には感謝しております。」
「そう言ってもらえるなら、よかったわ」
テアは、複雑な笑みを浮かべる。
ただ、アリシアにも悩んでいることがあった。
ミアの家庭教師は、ローカスの紹介だ。
続けることで、迷惑にはならないだろうか?
「ああ、それなら我が家は問題ない。
ぜひお願いしたい。」
騎士団長のリウスが、笑いながら応える。
「よろしいのですか?」
「もちろん。ミアに恨まれたくないしね。
それに、今のアイツとは距離を置いているしな」
「それは・・もしかして私のせいでしょうか?」
アリシアが心配そうに見つめる。
「違う、違う。
借金の取り立てが職場まできて騒いだらしく、周りから距離をおかれているんだ」
リウスの話だと、ローカスは借金の利子を払えず、職場に押しかけられたらしい。
今では、趣味で集めたものや家財道具のほとんどを売って、返済に充てているようだ。
実家であるクルード家からも冷遇され、自分でなんとかしろと突き放されたらしい。
そうなると狩猟クラブに顔をだすこともできず、どこに行っても肩身が狭い状態の日々を送っているそうだ。
「そんな人だったなんて・・・
アリシア先生が離婚なさって、本当に良かったですわ!」
テアが憤慨する。
「私も、そう思いますわ」
そう言って、アリシアは笑った。
負担にならないならば、他にも何件か家庭教師の口を紹介してくれると二人は言う。
アリシアは、心から感謝をした。
これで、当面の生活費の目途は立った。
精神的に辛い日々だったが、学ぶことと教える経験を与えてくれたことだけは、両親に感謝をしても良いかもしれないとアリシアは思った。
あの家と離れることで・・・いつか関係が改善できたらいい・・・。
そんな日がくるかわからないけど・・・。
新居に戻ると、家の前にリュウが立っていた。
「こんばんは、先生」
「どうしたんですか?いつからここに?」
「来たばかりですよ。それよりこれを」
リュウが小さな花かごを差し出した。
「今日、引っ越しだと聞きました。お祝いにと思いまして。」
「ありがとう。うれしいわ。」
アリシアが笑顔を向けると、リュウは視線をそらし、口元を手で覆った。
花に目を取られていたアリシアは、それに気が付かなかった。
「家にお招きしたいところなのだけれど、お客様用には片付いてなくて・・・」
「いえ、いきなりやってきたのは、こちらですから。
むしろ、なんかすみません」
「ふふ、謝るようなことじゃないですよ」
アリシアは、おかしそうに笑った。
「あの・・・もし、夕飯がまだならお誘いしたいのですけど」
リュウが、遠慮がちに申し出た。
「私、あまりお値段が高いところに行く余裕がなくて・・・」
「大丈夫です。気軽にいけるところですし、お誘いしたのは私です。
私が全部持ちます」
「そんな負担をさせてしまうのは、申し訳ないというか・・・」
アリシアが、少し困った顔を見せる。
「お祝いです。
先生の再出発のお祝いですから。
元教え子からの気持ちだと思ってください。それに・・・」
「?」
「アリシア先生には、昔迷惑かけたことを謝りたいですし・・・」
(迷惑?・・・思い当たることはないけれど)
アリシアは首を傾げた。
「それじゃ、お言葉に甘えますね。それから・・・」
アリシアは腰に手を当てる。
「もう先生じゃないので、先生はなしで。
"様"もいりません」
リュウは少し驚いたように目を見開く。
「はい、じゃあ、アリシアさん」
そう言って二人は笑いあった。
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