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第12話 招かれざる客(エリアス視点)
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「一目でいいフェリックス皇子に、甥に会わせて欲しい」
「了承いたしかねます。今は大切な婚儀の最中でございます。特に新枕の儀が終わり、破瓜が確認されるまではたとえご親族でありましても竜神のしきたりではお会いすることはできません」
いよいよ、私と愛おしいダーリンの初夜の前ということで、張り詰めた空気が流れている王宮に招かれざる客がやって来ていた。
私は、ダーリン、人間が番いと理解した日から人間にとって最も素晴らしい伴侶になれるように人を学んだ。
現段階まで、敬語で紳士的に振る舞う私は概ねダーリンから好意的に見られているはずだ。
人間の本には『花嫁は紳士的で清潔感のある男を好む。特に初対面は敬語で丁重に扱うのが良い』と書かれていたのでその部分を意識している。
誓いのキスの際に、あまりにダーリンが可愛らしい顔をしたので本能的な衝動が優先しかけたが小粋な竜神ジョークを交えたので大丈夫だろう。
そして、それと合わせてダーリンの身の上についても調べた。
表向きの情報から、通常ならば人間では到達できない深淵の情報まで全て。
番いであるダーリンのことをすべて理解したいと願うのは竜神としては普通のことだが、なぜか右大臣が途中で、
「毛根の数や、細胞分裂の周期などは調べてはいけません。竜神の血を引いているものはともかく、人間にそんなことを知っていると知れたら気味悪がられます。ちゃんと人間を学んでください」
と止めてきたのでその辺りも調べてはあるがダーリンには口外しないようにするつもりでいる。
その中で、ダーリンが帝国で酷い目に遭っていた事実も掴んでいた。
皇后がダーリンを長年虐げ、それを知る者も口を閉ざしていたという。
ダーリンが皇帝に直訴するまで、見えない部分にあざができるようなひどい虐待を受けていた事実に、私は帝国を滅ぼそうかと本気で思ってしまった。
体のあざや傷は王国からこっそり紛れ込ませた治癒師に治させたがそれでも腑が煮えくりかえるのがやまず、うっかり皇后の実家の公爵領に季節外れの猛吹雪が起こってしまった気がするが仕方ない。
さらに悪いのが今、王宮を訪れている大公だった。
表向きは、甥を可愛がる好人物を演じていて、ダーリンも大切にしているように周りからも見えているようだが、竜神の目は欺けない。
大公は結局、自身が可愛いから周りに親切に振る舞う人間で、ダーリンへの振る舞いも自身が見捨てたことで命を落とした子爵令息への罪滅ぼしをしていたに過ぎない。
それだけなら、人間は弱い生き物なので仕方ないと思えたが、奴はよりにもよってダーリンの優しい心に付け込んだのだ。
ダーリンは本来は私の花嫁ではなかった。花嫁は大公の息子になる予定だった。
しかし、大公は自身に恩義があるダーリンの心を利用して自ら私の花嫁になるように仕向けたのだ。
それが許せなかった。
ダーリンは優しい、世界で一番綺麗な魂の持ち主だ。その優しさを利用して人身御供にしたのが大公だ。
結果的に、愛しい番いであるダーリンは私と結婚出来たのだが、ダーリンが私の番いでなかったなら……人間としての幸せをあまり得られない婚姻であることは分かりきっていただろうに、ずっと辛い思いをしてきたダーリンを犠牲にしてよい話ではない。
さらに、実は赤子の入れ替えがあり、ダーリンが実の息子と知ってからの行動も含めて、実の父親であってもダーリンには二度と会わせたくない人物ナンバーワンに内心で決定していた。
そのため、現在、押し問答を繰り返している場に私は姿を現すことにした。
「大公殿下、随分と失礼な訪問であること、ご理解されておりますか」
全く目の笑わない笑みを浮かべながら私は大公を見た。一瞬体を震わせたがすぐに大公は私に話しかけた。
「国王陛下……承知しております、しかし、どうしても甥に至急確認したいことがありまして……」
「それは、フェリックス皇子があなたの息子かを確認されたいということですか?だとしたらすでにこちらで調べて大公殿下とフェリックス皇子に親子関係があることは確認済みですので、確認は不要かと」
私の言葉に酸欠の金魚のようにパクパクと口を開いたり閉じたりしている大公を尻目にその場を去ろうとした私に、大公が叫んだ。
「ならば、なおさら、フェリックス皇子、いえ、息子に会わせてください」
「なぜですか?あなたがフェリックス皇子をご自身のご子息のああ、本物のフェリックス皇子の身代わりにしたというのに……」
私の言葉に大公の顔がみるみる青ざめるのがわかったがやめてやる気はない。
「なぜそれを……」
「フェリックス皇子は、私の花嫁です。身のまわりのことを当然、全て調べております。……大公殿下、貴方がした所業ももちろん把握しております」
ゆったりと穏やかな口調で答えれば、大公はそれっきり俯いて何も口にしなくなった。
元が悪人ではないので今さら自身の所業に胸を痛めたのかもしれないが、ダーリンを傷つけた事実は変わらない。
「お引き取りいただけますね」
空気が冷えるのが分かった。それは、比喩ではない。私の中の苛立ちにより温度が下がってきていたのだ。
「……わかりました。今回は身を引きます。しかし……」
何か言葉を続けている大公を置き去りにして私はそのまま王宮へと戻った。
「今日、ダーリンと結ばれたらお前などとは二度と会わせるつもりはない。ダーリンは永遠の幸せに生きるのだから……」
