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第五章:真実の断片と
73.太陽狂いと不幸令嬢03
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(どういうこと?全く意味がわからない)
レミリアは混乱した、目の前で起こっていることがよくわからなかったから。そして、混乱したままフラフラと歩きだした。これ以上、話を聞いていたくないと思ったのだ。
(例えそれが逃げることであっても私は……)
フラフラと街をあるいた、行く当てなんて初めからない。それなのに何故か王城へ歩を進めてしまったのはきっとレミリアが長い間いた場所だったからかもしれない。
そして、そこに行くまでにレミリアは気づいた。どうやら自分の姿は誰にも見えていないということに。理由は分からないが自分は幽霊のようなものになってしまっているという事実に。
(ならば疑問を解決していこう……全て……)
王城の中に入ると、そこはとても静かだった。まるで水を打ったようなその静寂に少し胸騒ぎがした。そうして、その中をバタバタと走ってきた兵士が何やら話していた。
「クリストファー殿下はまた、ムーンティア王国を攻撃しようとしている、何故そんな恐ろしいことを」
「レミリア公爵令嬢がお眠りになられてから殿下はご乱心だ。仕方ない。あんなに愛していた婚約者を自殺に追い込んだんだから」
(クリストファー殿下が私を愛していたですって?)
信じられない言葉だった。何故ならレミリアはあの日彼に捨てられたと思って自殺を図ったのだから。
全ての訳がわからない。公爵も、クリストファーもレミリアを愛していたという。けれど全くレミリアはそれを感じたことがない。
確かにクリストファーはプレゼントを沢山くれたが、話が弾んだこともなくいつも無口だった。
(なんだかバカみたい、どうして今更こんなことがわかったって……)
全て手遅れだ。そう考えた時、その声が聞こえた。
「レミリア公爵令嬢、何故ここに?」
レミリアが振り返る。誰にも見えない自分を確かに視た人物がいた。振り返ったそこに居たのは……
「クレメンテ王太子殿下……」
クレメンテはその淀んだと称される緑の眠たげな瞳を珍しく見開いていた。そしてしばらく黙っていたが、レミリアに近付いて小さく囁いた。
「もし、お時間があれば話しがしたい」
「構いません」
レミリアは短く答えて、クレメンテの後についていった。何故からがレミリアを見ることができたのか分からない。ただひとつ言えることは彼からは敵意は感じはしなかったということだけだ。
クレメンテとレミリアの接点は将来義理の兄妹になるという以外はほとんどなかった。ただ、レミリアはクレメンテのことを決して皆が言うような怠惰な王太子とは思っていなかった。
それは公爵家の仕事をしていたから気付けたのだが、クレメンテは決して大きなミス、致命的なものは犯さなかった。小さなミスは犯すがそれも他者がカバーできるものばかりだった。それはつまりわざとそうしているのがレミリアだけは分かった。
誰もが彼を、凡庸と称するが、レミリアはそれが彼の被っている仮面だと気付いていた。そして、彼だけはレミリアと同じ匂いがしたのだ。誰からも愛されずに孤独に生きている者。けれどクレメンテとレミリアにはひとつ大きな違いがあった。
レミリアはただ愛されたいと願うだけだったが、クレメンテは愛されることはとうに諦めていた。代わりに全てを真綿で包んでいくようなそんな湿った感情を王家に、いや王国に抱いていると感じていた。
レミリアは混乱した、目の前で起こっていることがよくわからなかったから。そして、混乱したままフラフラと歩きだした。これ以上、話を聞いていたくないと思ったのだ。
(例えそれが逃げることであっても私は……)
フラフラと街をあるいた、行く当てなんて初めからない。それなのに何故か王城へ歩を進めてしまったのはきっとレミリアが長い間いた場所だったからかもしれない。
そして、そこに行くまでにレミリアは気づいた。どうやら自分の姿は誰にも見えていないということに。理由は分からないが自分は幽霊のようなものになってしまっているという事実に。
(ならば疑問を解決していこう……全て……)
王城の中に入ると、そこはとても静かだった。まるで水を打ったようなその静寂に少し胸騒ぎがした。そうして、その中をバタバタと走ってきた兵士が何やら話していた。
「クリストファー殿下はまた、ムーンティア王国を攻撃しようとしている、何故そんな恐ろしいことを」
「レミリア公爵令嬢がお眠りになられてから殿下はご乱心だ。仕方ない。あんなに愛していた婚約者を自殺に追い込んだんだから」
(クリストファー殿下が私を愛していたですって?)
信じられない言葉だった。何故ならレミリアはあの日彼に捨てられたと思って自殺を図ったのだから。
全ての訳がわからない。公爵も、クリストファーもレミリアを愛していたという。けれど全くレミリアはそれを感じたことがない。
確かにクリストファーはプレゼントを沢山くれたが、話が弾んだこともなくいつも無口だった。
(なんだかバカみたい、どうして今更こんなことがわかったって……)
全て手遅れだ。そう考えた時、その声が聞こえた。
「レミリア公爵令嬢、何故ここに?」
レミリアが振り返る。誰にも見えない自分を確かに視た人物がいた。振り返ったそこに居たのは……
「クレメンテ王太子殿下……」
クレメンテはその淀んだと称される緑の眠たげな瞳を珍しく見開いていた。そしてしばらく黙っていたが、レミリアに近付いて小さく囁いた。
「もし、お時間があれば話しがしたい」
「構いません」
レミリアは短く答えて、クレメンテの後についていった。何故からがレミリアを見ることができたのか分からない。ただひとつ言えることは彼からは敵意は感じはしなかったということだけだ。
クレメンテとレミリアの接点は将来義理の兄妹になるという以外はほとんどなかった。ただ、レミリアはクレメンテのことを決して皆が言うような怠惰な王太子とは思っていなかった。
それは公爵家の仕事をしていたから気付けたのだが、クレメンテは決して大きなミス、致命的なものは犯さなかった。小さなミスは犯すがそれも他者がカバーできるものばかりだった。それはつまりわざとそうしているのがレミリアだけは分かった。
誰もが彼を、凡庸と称するが、レミリアはそれが彼の被っている仮面だと気付いていた。そして、彼だけはレミリアと同じ匂いがしたのだ。誰からも愛されずに孤独に生きている者。けれどクレメンテとレミリアにはひとつ大きな違いがあった。
レミリアはただ愛されたいと願うだけだったが、クレメンテは愛されることはとうに諦めていた。代わりに全てを真綿で包んでいくようなそんな湿った感情を王家に、いや王国に抱いていると感じていた。
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