【本編完結】魔王と周りに恐れられる辺境伯ですが他人の婚約者に手を出したと噂の伯爵令息にずっと片思いしています

ひよこ麺

文字の大きさ
38 / 99

37.ゾウがどついても開かないらしい扉

しおりを挟む
「随分と三人とも楽しそうだね」

折角のルカとの再会と、ルカを手に入れるための大切な講師との語らいを変態に邪魔される。あまりに頭にきたので相手が大公であることも忘れて口が悪くなる。

「……クソ変態、何か用か??」

「はぁはぁ、いいな。やはり絶対欲しいな。ギルフェルを監禁していっぱいいっぱい辱めたいな……高貴なブラックダイヤモンドのような矜持を砕いて私だけしか見ないようにして……」

とっても気持ち悪い。でも俺もルカに対してこういうところがあるという恐ろしい事実。震えながら大公を見るルカが一体どんな顔をしているのか確認した。

(ものすごく気持ち悪いなって顔をしている。ああ、それはつまり俺がルカに同じことしている時、絶対ルカは同じ顔しているし、「こいつキモイな」って思われているということじゃないか……最悪だ。辛い。いますぐ消えてなくなりたい)

自己嫌悪で死にかけていると、さらにルカが大公にトドメの一撃を刺す。

「あの、シオン大公。大魔王様へんきょうはくさまも流石にいますので勘弁して頂きたく……」

(お願いだ、俺を誰か殺してくれ。天使に、俺の愛おしい天使に生理的嫌悪を抱かれているかもしれない事実に生きているのが辛い、爆ぜたい)

色々死にかけている中で、打たれ強い変態は全く気にした風でもなく俺の天使に毒を吐いたがそれすら聞きながせそうなくらい心が痛い。

「うるさい、こざかしい天使め。お前が、お前さぇ堕落させれば愛おしい、……」

「この世界が滅んでもそれはない」

それは絶対にない。世界が滅んで、俺とこいつだけになってもない。もしこいつになんかされる位なら、躊躇なくヤツを殺すか自分が死ぬ。それくらいない。流石にそれは堪えたらしくシオン大公が一瞬切なげな顔をした。

(こいつも俺に嫌悪されて死にたいのかな……いや、あいつはそれくらでへこたれないタイプだ。つまり俺よりこいつのがメンタルが強いのか、それは悔しい。なんとかしたい……)

などくだらないことを考えていたら、いきなり何かが閉まった音がする。

「何にしてもこのまま外には出さないよ」

そう言って笑う、シオン大公。ドアをロックしたらしい。まぁそれくらいは想定済みだ。

「ど、どうしましょう、閉じ込められてしまったんですかね??」

ルカが心配そうな顔をしている。ルカを悲しませるものは絶対許さない。

「心配ない、これくらいなら……」

ベルっちと呼ばれた、俺の講師になる予定の男が、魔法を打ち込もうとした。しかし……。

「ベルゼブブ、主人に君のような賢い男が背くなんてね。でも残念。その扉は魔法では壊れない、というか魔法が無効化されるから無駄なあがきだ。それに強度も……」

魔法が効かないなら、力で開ければいい。とりあえず、俺は扉を軽く手で小突いた。

バキッ

何か壊れた音がする。もう一押しかな。

「いやいや、えっ、私のギルフェルたん強すぎて好きすぎる。じゃなかった。えっ、その扉はゾウが体当たりしても壊れない強度だから人間が開けるのは無理だっていいかけ……」

何か言っているがとりあえず無視して、俺は扉を真っぷたつにした。

「いくぞ、ふたりとも」
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...