59 / 143
第四章:太陽の国と皇太子
52.太陽の国と不幸令嬢
しおりを挟む
「何故、こんなに酷いことが平気で行われていたのだ」
黒い艶やかな髪に黄金のような瞳をした20代後半のように見える、精悍な顔立ちの男は嘆いた。彼の名前は、ルイ・アルカトル・サンソレイユ。
サンソレイユ帝国の現皇帝であり見た目とは違い50代であり、長らく国を支えてきた威厳ある皇帝だ。
彼は、青白い顔をして眠る、孫娘であるレミリアを前に酷く肩を落としていた。
ルイにとって、レミリアは公の秘密に当たる恋人であった、今は亡きソールとの間に生まれた大切な娘ルイーズの子という少し複雑だが大切な存在だ。
本来、サンソレイユ帝国はハーレムを容認する国であり、沢山の妻を王族、貴族が持つことに対して抵抗のない文化を持つ。ソールが通常の貴族であればルイは彼女を妻のひとりとして迎え、他の家族同様にルイーズもレミリアも太陽の国の家族としてそれはそれは大切にすることができただろう。
しかし、ソールだけはルイがどんなに愛しても結婚できない相手だった。
サンソレイユ帝国は他の2国と違い、皇族だけが明確な力を持つ国ではない。皇族は確かに大きな力を持つがそれを真っ向から諫めることができる司法の権利に近い力を持つ一族、デメテール公爵家が存在することでバランスを保っていた。
デメテール公爵家は太陽の国において特異な立場の一族であった。その一族はもっとも皇族に近くありながら決して皇族と交わることがあってはいけない一族だったのだ。
導きの一族との呼ばれるこの特異な一族の娘であるソールとサンソレイユ帝国の王太子であったルイはどんなに愛し合っても結ばれることが許されない間柄だった。
それについてはお互いに分かっていた。だからお互いに公の場では決してその距離を崩すことはなかった。それはソールが女公爵、ルイが皇帝になっても同じだった。
しかし、ルイにとってソールは特別な女性であった。ハーレムを容認する太陽の国において、夫は妻を平等に太陽の光のように愛するのが当たり前であるという価値観を持っている。
だから、妻として娶った時点で、全ての妻は優劣なく全て平等に愛されるし、夫はそれが出来ないのなら妻を娶ること自体を行うべきではないと考えらえている。実際ルイも現在ハーレムに居る妻全てを平等に愛し続けている。しかし、ソールはその枠外に居た。だからこそルイにとって彼女への愛も他とは全く異なるものだった。
自由で美しい独立した女性。夫など必要としない自立したそれでいてどうしようもない知性と魅力を持った人。それがルイの中に今も生き生きと浮かぶソールその人だ。
未だに目を閉じた時、彼女の凛とした横顔が蘇ることがある。その横顔の美しさ気高さの面影を毒の影響で眠り続けていると言われて、海の国から連れてこられた孫娘は持っていた。
その孫娘は、とても幸せに海の国で暮らしていると報告を受けていた。だからそもそも血縁を公にできない者としては干渉を避けていたのだ。
しかし、今回の件もあり、詳細を調査した結果。彼女はずっと家族からも世間からも孤立した孤独な状況で、ついには毒を煽り自殺未遂を起こすほど追い詰められていたと知った。
そのことで、腸が煮えくり返るほど深く海の国への不信感を募らせた。
今もその想いは変らない。だから……
「皇帝陛下、海の国の者がレミリア皇女孫殿下を見舞いたいと訪れているそうですが……」
「追い払え。余の孫娘をこのような姿とした国の者にレミリアを会わせるつもりはない!!」
抑えきれない感情のまま、ルイは命令を下した。
黒い艶やかな髪に黄金のような瞳をした20代後半のように見える、精悍な顔立ちの男は嘆いた。彼の名前は、ルイ・アルカトル・サンソレイユ。
サンソレイユ帝国の現皇帝であり見た目とは違い50代であり、長らく国を支えてきた威厳ある皇帝だ。
彼は、青白い顔をして眠る、孫娘であるレミリアを前に酷く肩を落としていた。
ルイにとって、レミリアは公の秘密に当たる恋人であった、今は亡きソールとの間に生まれた大切な娘ルイーズの子という少し複雑だが大切な存在だ。
本来、サンソレイユ帝国はハーレムを容認する国であり、沢山の妻を王族、貴族が持つことに対して抵抗のない文化を持つ。ソールが通常の貴族であればルイは彼女を妻のひとりとして迎え、他の家族同様にルイーズもレミリアも太陽の国の家族としてそれはそれは大切にすることができただろう。
