【本編完結】魔王と周りに恐れられる辺境伯ですが他人の婚約者に手を出したと噂の伯爵令息にずっと片思いしています

43.国王への報告とルカの秘密

（モレクに辺境伯様がパックンされるより少し前……王都で用事なうの辺境伯様）


「こちらが証拠になります」

俺は、とりあえず変態、もといシオン大公の侵攻についてを国王陛下に報告していた。そしてついでにあのことも会わせて伝えようと思ってきていた。

「ふむ、しかし、フルー公国は相変わらず我が国の辺境伯領を欲しがっておるようだな……」

壮年ではあるが、元々武に優れた王の漆黒の鋭い眼差しは覇気にあふれている。ちなみに俺の伯父上であるためよく似ていると言われる。

しかし、断じて俺はこんな大魔王みたいな顔はしていない。そのひと睨みで地獄の使者を金縛りにまでさせたという恐ろしい眼光など俺は持ち合わせていない。


「はい、懲りない連中です。一応返り討ちにはしましたが、近いうちまた条約を結び直す必要があるかと。それと陛下にもうひとつお話しがございます」

「ああ。可愛い甥っ子に久々に会えたのだいくらでも話を聞こう」

陛下には子供がいない。陛下はその昔、とある方に恋をしたがそれは報われず、結果、政略結婚をして子を設けたが何故かみな幼子のうちに死んでしまった。

それはいくら側妃を迎えようが起こるので「それでは俺の妻になる者が可哀そうすぎる。俺はもう子はなさない。そのうち兄弟の子を養子として王にする」とかなんとか言って甥っ子、姪っ子を可愛がっていて、特に今は亡き弟の子であることもあり、俺のことも実の息子のように大切にはしてくれている。

「ルビー侯爵家の嫡男にまつわる件で、女を使い美人局を行い、引っかかった男から慰謝料として大量の金を巻き上げておりました」

ルカを連れて行く際はもう少し証拠が必要だったので寝かせていたが、いよいよ証拠もそろったのであいつらに天誅をくれてやる。

「はぁ、全く。輝石の一族が聞いてあきれる」

輝石の一族とは我が国の建国に関わった誉れ高い一族であり、皆がその一族の瞳の色と同じ宝石の名を持っている。一番格式高いダイヤモンド公爵家を筆頭に、ルビー侯爵家、サファイア侯爵家と続く。ちなみにルカの生家であるアクアマリン伯爵家もその末席の一族である。

「そうですね。近いうちに本格的に取り調べを行いたく、そちらの許可を頂けますでしょうか」

「ああ、お前がそこまで言うということは証拠もそろっているのだろう。調査の許可を追って出そう。そう言えば、ギルベルト、お前に関して気になる噂を聞いたのだが……」

少し言いづらそうに、陛下が切り出した。顔面に力が入り、側仕えでなれている護衛以外の家臣からヒッという声が聞こえた。地獄の獄卒が泣いて逃げるタイプの顔をしている。こういう顔をしてしまうから魔王と言われてしまうのだろう。

「何か……」

「城で天使といって、愛らしい少年を囲っていると聞いた。しかも、その少年が白金の髪に紫の瞳をしているとも……」

「ルカのことですね。先ほどお話ししたルビー侯爵家の件の被害者で、保護しております」

「なるほど。てっきりお前好みだから性奴隷として飼いならしているのかと心配していた。その少年には不用意に手を出してはいけない、色々ややこしい」

珍しい物言いだった。陛下は俺の伯父であるので割とまどろっこしい言い方は好まない。しかし、今確信のわからないまどろっこしい発言をしている。

「ややこしいとは？？」

手はルカがOKをくれたら出すつもりだ。それなのにそんなことを言うなら理由をしらないといけない。

「それは……その子はアクアマリン伯爵家の三男だろう？？」

「はい」

「アクアマリン伯爵家の三男なのに彼の瞳の色は何故紫か分かるか？？」