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第三章:恋獄の国と悲しいおとぎ話
51.前世の物語と不幸令嬢(ルーファス視点)21
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あの日、レミリアが全てを投げ出して死のうとした日。
月の力が、ブルームーンの日で強かったことと、レミリアが僕を呼んでくれたことでやっと月の国に彼女を保護できると安心した日……あいつがそれを阻んだ。
「させない!!」
そう言った男の緑色の瞳を見た瞬間、長らく忘れていた吐き気がした。執着心に満ちたモスグリーンのその瞳を僕は悪い意味で忘れたことがなかった。
「……またお前が邪魔をするのか」
気付けが自身から怨嗟のこもった声が出ていた。この男は、レミリアの婚約者の「太陽狂い」の王子は、間違いなくトリスの生まれ変わりだった。その嫌な執念でレミリアの肉体だけ海の国に残されることになってしまった。
ヨミから、海の国の王族に呪いをかけた話は聞いていた。問題はその呪いがなんらかの要素で湾曲して「太陽狂い」という時々海の国の王族が、太陽の国の王族に執着する病を発病するというものになっているとのことだった。
それはまんま、あの頃、海の国の人間が月の国の王族に抱いていた症状が依り代を変えただけのものだった。
この件について、太陽の国に伝えたところ、ある条件と共に和解している。
ある条件とは、あの当時、薄れかけていた太陽の王族への祝福の再付与。それにより太陽の王と王になる者は20代の外観のまま死ぬまでほぼ重い病気にかからないということが完全になった。
そして、太陽の王族がそれを問題として捉えなかったのは、太陽の王族は朗らかな人格を持っていて例え海の国の姫君が王族に恋をして嫁いだとしても平等にハーレムで愛するだけだった。それを厭うこともない。
そして「太陽の娘」が生まれた場合が一番の問題だったが、それについてはほぼ生まれないことで今まではあまり問題視されることはなかったようだ。
ただ、レミーナの話を聞いた当時の太陽の王は僕とレミーナの悲恋を大変憐れみ、次に「太陽の娘」としてレミーナが生まれ変わることがあるならば、必ず嫁がせようと約束してくれた。
しかし、時が過ぎておとぎ話は変質し、いくつか事実無根な内容になっている。古の真実を知るものなどもうほぼいないのだから仕方ないけれど。
「大丈夫だよ。ルーを嫌いになる要素なんてないから」
そう言って微笑んだ、レミリアに僕はいつ真実が話せるようになるのだろうか?今はまだもう少しだけこの幸せを味わっていたい。
それが永遠に続くものではないことは誰より分かっていた。だけれど今はその優しさや愛に溺れたくって、僕は束の間の幸せに包まれていた。
*****************
長くなった前世編はここで終了です。皆さまありがとうございます。次回から新章となります。引き続き宜しくお願いいたします。
月の力が、ブルームーンの日で強かったことと、レミリアが僕を呼んでくれたことでやっと月の国に彼女を保護できると安心した日……あいつがそれを阻んだ。
「させない!!」
そう言った男の緑色の瞳を見た瞬間、長らく忘れていた吐き気がした。執着心に満ちたモスグリーンのその瞳を僕は悪い意味で忘れたことがなかった。
「……またお前が邪魔をするのか」
気付けが自身から怨嗟のこもった声が出ていた。この男は、レミリアの婚約者の「太陽狂い」の王子は、間違いなくトリスの生まれ変わりだった。その嫌な執念でレミリアの肉体だけ海の国に残されることになってしまった。
ヨミから、海の国の王族に呪いをかけた話は聞いていた。問題はその呪いがなんらかの要素で湾曲して「太陽狂い」という時々海の国の王族が、太陽の国の王族に執着する病を発病するというものになっているとのことだった。
それはまんま、あの頃、海の国の人間が月の国の王族に抱いていた症状が依り代を変えただけのものだった。
この件について、太陽の国に伝えたところ、ある条件と共に和解している。
ある条件とは、あの当時、薄れかけていた太陽の王族への祝福の再付与。それにより太陽の王と王になる者は20代の外観のまま死ぬまでほぼ重い病気にかからないということが完全になった。
そして、太陽の王族がそれを問題として捉えなかったのは、太陽の王族は朗らかな人格を持っていて例え海の国の姫君が王族に恋をして嫁いだとしても平等にハーレムで愛するだけだった。それを厭うこともない。
そして「太陽の娘」が生まれた場合が一番の問題だったが、それについてはほぼ生まれないことで今まではあまり問題視されることはなかったようだ。
ただ、レミーナの話を聞いた当時の太陽の王は僕とレミーナの悲恋を大変憐れみ、次に「太陽の娘」としてレミーナが生まれ変わることがあるならば、必ず嫁がせようと約束してくれた。
しかし、時が過ぎておとぎ話は変質し、いくつか事実無根な内容になっている。古の真実を知るものなどもうほぼいないのだから仕方ないけれど。
「大丈夫だよ。ルーを嫌いになる要素なんてないから」
そう言って微笑んだ、レミリアに僕はいつ真実が話せるようになるのだろうか?今はまだもう少しだけこの幸せを味わっていたい。
それが永遠に続くものではないことは誰より分かっていた。だけれど今はその優しさや愛に溺れたくって、僕は束の間の幸せに包まれていた。
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長くなった前世編はここで終了です。皆さまありがとうございます。次回から新章となります。引き続き宜しくお願いいたします。
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