ダーリンを傷つける存在など近づけるつもりはないのだ。
そう考えて私は、いとおしい人のために自らの準備をはじめるために部屋へ戻ったのだった。
「了承いたしかねます。今は大切な婚儀の最中でございます。特に新枕の儀が終わり、破瓜が確認されるまではたとえご親族でありましても竜神のしきたりではお会いすることはできません」
いよいよ、私と愛おしいダーリンの初夜の前ということで、張り詰めた空気が流れている王宮に招かれざる客がやって来ていた。
私は、ダーリン、人間が番いと理解した日から人間にとって最も素晴らしい伴侶になれるように人を学んだ。
現段階まで、敬語で紳士的に振る舞う私は概ねダーリンから好意的に見られているはずだ。
人間の本には『花嫁は紳士的で清潔感のある男を好む。特に初対面は敬語で丁重に扱うのが良い』と書かれていたのでその部分を意識している。
誓いのキスの際に、あまりにダーリンが可愛らしい顔をしたので本能的な衝動が優先しかけたが小粋な竜神ジョークを交えたので大丈夫だろう。
そして、それと合わせてダーリンの身の上についても調べた。
表向きの情報から、通常ならば人間では到達できない深淵の情報まで全て。
番いであるダーリンのことをすべて理解したいと願うのは竜神としては普通のことだが、なぜか右大臣が途中で、
「毛根の数や、細胞分裂の周期などは調べてはいけません。竜神の血を引いているものはともかく、人間にそんなことを知っていると知れたら気味悪がられます。ちゃんと人間を学んでください」
と止めてきたのでその辺りも調べてはあるがダーリンには口外しないようにするつもりでいる。
その中で、ダーリンが帝国で酷い目に遭っていた事実も掴んでいた。
皇后がダーリンを長年虐げ、それを知る者も口を閉ざしていたという。
ダーリンが皇帝に直訴するまで、見えない部分にあざができるようなひどい虐待を受けていた事実に、私は帝国を滅ぼそうかと本気で思ってしまった。
体のあざや傷は王国からこっそり紛れ込ませた治癒師に治させたがそれでも腑が煮えくりかえるのがやまず、うっかり皇后の実家の公爵領に季節外れの猛吹雪が起こってしまった気がするが仕方ない。
さらに悪いのが今、王宮を訪れている大公だった。
表向きは、甥を可愛がる好人物を演じていて、ダーリンも大切にしているように周りからも見えているようだが、竜神の目は欺けない。
大公は結局、自身が可愛いから周りに親切に振る舞う人間で、ダーリンへの振る舞いも自身が見捨てたことで命を落とした子爵令息への罪滅ぼしをしていたに過ぎない。
それだけなら、人間は弱い生き物なので仕方ないと思えたが、奴はよりにもよってダーリンの優しい心に付け込んだのだ。
ダーリンは本来は私の花嫁ではなかった。花嫁は大公の息子になる予定だった。
しかし、大公は自身に恩義があるダーリンの心を利用して自ら私の花嫁になるように仕向けたのだ。
それが許せなかった。
ダーリンは優しい、世界で一番綺麗な魂の持ち主だ。その優しさを利用して人身御供にしたのが大公だ。
結果的に、愛しい番いであるダーリンは私と結婚出来たのだが、ダーリンが私の番いでなかったなら……人間としての幸せをあまり得られない婚姻であることは分かりきっていただろうに、ずっと辛い思いをしてきたダーリンを犠牲にしてよい話ではない。
さらに、実は赤子の入れ替えがあり、ダーリンが実の息子と知ってからの行動も含めて、実の父親であってもダーリンには二度と会わせたくない人物ナンバーワンに内心で決定していた。
そのため、現在、押し問答を繰り返している場に私は姿を現すことにした。
「大公殿下、随分と失礼な訪問であること、ご理解されておりますか」
全く目の笑わない笑みを浮かべながら私は大公を見た。一瞬体を震わせたがすぐに大公は私に話しかけた。
「国王陛下……承知しております、しかし、どうしても甥に至急確認したいことがありまして……」
「それは、フェリックス皇子があなたの息子かを確認されたいということですか?だとしたらすでにこちらで調べて大公殿下とフェリックス皇子に親子関係があることは確認済みですので、確認は不要かと」
私の言葉に酸欠の金魚のようにパクパクと口を開いたり閉じたりしている大公を尻目にその場を去ろうとした私に、大公が叫んだ。
「ならば、なおさら、フェリックス皇子、いえ、息子に会わせてください」
「なぜですか?あなたがフェリックス皇子をご自身のご子息のああ、本物のフェリックス皇子の身代わりにしたというのに……」
私の言葉に大公の顔がみるみる青ざめるのがわかったがやめてやる気はない。
「なぜそれを……」
「フェリックス皇子は、私の花嫁です。身のまわりのことを当然、全て調べております。……大公殿下、貴方がした所業ももちろん把握しております」
ゆったりと穏やかな口調で答えれば、大公はそれっきり俯いて何も口にしなくなった。
元が悪人ではないので今さら自身の所業に胸を痛めたのかもしれないが、ダーリンを傷つけた事実は変わらない。
「お引き取りいただけますね」
空気が冷えるのが分かった。それは、比喩ではない。私の中の苛立ちにより温度が下がってきていたのだ。
「……わかりました。今回は身を引きます。しかし……」
何か言葉を続けている大公を置き去りにして私はそのまま王宮へと戻った。
「今日、ダーリンと結ばれたらお前などとは二度と会わせるつもりはない。ダーリンは永遠の幸せに生きるのだから……」
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