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第五章:真実の断片と
74.海の王太子と不幸令嬢
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「レミリア公爵令嬢、君は今、精神体だけで歩いているという危うい状態だ」
そう、執務室へレミリアを連れて行った、クレメンテが口火をきった。全てが雑然と並ぶその部屋はまるで何かを隠しているような空気も纏っていた。
「精神体……私の体は……」
「今はサンソレイユ帝国に肉体があると聞いている。ただ、今行くのは得策ではないだろうし、もし行っても誰も気付かないだろう」
とても冷静な答えだった。明らかに異常な事態でも彼は決して慌てている様子がない。
「あの、驚かれないのですね、私は今幽霊のようなものだということなのに……」
その言葉に、ずっとぼんやりした顔をしていた、クレメンテの顔が明らかに綻んだのが分かる。そんな柔らかな顔をレミリアははじめてみた。
「私には昔から、そういうものが見えていた。元々は母が父に殺された時から見えるようになったのだけれど……。父に縋りついて泣き喚いている半透明の母を見た時、その母が誰にも見えないのを知った時、私は死者を見ることが出来ることに気付いた」
「……それは、お辛かったのではないですか?」
レミリアは、はじめてクレメンテという人を理解した気がした。どこかまるでこの世界と一線引いているような眼差し、やる気のない怠惰なと評される眠たげな瞳は、きっとここではない世界を見ていたのだろうと。
「いえ。そうあった時間のが長いので。だから、必然的に私には多くの怨嗟の声が聞こえ続けてしまっている……」
「それは……」
「レミリア公爵令嬢、クリストファーは危険です。弟には……ずっと質の悪い霊、アレは前世の因縁のようなものが絡みついている」
前世の因縁。その意味がレミリアにはよくわからない。ただひとつ言えるのはそれはもしかしたらルーファスの愛するレミーナと関係があるかもしれないと勝手に思った。
「前世の因縁とは……私にもそれはあるのですか??」
「……レミリア公爵令嬢には、貴方を心配している銀色の髪の青年が見える。そして……」
クレメンテが何か言いかけた時、突然執務室の扉が開いた。そこにはこの国の国王が立っていた。その瞬間、レミリアはそれを見た。ほんの一瞬だがクレメンテの目に怒りが浮かぶのがわかった。
「クレメンテ!!クリストファーがレミリア嬢の体を略奪して消えたと報告が上がった」
「そうですか、サンソレイユ帝国側はなんと??」
とても冷静に、怒りで感情的になる王に対してもひるまずにクレメンテが言葉を返す。
「それは……」
「証拠がないなら、「知らないと」一旦は通せば良い。その間に対策を考えれば良いでしょう」
そう、執務室へレミリアを連れて行った、クレメンテが口火をきった。全てが雑然と並ぶその部屋はまるで何かを隠しているような空気も纏っていた。
「精神体……私の体は……」
「今はサンソレイユ帝国に肉体があると聞いている。ただ、今行くのは得策ではないだろうし、もし行っても誰も気付かないだろう」
とても冷静な答えだった。明らかに異常な事態でも彼は決して慌てている様子がない。
「あの、驚かれないのですね、私は今幽霊のようなものだということなのに……」
その言葉に、ずっとぼんやりした顔をしていた、クレメンテの顔が明らかに綻んだのが分かる。そんな柔らかな顔をレミリアははじめてみた。
「私には昔から、そういうものが見えていた。元々は母が父に殺された時から見えるようになったのだけれど……。父に縋りついて泣き喚いている半透明の母を見た時、その母が誰にも見えないのを知った時、私は死者を見ることが出来ることに気付いた」
「……それは、お辛かったのではないですか?」
レミリアは、はじめてクレメンテという人を理解した気がした。どこかまるでこの世界と一線引いているような眼差し、やる気のない怠惰なと評される眠たげな瞳は、きっとここではない世界を見ていたのだろうと。
「いえ。そうあった時間のが長いので。だから、必然的に私には多くの怨嗟の声が聞こえ続けてしまっている……」
「それは……」
「レミリア公爵令嬢、クリストファーは危険です。弟には……ずっと質の悪い霊、アレは前世の因縁のようなものが絡みついている」
前世の因縁。その意味がレミリアにはよくわからない。ただひとつ言えるのはそれはもしかしたらルーファスの愛するレミーナと関係があるかもしれないと勝手に思った。
「前世の因縁とは……私にもそれはあるのですか??」
「……レミリア公爵令嬢には、貴方を心配している銀色の髪の青年が見える。そして……」
クレメンテが何か言いかけた時、突然執務室の扉が開いた。そこにはこの国の国王が立っていた。その瞬間、レミリアはそれを見た。ほんの一瞬だがクレメンテの目に怒りが浮かぶのがわかった。
「クレメンテ!!クリストファーがレミリア嬢の体を略奪して消えたと報告が上がった」
「そうですか、サンソレイユ帝国側はなんと??」
とても冷静に、怒りで感情的になる王に対してもひるまずにクレメンテが言葉を返す。
「それは……」
「証拠がないなら、「知らないと」一旦は通せば良い。その間に対策を考えれば良いでしょう」
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