83 / 143
第五章:真実の断片と
75.海の王太子と不幸令嬢02
しおりを挟む
「もとはと言えば、貴様がクリストファーを……」
「そのお話は以前いたしました。書類に不備はなかった、ただそれだけです」
レミリアはふたりのやりとりをはじめてみた。そして気づいた。かの王は、この王太子への扱いがとても酷いことに。
そして、それは王太子も知っていて、気にする素振りさえみせなかった。
(クリストファー殿下にはもう少し優しい表情をする人なのに……クレメンテ殿下にはとても冷たいのね、まるで以前感じていた、私と妹の関係みたいね)
けれど、先ほどの父の独白からそれがどうやら誤りであることは知った。それでもそれすらも妄想ではないかと心配になるのだけれど。
そして、レミリアは思った、かの王は何故、わざわざ王太子の元へ来たのだろう。今している会話には何の意味もないもののような気がしたからだ。
「折角、王太子にしてやったというのに、何故お前はこうもやる気がなくいい加減なのだ」
「父上、私は所詮、身分の低い女の息子なのです。難しことはあまり得意ではないただそれだけです」
そう言った、クレメンテを見た時、レミリアは無意識に泣いていた。彼のその言葉回しに自分と似たものを感じていたから。
クレメンテはわざと愚者を演じる。そのために皮肉交じりに自身を下げている。それはレミリアが長年行ってきたことと一緒だった。生き残るためにバカを演じている。ずっと分かってはいた。けれど間違いないと確信したのは彼の沼のように眠たい瞳と称される、深緑の目にどうしようもない怒りを見たからだ。
「ふん。まぁいい。それより兵士の準備はおこなっているのだろうな?」
「もちろん、滞りなく」
(戦……うそ、どこの国と戦うつもりなの??)
故郷が戦火によって消えるなど望んでいない。けれど今王と王太子が戦争の話をしている。その現実に心が乱れる、その瞬間自身が希薄になるような気がした。
(どうして……これは……)
「レミー、やっと見つけた。だめだこのままでは消えてしまう。帰ろう」
あたたかい手が、レミリアに触れた。振り返らなくても分かる。それはルーファスだと。だからこそその手を振り払う、たとえ消えてもレミリアはルーファスの元へ戻りたくはなかった。
「いや!!ルーファス、私は……」
そう叫んだ時、頭が急に痛くなる、そのまま、まるで耳鳴りがするような音がしてレミリアは倒れた。
倒れる瞬間確かに、国王が、
「ムーンティア王国を滅ぼさなければいけない」
と言ったのが聞こえたが、それを確かめる前に意識が完全に暗転していた。
「そのお話は以前いたしました。書類に不備はなかった、ただそれだけです」
レミリアはふたりのやりとりをはじめてみた。そして気づいた。かの王は、この王太子への扱いがとても酷いことに。
そして、それは王太子も知っていて、気にする素振りさえみせなかった。
(クリストファー殿下にはもう少し優しい表情をする人なのに……クレメンテ殿下にはとても冷たいのね、まるで以前感じていた、私と妹の関係みたいね)
けれど、先ほどの父の独白からそれがどうやら誤りであることは知った。それでもそれすらも妄想ではないかと心配になるのだけれど。
そして、レミリアは思った、かの王は何故、わざわざ王太子の元へ来たのだろう。今している会話には何の意味もないもののような気がしたからだ。
「折角、王太子にしてやったというのに、何故お前はこうもやる気がなくいい加減なのだ」
「父上、私は所詮、身分の低い女の息子なのです。難しことはあまり得意ではないただそれだけです」
そう言った、クレメンテを見た時、レミリアは無意識に泣いていた。彼のその言葉回しに自分と似たものを感じていたから。
クレメンテはわざと愚者を演じる。そのために皮肉交じりに自身を下げている。それはレミリアが長年行ってきたことと一緒だった。生き残るためにバカを演じている。ずっと分かってはいた。けれど間違いないと確信したのは彼の沼のように眠たい瞳と称される、深緑の目にどうしようもない怒りを見たからだ。
「ふん。まぁいい。それより兵士の準備はおこなっているのだろうな?」
「もちろん、滞りなく」
(戦……うそ、どこの国と戦うつもりなの??)
故郷が戦火によって消えるなど望んでいない。けれど今王と王太子が戦争の話をしている。その現実に心が乱れる、その瞬間自身が希薄になるような気がした。
(どうして……これは……)
「レミー、やっと見つけた。だめだこのままでは消えてしまう。帰ろう」
あたたかい手が、レミリアに触れた。振り返らなくても分かる。それはルーファスだと。だからこそその手を振り払う、たとえ消えてもレミリアはルーファスの元へ戻りたくはなかった。
「いや!!ルーファス、私は……」
そう叫んだ時、頭が急に痛くなる、そのまま、まるで耳鳴りがするような音がしてレミリアは倒れた。
倒れる瞬間確かに、国王が、
「ムーンティア王国を滅ぼさなければいけない」
と言ったのが聞こえたが、それを確かめる前に意識が完全に暗転していた。
2
あなたにおすすめの小説
Blue Bird ―初恋の人に再会したのに奔放な同級生が甘すぎるっ‼【完結】
remo
恋愛
「…溶けろよ」 甘く響くかすれた声と奔放な舌にどこまでも落とされた。
本宮 のい。新社会人1年目。
永遠に出来そうもない彼氏を夢見つつ、目の前の仕事に奮闘中。
なんだけど。
青井 奏。
高校時代の同級生に再会した。 と思う間もなく、
和泉 碧。
初恋の相手らしき人も現れた。
幸せの青い鳥は一体どこに。
【完結】 ありがとうございました‼︎
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる