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76.契約は計画的に
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「首尾よくいってるっすよ、ベルっちの連絡ではルカルカも無事に逃げられそうっす」
レイモンドが遠くからアクアマリン伯爵家を双眼鏡でのぞいてそう答えた。作戦としてはジルコニア伯爵家に連れていかれる前にルカを救出して、今まで見たことのないような闇のオーラを今背後で放ち続けているシオン大公に引き渡す、もとい偶然救出させるという作戦である。
「よし、ではアクアマリン伯爵家に俺は会談に行ってくる」
一応、例のルビー侯爵家により美人局事件があったとはいえ、辺境伯領とアクアマリン伯爵家で契約した内容はまだ生きている。それについて気付いていないらしいアクアマリン伯爵家に苦情を入れる雰囲気で行く予定だ。
まぁ、あくまでその間に秘密裡にルカをレイモンドに逃がさせる予定なのだが。
アクアマリン伯爵家の応接間につくと、意外な状況になっていた。そこにはアクアマリン伯爵家の現当主である伯爵と嫡男ではない次男のケビンが座っていたからだ。
(こういう場では、当主と嫡男が来るか夫人が参加すべきだが……)
「ようこそ、我がアクアマリン伯爵家へ」
ゴマでもするように薄ら笑いを浮かべる伯爵に嫌悪感が湧く。そして、その後ろで何故か俺を睨んでいる無礼な男にも。
「ああ、こちらこそお招き感謝する。……しかし、そちらに居るのは嫡男のアベーレ殿ではないようだが……」
その言葉に伯爵は一瞬眉をひそめたが、すぐに先ほど浮かべていた薄ら笑いに戻る。
「長男は風邪を引いてしまいまして、辺境伯殿にうつりますと問題ですので、今回は次男のケビンを同席させております」
「はじめまして、辺境伯殿」
「ああ、はじめまして」
さっきから俺を睨んでいる男は感情も隠さずぶっきらぼうに挨拶をした。そう答えながら睨み返すことを忘れない。途端に「ヒッ」と呻いた男に内心で「俺を睨んで怯えさせようなど100億年はやい」と思ってしまった。どれだけこの外観で数多の人間を怯えさせたと思っている。
俺が睨んでから、小物たしいケビンはずっとマナーモードのように震えているがそれについてはスルーした。
「今回の件だが、勝手に我が家に兵役に来ていたルカ・アクアマリンを連れ帰り婚約を結んだジルコニア伯爵家に連れて行こうとしているようだが、これは重大な契約違反だ」
「いや、しかし、元々該当の兵役はルビー侯爵家の起こした犯罪に関することで無効化と思うのですが……」
遠回しにお前も関与しているのだろうという言い回しに、正直このまま燃やしてやろうと思ったがそれではルカの救出ができなくなるので、俺は冷静にありのままを答えた。
「兵役とルビー侯爵家の件は別件ですね。あくまで兵役はアクアマリン伯爵家より我が家で募集していた兵士の募集に対してルカ・アクアマリンと契約を行ったものであり、なんら違法性もないものだ。そして、本件について兵役は3年となっているにもかかわらずルカ・アクアマリンは1年にも満たない期間しかまだ行っていないにも関わらず貴方達は勝手に彼を連れて行った。これは重大な契約違反だ」
「それは……」
眼前にある契約書を読みながら伯爵は冷や汗をかいている。
「その場合、ここに記載がある通り違約金が発生する。こちらについてお支払い頂きたい」
わざとらしく金の話をした結果、冷や汗から真っ青に変わる伯爵。それはそうだろう。アクアマリン伯爵家にそんな膨大な金はない。領地を売ろうが、家財を売ろうが払える金額ではない。
「それについては、嫁ぎ先のジルコニア伯爵家が支払いを……」
ケビンが急いで矛先を変えようとしたが、それについては想定として織り込み済みだ。
