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54.愛とはなんだろう?(レイズ(兄上)視点)
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「しかし、愛しているから、何をしてもいい訳じゃない。愛は表現しながらも、自分の気持ちばかりを押し付けてはいけない」
叔父上が凛とした声で告げた言葉にまるで、自身のルークへの愛も責められているような心地がした。
(ああ、それでも私はルークが……)
好きでたまらない。好きで好きでただ愛おしくて、ずっとずっとただ求めてきた。けれど、果たしてそれは本当に愛なのだろうか?
ずっとただ、ルークを見つめて、ルークも同じようになってほしかった。ただ……。
「だから、ルークを傷つけるなら一刻も早く捕まえる必要があるが、相手は影の中でも指折りの実力者なのだろう?」
叔父上が、影の男に問うと頷いた。
「元々、王族の中でも陛下や王太子殿下をお守りする影は特別なのです。その中でもあの男はずば抜けております。例えば、今回ルーク殿下をなんの手がかりも残さずにさらっております。ガルシア公爵様がいらっしゃらなければルーク殿下の居場所はそもそも割れなかったでしょう」
確かに手がかりとなるものがどこにもなかった。だからこそ最初騒然となったのだと聞いていた。しかも叔父上を搔い潜ってルークを攫ったのだ。注意が必要だろう。
「それに、なにより……「名無しの館」にあの男が立てこもっているなら入るのは困難かもしれません」
「どういう意味だ?」
思ったより鋭い声が出たが、流石に影を務めてきた男はそれでは怯むことはなかった。
「あそこは中にいるものが、自身の意思で招き入れなければ入ることができません。なので……」
「ならば、僕は入れる。問題ない」
何故か叔父上が自身たっぷりに答えた。まぁ叔父上はありとあらゆる常識を覆すから確かに可能かもしれないがそこまで自身たっぷりに言われるとちょっとだけ腹が立つ。
だから、思わず訪ねていた。
「随分自信たっぷりですが、なにか秘策でもあるのですか?」
「秘策ではなく、中にいるものが望めば入れるのなら、ルークは僕に会いたいはずだから間違いなく入れる」
そう自身たっぷりに返されたので、割とイラっとした。確かにルークがいるなら私も入れるはずと信じたいけれど……この間、自身を監禁した男にルークは助けを求めてくれるだろうか。
そう考えた時、先ほどの叔父上の言葉が胸をチクりと刺す。
『しかし、愛しているから、何をしてもいい訳じゃない。愛は表現しながらも、自分の気持ちばかりを押し付けてはいけない』
(私はルークとただ甘い永遠が欲しかった。ずっとそれだけを願ってきた、けれど……)
何も分からなくなれば、私のように王家の呪いにおかされれば永遠にルークは私だけを見てくれる。けれどそれはあくまで「呪い」であり「愛」が原因ではない。
ルークは私を家族としては、愛してくれていた。けれどそれは私の望むモノとは違う……。
「大体のことは分かった、僕は一刻も早く現地へ向かう」
「……私もついて行く」
気付いたら、そう口にしていた。ルークを自分も救い出したいそう思った。けれど……
「皇太子殿下。今回危険を伴います。貴方はこの国唯一の皇太子です。今回のような危険がある場所へは行かせることはできません」
きっぱりとした口調で、ベルダンディ公爵が言い切った。分かっていた。自分の身分的に今や平民であるルークを助けに行くことが許されないことなど。
それでも、ルークを、ルークの危機を救いたいと思ってしまった。もしルークが辛い思いをしていると考えただけで辛かったから。
「ベルダンディ公爵殿、レイズ皇太子は僕が必ずお守りします。なので一緒に行く許可を頂きたい」
私は思わず目を見開く。そう進言してくださったのがほかでもない叔父上だったから。
「しかし……」
「いいんじゃないかな。それに言っても僕はレイズはきかないと思うんだよね」
父上がやれやれとでもいうように言った。まるで心を見透かされたようで父上には色々あるが頭が上がらない。
「行こう、レイズ。そういえば……エドワード、君は来るのかい?」
「……それは……」
「エドワード、君はここで待っていてくれ。大丈夫、なにひとつ問題ない」
エドワードは、騎士と言うわけではない。むしろ文官よりの彼に死の危険が迫る場所へ、ましてや私のワガママで連れて行くわけにはいかない。
(それにエドワードはやっと、マーティンと幸せになれるんだ。その幸せを壊したくない)
心配そうなエドワードに私は微笑む。
「分かりました、ご武運を」
そう沈痛な面持ちで答えた、エドワードにもう一度微笑んでから、私は叔父上と馬車に乗りルークの救出へ向かったのだった。
叔父上が凛とした声で告げた言葉にまるで、自身のルークへの愛も責められているような心地がした。
(ああ、それでも私はルークが……)
好きでたまらない。好きで好きでただ愛おしくて、ずっとずっとただ求めてきた。けれど、果たしてそれは本当に愛なのだろうか?
