世にも不幸なレミリア令嬢は失踪しました

ひよこ麺

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第四章:太陽の国と皇太子

52.太陽の国と不幸令嬢

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「何故、こんなに酷いことが平気で行われていたのだ」

黒い艶やかな髪に黄金のような瞳をした20代後半のように見える、精悍な顔立ちの男は嘆いた。彼の名前は、ルイ・アルカトル・サンソレイユ。

サンソレイユ帝国の現皇帝であり見た目とは違い50代であり、長らく国を支えてきた威厳ある皇帝だ。

彼は、青白い顔をして眠る、孫娘であるレミリアを前に酷く肩を落としていた。

ルイにとって、レミリアは公の秘密に当たる恋人であった、今は亡きソールとの間に生まれた大切な娘ルイーズの子という少し複雑だが大切な存在だ。

本来、サンソレイユ帝国はハーレムを容認する国であり、沢山の妻を王族、貴族が持つことに対して抵抗のない文化を持つ。ソールが通常の貴族であればルイは彼女を妻のひとりとして迎え、他の家族同様にルイーズもレミリアも太陽の国の家族としてそれはそれは大切にすることができただろう。

しかし、ソールだけはルイがどんなに愛しても結婚できない相手だった。

サンソレイユ帝国は他の2国と違い、皇族だけが明確な力を持つ国ではない。皇族は確かに大きな力を持つがそれを真っ向から諫めることができる司法の権利に近い力を持つ一族、デメテール公爵家が存在することでバランスを保っていた。

デメテール公爵家は太陽の国において特異な立場の一族であった。その一族はもっとも皇族に近くありながら決して皇族と交わることがあってはいけない一族だったのだ。

導きの一族との呼ばれるこの特異な一族の娘であるソールとサンソレイユ帝国の王太子であったルイはどんなに愛し合っても結ばれることが許されない間柄だった。

それについてはお互いに分かっていた。だからお互いに公の場では決してその距離を崩すことはなかった。それはソールが女公爵、ルイが皇帝になっても同じだった。

しかし、ルイにとってソールは特別な女性であった。ハーレムを容認する太陽の国において、夫は妻を平等に太陽の光のように愛するのが当たり前であるという価値観を持っている。

だから、妻として娶った時点で、全ての妻は優劣なく全て平等に愛されるし、夫はそれが出来ないのなら妻を娶ること自体を行うべきではないと考えらえている。実際ルイも現在ハーレムに居る妻全てを平等に愛し続けている。しかし、ソールはその枠外に居た。だからこそルイにとって彼女への愛も他とは全く異なるものだった。

自由で美しい独立した女性。夫など必要としない自立したそれでいてどうしようもない知性と魅力を持った人。それがルイの中に今も生き生きと浮かぶソールその人だ。

未だに目を閉じた時、彼女の凛とした横顔が蘇ることがある。その横顔の美しさ気高さの面影を毒の影響で眠り続けていると言われて、海の国から連れてこられた孫娘は持っていた。

その孫娘は、とても幸せに海の国で暮らしていると報告を受けていた。だからそもそも血縁を公にできない者としては干渉を避けていたのだ。

しかし、今回の件もあり、詳細を調査した結果。彼女はずっと家族からも世間からも孤立した孤独な状況で、ついには毒を煽り自殺未遂を起こすほど追い詰められていたと知った。

そのことで、腸が煮えくり返るほど深く海の国への不信感を募らせた。

今もその想いは変らない。だから……

「皇帝陛下、海の国の者がレミリア皇女孫殿下を見舞いたいと訪れているそうですが……」

「追い払え。余の孫娘をこのような姿とした国の者にレミリアを会わせるつもりはない!!」

抑えきれない感情のまま、ルイは命令を下した。
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