「それは無理ですね。なぜならこの契約はアクアマリン伯爵家と辺境伯家にて結ばれているものですから、貴方達が払う必要がある。さもなければ契約者であるルカ・アクアマリンをこちらに引き渡して頂こう」
レイモンドが遠くからアクアマリン伯爵家を双眼鏡でのぞいてそう答えた。作戦としてはジルコニア伯爵家に連れていかれる前にルカを救出して、今まで見たことのないような闇のオーラを今背後で放ち続けているシオン大公に引き渡す、もとい偶然救出させるという作戦である。
「よし、ではアクアマリン伯爵家に俺は会談に行ってくる」
一応、例のルビー侯爵家により美人局事件があったとはいえ、辺境伯領とアクアマリン伯爵家で契約した内容はまだ生きている。それについて気付いていないらしいアクアマリン伯爵家に苦情を入れる雰囲気で行く予定だ。
まぁ、あくまでその間に秘密裡にルカをレイモンドに逃がさせる予定なのだが。
アクアマリン伯爵家の応接間につくと、意外な状況になっていた。そこにはアクアマリン伯爵家の現当主である伯爵と嫡男ではない次男のケビンが座っていたからだ。
(こういう場では、当主と嫡男が来るか夫人が参加すべきだが……)
「ようこそ、我がアクアマリン伯爵家へ」
ゴマでもするように薄ら笑いを浮かべる伯爵に嫌悪感が湧く。そして、その後ろで何故か俺を睨んでいる無礼な男にも。
「ああ、こちらこそお招き感謝する。……しかし、そちらに居るのは嫡男のアベーレ殿ではないようだが……」
その言葉に伯爵は一瞬眉をひそめたが、すぐに先ほど浮かべていた薄ら笑いに戻る。
「長男は風邪を引いてしまいまして、辺境伯殿にうつりますと問題ですので、今回は次男のケビンを同席させております」
「はじめまして、辺境伯殿」
「ああ、はじめまして」
さっきから俺を睨んでいる男は感情も隠さずぶっきらぼうに挨拶をした。そう答えながら睨み返すことを忘れない。途端に「ヒッ」と呻いた男に内心で「俺を睨んで怯えさせようなど100億年はやい」と思ってしまった。どれだけこの外観で数多の人間を怯えさせたと思っている。
俺が睨んでから、小物たしいケビンはずっとマナーモードのように震えているがそれについてはスルーした。
「今回の件だが、勝手に我が家に兵役に来ていたルカ・アクアマリンを連れ帰り婚約を結んだジルコニア伯爵家に連れて行こうとしているようだが、これは重大な契約違反だ」
「いや、しかし、元々該当の兵役はルビー侯爵家の起こした犯罪に関することで無効化と思うのですが……」
遠回しにお前も関与しているのだろうという言い回しに、正直このまま燃やしてやろうと思ったがそれではルカの救出ができなくなるので、俺は冷静にありのままを答えた。
「兵役とルビー侯爵家の件は別件ですね。あくまで兵役はアクアマリン伯爵家より我が家で募集していた兵士の募集に対してルカ・アクアマリンと契約を行ったものであり、なんら違法性もないものだ。そして、本件について兵役は3年となっているにもかかわらずルカ・アクアマリンは1年にも満たない期間しかまだ行っていないにも関わらず貴方達は勝手に彼を連れて行った。これは重大な契約違反だ」
「それは……」
眼前にある契約書を読みながら伯爵は冷や汗をかいている。
「その場合、ここに記載がある通り違約金が発生する。こちらについてお支払い頂きたい」
わざとらしく金の話をした結果、冷や汗から真っ青に変わる伯爵。それはそうだろう。アクアマリン伯爵家にそんな膨大な金はない。領地を売ろうが、家財を売ろうが払える金額ではない。
「それについては、嫁ぎ先のジルコニア伯爵家が支払いを……」
ケビンが急いで矛先を変えようとしたが、それについては想定として織り込み済みだ。
「それは無理ですね。なぜならこの契約はアクアマリン伯爵家と辺境伯家にて結ばれているものですから、貴方達が払う必要がある。さもなければ契約者であるルカ・アクアマリンをこちらに引き渡して頂こう」
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