【本編完結】魔王と周りに恐れられる辺境伯ですが他人の婚約者に手を出したと噂の伯爵令息にずっと片思いしています

ひよこ麺

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65.レイコンマ1秒は譲れない

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「ギル様……」

あたたかい声がした。ずっと聞いていたいような、天使のような声が。

「……ギル様、お願いです、どうか目を覚ましてください」

その声に答えたい、けれど体が鉛のように重くて、瞼さぇも開けない。

(どうして、どうしてだ。俺の天使に会いたい)

そう願っているのに、すぐ側に臨んでいる光があるのに、動かない体がもどかしくて俺はただ、必死だった。

「そう言えば、昔話で、眠っているお姫様にキスをすると目を覚ますお話しがありますね。ギル様はどちらかというと、マ〇フィセント様寄りな気はするけど……どうか目をさまして」

とてもあたたかい感触だった。今まで生きてきた中でこれほど幸福なことがあったかと思うようなぬくもり。

(今なら目を開けないか??)

体を包み込むように流れ込んだあたたかい感触。その感覚が離れていった後も残った力のようなもの。それによって満ち足りた何か。

どれくらいそうしていたのかわらかない。ただ、その感覚が完全に浸食していき、いよいよ体が動くかもしれないと思った時、俺の耳に声が聞こえた。

(ルカか??)

「伯父上、こちらまで足を運んでいただきすいません。私の最愛が」

「心配ない。丁度フルー公国にルーカスと外遊に来ていたし、甥っ子の頼みを無下にはしない」

ルカではない。ただ、目を閉じているので状況がハッキリわからない。しばらくすると誰かの手が俺の体に触れるのが分かった。その感触はあまり好きじゃないし、先日感じた感触とは違う。

しかし、特に何か不快なことをするわけでもないのでそのままにしていた。

「うむ。なるほど。やはり魔力詰まりがあるようだ。シオン、お前の見立ては正しかったな。この場合は……」

「キスですね!!詰まった魔力を吸い上げてあげれば目をさますのですね!!よし、眠れる森のギルフェル、私が君をキスで目覚めさせる王子様になろう」

凄くウキウキしている声がして、このまま寝ていたらまずいとおもった。何か奪われる。いや色々失う。

(まずい、くそ、唸れ俺の筋肉!!)

「ギルフェル……んん……」

「ふん!!」

ガツン!!

鈍い音と額への痛みで完全に覚醒した。そして目の前には痛みに蹲るシオン大公の姿と、シオン大公に似ているがもっと年嵩の行った中年男性が驚いたようにこちらを見ていた。

「……俺は一体」

「ギルフェル、私の口づけで目覚め」

「未遂だろう??どう考えたって唇が触れ合う前に頭突きしたはずだ」

「いや、それよりレイコンマ1秒ほど私の唇が触れ合う方が早かったはずだ、そう、唇のさきっちょにギルフェルのぬくもりがある気が……」

「幻だ!!」

罵り合う俺達を例のシオン似の中年が、なんとも言い難い視線、具体的には狂気を感じるのに柔らかい眼差しというもので見つめながら言った。

「うむ。無事に目覚めてよかった。シオン、お前も愛する人を見つけられたようで何よりだ」
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