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第四話 天界に居候

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おまけ
ケーキを食べるミミ


ーーーーー
ペラッ
白い世界の端をめくるとそこは天界に繋がっていた。
「ここが、天界か……」
「はい、通常なら普通の人間は既に次の世界に飛んでしまって、ここに立ち入る事すらできないのですが、事情が事情なんだから仕方がないです」

「それにしても驚いたよ。さっきの白い何もない世界に立っていたのに実はペラッとめくる所があって、その先が天界に繋がっていたなんて。 しかも俺が想像していた天界とは全然違う。なんというか、もっと豪華で地面は白い雲が敷き詰められていて、まるでRPGゲームででてくる聖地を期待していたのに! 今まで俺が住んでいた世界と殆ど変わらないじゃないか!」
「あなたはファンタジーのような……『ザ・聖地』を期待していたみたいですが。期待外れで残念でしたね。この世界には車もありますし、ビルもありますし、特別あなたがたが住んでいる世界と変わりがありません」
「うう。思った世界と全然違う……」
「そうですね。でもそういう気持ちにさせないために白い世界を用意しているんです。さあ、そこが将大さんの今日泊まる宿屋です。」
「……なんかビジネスホテルみたいだな」
 何のとりえもない普通の建物、天界だと思って期待していたが、普通の建物だ。

「……」
「ん?どうしたんですかミミさん。」
ミミさんは俺の事をギロリとにらみつけてつぶやく。

「すぅーはぁー。いいですか。天界のお金は持っていないと思うので、今日は私のなけなしのお金で泊まらせてあげるんです。感謝してくださいね」
「そ、そういう事ですか。それはどうもご迷惑をおかけしました」
(はぁ……私のアルバイト1日分が……消えていく今月まだ長いのに……)
「それでは私は女神アレスの所にイセパットの交換依頼をしに行きます。また明日迎えにくるまでにこの宿屋で過ごしててください。最低限の食事もついてるプランを予約しといたので」
「ありがとうございます。食事……天界の食事ってなんだろう、少し楽しみだな」
「あ、誤解してるかもですが一番安いプランなので、夜ご飯はそうめんですよ」
「どうせなら天界のオリジナル料理が良かったけどなぁ。我慢だなぁ」
ミミさんは再び俺の事を睨めつけて「はぁ」と重いため息を一つ。
「はい。それではまた明日……余計なオプションとか使ったらだめですよ」

「は、はい!」
 俺はミミさんの言う通り、ビジネスホテルで一泊を過ごした。
 〇 〇 〇

天界 第5番通り
ミミは怒っていた。
(何こいつ! 私が天界のパン屋さんで汗水垂らして働いて稼いだお金なのに我慢ってなんですか! ぷんぷん! この人を宿屋に泊めてあげるだけでも感謝して欲しいのに! いっそさっきのゴリラ転生させてあげようかしら? ぷんぷん!)
 
 『女神たるもの平等に審査しなさい。主観で次の世界を決めてはいけません』
 
(ああ、アレス様。こんなことがあっても学校で習った内容を忘れていない私はなんて優秀なんでしょう! はやくこの方を次の世界へ送って、わたし一人前の女神になります!)
 
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