ずっとただ、ルークを見つめて、ルークも同じようになってほしかった。ただ……。
「だから、ルークを傷つけるなら一刻も早く捕まえる必要があるが、相手は影の中でも指折りの実力者なのだろう?」
叔父上が、影の男に問うと頷いた。
「元々、王族の中でも陛下や王太子殿下をお守りする影は特別なのです。その中でもあの男はずば抜けております。例えば、今回ルーク殿下をなんの手がかりも残さずにさらっております。ガルシア公爵様がいらっしゃらなければルーク殿下の居場所はそもそも割れなかったでしょう」
確かに手がかりとなるものがどこにもなかった。だからこそ最初騒然となったのだと聞いていた。しかも叔父上を搔い潜ってルークを攫ったのだ。注意が必要だろう。
「それに、なにより……「名無しの館」にあの男が立てこもっているなら入るのは困難かもしれません」
「どういう意味だ?」
思ったより鋭い声が出たが、流石に影を務めてきた男はそれでは怯むことはなかった。
「あそこは中にいるものが、自身の意思で招き入れなければ入ることができません。なので……」
「ならば、僕は入れる。問題ない」
何故か叔父上が自身たっぷりに答えた。まぁ叔父上はありとあらゆる常識を覆すから確かに可能かもしれないがそこまで自身たっぷりに言われるとちょっとだけ腹が立つ。
だから、思わず訪ねていた。
「随分自信たっぷりですが、なにか秘策でもあるのですか?」
「秘策ではなく、中にいるものが望めば入れるのなら、ルークは僕に会いたいはずだから間違いなく入れる」
そう自身たっぷりに返されたので、割とイラっとした。確かにルークがいるなら私も入れるはずと信じたいけれど……この間、自身を監禁した男にルークは助けを求めてくれるだろうか。
そう考えた時、先ほどの叔父上の言葉が胸をチクりと刺す。
『しかし、愛しているから、何をしてもいい訳じゃない。愛は表現しながらも、自分の気持ちばかりを押し付けてはいけない』
(私はルークとただ甘い永遠が欲しかった。ずっとそれだけを願ってきた、けれど……)
何も分からなくなれば、私のように王家の呪いにおかされれば永遠にルークは私だけを見てくれる。けれどそれはあくまで「呪い」であり「愛」が原因ではない。
ルークは私を家族としては、愛してくれていた。けれどそれは私の望むモノとは違う……。
「大体のことは分かった、僕は一刻も早く現地へ向かう」
「……私もついて行く」
気付いたら、そう口にしていた。ルークを自分も救い出したいそう思った。けれど……
「皇太子殿下。今回危険を伴います。貴方はこの国唯一の皇太子です。今回のような危険がある場所へは行かせることはできません」
きっぱりとした口調で、ベルダンディ公爵が言い切った。分かっていた。自分の身分的に今や平民であるルークを助けに行くことが許されないことなど。
それでも、ルークを、ルークの危機を救いたいと思ってしまった。もしルークが辛い思いをしていると考えただけで辛かったから。
「ベルダンディ公爵殿、レイズ皇太子は僕が必ずお守りします。なので一緒に行く許可を頂きたい」
私は思わず目を見開く。そう進言してくださったのがほかでもない叔父上だったから。
「しかし……」
「いいんじゃないかな。それに言っても僕はレイズはきかないと思うんだよね」
父上がやれやれとでもいうように言った。まるで心を見透かされたようで父上には色々あるが頭が上がらない。
「行こう、レイズ。そういえば……エドワード、君は来るのかい?」
「……それは……」
「エドワード、君はここで待っていてくれ。大丈夫、なにひとつ問題ない」
エドワードは、騎士と言うわけではない。むしろ文官よりの彼に死の危険が迫る場所へ、ましてや私のワガママで連れて行くわけにはいかない。
(それにエドワードはやっと、マーティンと幸せになれるんだ。その幸せを壊したくない)
心配そうなエドワードに私は微笑む。
「分かりました、ご武運を」
そう沈痛な面持ちで答えた、エドワードにもう一度微笑んでから、私は叔父上と馬車に乗りルークの救出へ向かったのだった。
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