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07.可憐なお嬢様とエリザベート様
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ピョートル殿下との昼の話し合いという名の平行線が終わり、お嬢様は食事を簡単に済ませて次の授業の準備をしていた。
「お嬢様、体調など問題ありませんか??」
「大丈夫よ。特に何かあった訳ではないから」
気丈に振舞われているが、普通に考えて婚約破棄を打診されるなどという事態になればいくら淑女の中の淑女、大天使の中の大天使であるエリナエル様でも精神的に疲れているはずだ。
(僕がなんとしてもお嬢様を癒したい。どうやって癒そう、大好きなお菓子とか買ってくるかな……お嬢様はショートブレッドとミルクティーを好まれるから焼こうかな、最高のショートブレッド焼きたいな)
お嬢様の笑顔を守りたくって色々考えていたところ、お嬢様の笑顔を翳らせる人物が現れた。
「あら、エカチェリーナ様ではありませんか」
そんな時に、その人は取り巻きを引き連れて現れた。金髪に碧眼の釣り目をしたその令嬢はとてもいやらしい笑みを浮かべていた。僕はその顔に覚えがあったし、昨日、皇太子が言っていた話を思い出していた。
彼女の名は、エリザベート・バザロフ公爵令嬢。僕らより一学年上の三年生で、この学園を掌握している女王様と影で呼ばれている。
「ごきげんよう、エリザベート公女様」
お嬢様は綺麗なカーテシーをする。その姿を見つめるその目は冷たく残酷で、爬虫類を思わせる。この方の伯母様である側妃様が蛇のような方だと影で言われているが、エリザベート様もその雰囲気がある。
「いいのよ、私達、この国でたったふたりの公女じゃありませんか。そのように改まらないでください」
「ありがとうございます。けれどエリザベート様の方がこの学園では先輩ですので、私は学園の法に従います」
「ふふふ、律儀ですのね。まぁいいですわ。それよりエカチェリーナ様、本日は婚約者様とサロンでお食事をされたのかしら?」
まるであらを探すようにお嬢様を観察する瞳。
(くうう、今お嬢様にこのこと聞くとか、酷い、許されるなら抹殺したい)
そんなことを考えているとお嬢様がアルカイックスマイルを浮かべた。
「ええ。なんてことのない世間話をいたしましたわ。婚約者同士ですのでコミュニケーションは大切ですので」
お嬢様の返答に、爬虫類のような瞳に怒りの色が現れた。何故そんな目をするのだろう。
「まぁ、そうですの。おふたりはあまり仲がよろしくないとお伺いしておりましたが、とても親しいようで素敵ですわね」
全く、うらやましそうでない口ぶりだった。
「ありがとうございます」
「ところで、エカチェリーナ様、今度お茶会を開く予定ですの。そちらに参加してくださらない??たまには公女同士親睦を深めたくて」
そう言って微笑むが、その目は全く笑っていない。断りずらい誘うにお嬢様が心配になる。
「お誘い頂き嬉しいですわ。ところでエリザベート公女様、そちら日程はいつでございますか??」
「そうね、お休みになる明後日の予定よ」
「あら、明後日は王宮でのお茶会がありまして、先に訪問の回答をしておりますので申し訳ありませんが今回は遠慮いたしますわ」
きっぱりと断る。それも公爵家の誘いでも断れる王宮からの誘いで。すばらしい、お嬢様すばらしい。自分の思い通りにいかなかったのもあり、あからさまにエリザベート様は不機嫌な顔になる。
「お嬢様、体調など問題ありませんか??」
「大丈夫よ。特に何かあった訳ではないから」
気丈に振舞われているが、普通に考えて婚約破棄を打診されるなどという事態になればいくら淑女の中の淑女、大天使の中の大天使であるエリナエル様でも精神的に疲れているはずだ。
(僕がなんとしてもお嬢様を癒したい。どうやって癒そう、大好きなお菓子とか買ってくるかな……お嬢様はショートブレッドとミルクティーを好まれるから焼こうかな、最高のショートブレッド焼きたいな)
お嬢様の笑顔を守りたくって色々考えていたところ、お嬢様の笑顔を翳らせる人物が現れた。
「あら、エカチェリーナ様ではありませんか」
そんな時に、その人は取り巻きを引き連れて現れた。金髪に碧眼の釣り目をしたその令嬢はとてもいやらしい笑みを浮かべていた。僕はその顔に覚えがあったし、昨日、皇太子が言っていた話を思い出していた。
彼女の名は、エリザベート・バザロフ公爵令嬢。僕らより一学年上の三年生で、この学園を掌握している女王様と影で呼ばれている。
「ごきげんよう、エリザベート公女様」
お嬢様は綺麗なカーテシーをする。その姿を見つめるその目は冷たく残酷で、爬虫類を思わせる。この方の伯母様である側妃様が蛇のような方だと影で言われているが、エリザベート様もその雰囲気がある。
「いいのよ、私達、この国でたったふたりの公女じゃありませんか。そのように改まらないでください」
「ありがとうございます。けれどエリザベート様の方がこの学園では先輩ですので、私は学園の法に従います」
「ふふふ、律儀ですのね。まぁいいですわ。それよりエカチェリーナ様、本日は婚約者様とサロンでお食事をされたのかしら?」
まるであらを探すようにお嬢様を観察する瞳。
(くうう、今お嬢様にこのこと聞くとか、酷い、許されるなら抹殺したい)
そんなことを考えているとお嬢様がアルカイックスマイルを浮かべた。
「ええ。なんてことのない世間話をいたしましたわ。婚約者同士ですのでコミュニケーションは大切ですので」
お嬢様の返答に、爬虫類のような瞳に怒りの色が現れた。何故そんな目をするのだろう。
「まぁ、そうですの。おふたりはあまり仲がよろしくないとお伺いしておりましたが、とても親しいようで素敵ですわね」
全く、うらやましそうでない口ぶりだった。
「ありがとうございます」
「ところで、エカチェリーナ様、今度お茶会を開く予定ですの。そちらに参加してくださらない??たまには公女同士親睦を深めたくて」
そう言って微笑むが、その目は全く笑っていない。断りずらい誘うにお嬢様が心配になる。
「お誘い頂き嬉しいですわ。ところでエリザベート公女様、そちら日程はいつでございますか??」
「そうね、お休みになる明後日の予定よ」
「あら、明後日は王宮でのお茶会がありまして、先に訪問の回答をしておりますので申し訳ありませんが今回は遠慮いたしますわ」
きっぱりと断る。それも公爵家の誘いでも断れる王宮からの誘いで。すばらしい、お嬢様すばらしい。自分の思い通りにいかなかったのもあり、あからさまにエリザベート様は不機嫌な顔になる。
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