【本編完結】魔王と周りに恐れられる辺境伯ですが他人の婚約者に手を出したと噂の伯爵令息にずっと片思いしています

15.夢から覚めたらゲイカップルがいた（ルカ視点）

誰かがずっと僕を呼んでいる。

「起きてくれ、ルカ、すまなかった」

誰かがずっと俺の手を握りしめて何か言っている。

「目を覚ましてくれ、愛しているんだルカ……」

とても誠実な愛の告白になんだか涙が零れ落ちた。

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目をさました僕の耳に届いたのは聞いたことのない男の声だった。

「あのね、辺境伯様。好きだって気持ちを抑えきれないのは分かります。けれど、ちゃんと本人の意思は確認しないとだめっすよ」

そう、大魔王様へんきょうはくさまをなだめるように囁かれた声は甘く優しいものに聞こえた。

「……ああ」

更に、それに素直に答える大魔王様へんきょうはくさま。うーん。なんだろうこの会話……。僕は寝たふりをしてもう少し聞いてみた。

「大体、辺境伯様は想いがものすごく重いんです、ヘビーです。それを受け入れるだけでも大変なんですからもっとちゃんとしてください」

「わかっている。俺にとって……本当に大切な存在だ、だから」

（あ、これあれだ、カップルの痴話げんかだ。大魔王様へんきょうはくさまの相手、男の人……あ、そ、そうか）

僕には同性愛への偏見はない。この世界の人にはそれに対する偏見が根強いところはあるが、僕は愛があるなら性別なんて乗り越えても良いのではとは思う。まぁ両方の同意は必須だがな。

そう考えて、なるほど、大魔王様へんきょうはくさまには男性の恋人がいるのだと認知した。こっそり目をあけると茶髪にタレ目でたぬき顔の可愛らしい青年であることが分かる。

「ルカ、目が覚めたのか。すまない。怪我を負わせた」

「そうっすよ。大切な兵士を傷つけちゃダメっすよ」

ちょっとガン見したせいで辺境伯様にバレた。僕はゲイカップルの痴話げんかなんてきいてませんよスマイルを浮かべる。

（秘密の関係の場合、バレたら僕は大魔王様へんきょうはくさまに殺される。さすがに童貞チャレンジできなくなったのが痴話げんかするゲイカップルをみちゃったからとかだと目も当てられないよ）

「あはは、すいません。その……」

無理にでも何かひねり出そうとしたのに、何も出てこない、まずいまずい。なんとか誤魔化そうとした瞬間、何故か自身の恋人の前で大魔王様へんきょうはくさまが僕を抱きしめる。

心配してくれるのは、割と優しいかもだけど、最愛の人の前でそれはいけない。大体ゲイカップルだから男相手でもこれワンチャン嫉妬されるだろう。

「ははは、へんきょ、いえギル様。誰にでも抱き着いてはいけませんよ。誤解が生まれます」

なんとか、相手の男性に笑みを浮かべて、僕はこの人とは何もありません。ただの豚野郎と主の関係ですというのを必須にアピールしてみた。伝わるかな……無理だね。

「誤解？何を言っているんだ？ああ、こいつは別に……」

「はいはい、俺はお邪魔っすね。失礼しやす」

ああ、全然僕のアイコンタクト通じなかった。ごめんね。僕のせいで変な誤解していないよね大魔王様へんきょうはくさまの恋人さん。

（どこかで誤解をとかないと……）