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第五章:真実の断片と
98.月の王子と太陽と不幸令嬢03
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「レミリア、すまない。君を悲しませるつもりはなかった」
涙を流すレミリアに対して何か誤解したようにルーファスは持っていたハンカチを取り出してその涙を拭う。白いハンカチで銀の刺繍がされたそれはとても繊細で美しかった。
「綺麗な刺繍のハンカチ……」
「ああ、これは母上の形見だ。ここに月の刺繡がされている」
「ルーのお母様はとても優しい方だったのね……」
レミリアには母親の記憶はほぼない。そこにはなんの含みもなかったのだけれどルーファスはレミリアの涙を拭いながら優しく抱きしめた。
「レミリア、僕は君を傷つけてばかりじゃないか??……カール殿下のようにどうしてなれないんだ」
(ただ、君をあたたかく照らす太陽になれたら……)
「ルーは、ルーで良いんだよ。それにずっとずっと長い間苦しんで、もがいて、狂いそうで、それでもずっとルーは頑張ってきた、それってすごいことだよ」
そう言って、震えながら抱きしめていたルーファスを抱きしめ返した。
「レミリア……」
「そして、ごめんなさい。私はルーを正しく理解できていなかった。私にとって前世でもルーにとってはつい昨日くらいの近い過去にレミーナ姫がいて、比べたりするつもりも身代わりにするつもりがなくってもつい地続きで話してしまうのは仕方ないのよね。それなのに……、本当に私は何もわかっていなくて……」
「レミリアは悪くない。なにひとつ……僕がいつも至らないから……」
この優しい人はどんな時も自分ばかり責めてしまうのだろう。どんなことも自分が悪いと思ってしまう。それくらい優しい人だ。だからこそレミリアが言わないといけない。
「それは違う。ルーは今回の件では何も悪くない。悪いのは私。だから謝ったの。許されることかはわからないけどせめてそうしたいと思ったの。だから絶対に自分を責めないで。ルーは何も悪くない。とても優しい私の……」
「お取込み中、申し訳ありません」
抱きしめ合うふたりの背後からヨミが現れた。
「……またか」
「こちらも邪魔はしたくありませんが、カール殿下からご連絡がありました。クリストファー殿下とレミリア姫の体の居場所を見つけたとのことで、今回は逃がさないために何らかの策をこうじたいそうなのですが……」
「結界魔法を使えばいい。奴がいることを確認し、出れないように閉じ込める」
あっさりと答えたルーファスにヨミが深いため息をつく。
「しかし、その場合、生身の体が必要です。そうしないで外で魔法を使うのはいくら我々でも危険です。最悪魂が消滅いたします」
「でもそれ以外に我々が協力できる術はないだろう」
涙を流すレミリアに対して何か誤解したようにルーファスは持っていたハンカチを取り出してその涙を拭う。白いハンカチで銀の刺繍がされたそれはとても繊細で美しかった。
「綺麗な刺繍のハンカチ……」
「ああ、これは母上の形見だ。ここに月の刺繡がされている」
「ルーのお母様はとても優しい方だったのね……」
レミリアには母親の記憶はほぼない。そこにはなんの含みもなかったのだけれどルーファスはレミリアの涙を拭いながら優しく抱きしめた。
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そう言って、震えながら抱きしめていたルーファスを抱きしめ返した。
「レミリア……」
「そして、ごめんなさい。私はルーを正しく理解できていなかった。私にとって前世でもルーにとってはつい昨日くらいの近い過去にレミーナ姫がいて、比べたりするつもりも身代わりにするつもりがなくってもつい地続きで話してしまうのは仕方ないのよね。それなのに……、本当に私は何もわかっていなくて……」
「レミリアは悪くない。なにひとつ……僕がいつも至らないから……」
この優しい人はどんな時も自分ばかり責めてしまうのだろう。どんなことも自分が悪いと思ってしまう。それくらい優しい人だ。だからこそレミリアが言わないといけない。
「それは違う。ルーは今回の件では何も悪くない。悪いのは私。だから謝ったの。許されることかはわからないけどせめてそうしたいと思ったの。だから絶対に自分を責めないで。ルーは何も悪くない。とても優しい私の……」
「お取込み中、申し訳ありません」
抱きしめ合うふたりの背後からヨミが現れた。
「……またか」
「こちらも邪魔はしたくありませんが、カール殿下からご連絡がありました。クリストファー殿下とレミリア姫の体の居場所を見つけたとのことで、今回は逃がさないために何らかの策をこうじたいそうなのですが……」
「結界魔法を使えばいい。奴がいることを確認し、出れないように閉じ込める」
あっさりと答えたルーファスにヨミが深いため息をつく。
「しかし、その場合、生身の体が必要です。そうしないで外で魔法を使うのはいくら我々でも危険です。最悪魂が消滅いたします」
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