しかし、ソールだけはルイがどんなに愛しても結婚できない相手だった。
サンソレイユ帝国は他の2国と違い、皇族だけが明確な力を持つ国ではない。皇族は確かに大きな力を持つがそれを真っ向から諫めることができる司法の権利に近い力を持つ一族、デメテール公爵家が存在することでバランスを保っていた。
デメテール公爵家は太陽の国において特異な立場の一族であった。その一族はもっとも皇族に近くありながら決して皇族と交わることがあってはいけない一族だったのだ。
導きの一族との呼ばれるこの特異な一族の娘であるソールとサンソレイユ帝国の王太子であったルイはどんなに愛し合っても結ばれることが許されない間柄だった。
それについてはお互いに分かっていた。だからお互いに公の場では決してその距離を崩すことはなかった。それはソールが女公爵、ルイが皇帝になっても同じだった。
しかし、ルイにとってソールは特別な女性であった。ハーレムを容認する太陽の国において、夫は妻を平等に太陽の光のように愛するのが当たり前であるという価値観を持っている。
だから、妻として娶った時点で、全ての妻は優劣なく全て平等に愛されるし、夫はそれが出来ないのなら妻を娶ること自体を行うべきではないと考えらえている。実際ルイも現在ハーレムに居る妻全てを平等に愛し続けている。しかし、ソールはその枠外に居た。だからこそルイにとって彼女への愛も他とは全く異なるものだった。
自由で美しい独立した女性。夫など必要としない自立したそれでいてどうしようもない知性と魅力を持った人。それがルイの中に今も生き生きと浮かぶソールその人だ。
未だに目を閉じた時、彼女の凛とした横顔が蘇ることがある。その横顔の美しさ気高さの面影を毒の影響で眠り続けていると言われて、海の国から連れてこられた孫娘は持っていた。
その孫娘は、とても幸せに海の国で暮らしていると報告を受けていた。だからそもそも血縁を公にできない者としては干渉を避けていたのだ。
しかし、今回の件もあり、詳細を調査した結果。彼女はずっと家族からも世間からも孤立した孤独な状況で、ついには毒を煽り自殺未遂を起こすほど追い詰められていたと知った。
そのことで、腸が煮えくり返るほど深く海の国への不信感を募らせた。
今もその想いは変らない。だから……
「皇帝陛下、海の国の者がレミリア皇女孫殿下を見舞いたいと訪れているそうですが……」
「追い払え。余の孫娘をこのような姿とした国の者にレミリアを会わせるつもりはない!!」
抑えきれない感情のまま、ルイは命令を下した。
1
あなたにおすすめの小説
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
ふしあわせに、殿下
古酒らずり
恋愛
帝国に祖国を滅ぼされた王女アウローラには、恋人以上で夫未満の不埒な相手がいる。
最強騎士にして魔性の美丈夫である、帝国皇子ヴァルフリード。
どう考えても女泣かせの男は、なぜかアウローラを強く正妻に迎えたがっている。だが、将来の皇太子妃なんて迷惑である。
そんな折、帝国から奇妙な挑戦状が届く。
──推理ゲームに勝てば、滅ぼされた祖国が返還される。
ついでに、ヴァルフリード皇子を皇太子の座から引きずり下ろせるらしい。皇太子妃をやめるなら、まず皇太子からやめさせる、ということだろうか?
ならば話は簡単。
くたばれ皇子。ゲームに勝利いたしましょう。
※カクヨムにも掲載しています。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
大好きだけどお別れしましょう〈完結〉
ヘルベ
恋愛
釣った魚に餌をやらない人が居るけど、あたしの恋人はまさにそれ。
いや、相手からしてみたら釣り糸を垂らしてもいないのに食らいついて来た魚なのだから、対して思い入れもないのも当たり前なのか。
騎士カイルのファンの一人でしかなかったあたしが、ライバルを蹴散らし晴れて恋人になれたものの、会話は盛り上がらず、記念日を祝ってくれる気配もない。デートもあたしから誘わないとできない。しかも三回に一回は断られる始末。
全部が全部こっち主導の一方通行の関係。
恋人の甘い雰囲気どころか友達以下のような関係に疲れたあたしは、思わず「別れましょう」と口に出してしまい……。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる