初夜に「お前を愛するつもりはない」と言われて冷遇されるはずが、狂愛されています。タスケテ

ひよこ麺

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第34話 激しい喪失感と存在しないはずの記憶(エリアス視点)

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「ダーリンに会いたい、ダーリンを吸いたい」

帝国との話し合いを行う国境の会議場の控え室に着いたが、落ち着かなかった。

ダーリンと結婚してから離れたことがなかったのもあり、少し離れただけで発作のようにダーリンのことだけ考えてしまう。

「エリアス殿下、まだ王妃様と別れて1時間も立っていませんよ」

「……ダーリンとは1分、1秒だって離れたくない」

右大臣の言葉は最もだと分かっていても、番いと離れているときの竜神の血筋の不安感は言葉にできない苦痛を伴うものなのだ。

それをダーリンに出会ってから理解した。この不安の解消方法は、真に結ばれて番いが子を宿せば治ると聞いてはいる。

しかし、ダーリンが受け入れてくれるまでは無理強いはしたくないし、私はダーリンと真に結ばれてもう二度と離れたくない。

近年は、竜神の血筋といえどもほとんど番いと出会えないまま生涯を終える者も多い。

私の両親も番いではないが仲睦まじいふたりだった。

番い同士でなくても愛しあえるが、番いと出会えたなら他と愛し合うことはない。

(ダーリン、早くこんな無意味な話は終わらせてダーリンと巣篭もりしたい……)

すでに、こちらが関与していない証拠は完全に掲示できる状況であるため、最短1時間程度で話が終わるはずだが、なぜかさっきから落ち着かない。

胸騒ぎがするのだ。

あくまで勘でしかないが不安で仕方ない。まるでダーリンを失ってしまうような最悪の予感がしていた。

「エリアス殿下……えっ?」

そわそわする私を諌めようとしただろう、右大臣の表情が急に変わる。

「なんだ?急に」

私の言葉に、右大臣が信じられないという顔をしながら答えた。

「エリアス殿下、瞳の色が銀色に変わっています……まさか、ディアス様と入れ替わって……」

「俺ならここにいるよって、嘘、どうして瞳の色が……」

ふたりの言葉に、控え室にある姿見に映る自身を確認して絶句した。

そこには、見慣れた金色ではなくディアスと同じ銀色の瞳の顔が映し出されていた。

「なぜ……こんなことが?」

不吉な出来事に顔を見合わせていた時、突然、控え室の扉が開いた。

「大変です、皇帝陛下。王妃様が何者かに攫われて……」

その言葉を聞いた瞬間、何かが壊れた気がした。

伝えに来ただけの伝令の首元を掴んで睨みつけた。

「誰だ、なぜ、ダーリンが攫われた?」

とても自分とは思えない冷たい声だった。

「エリアス、落ち着いて。冷気なんかしまえよ!!」

ディアスが止めようとしたが、止まらない。

伝令の首元から手を離して、しゃがみこんだ。

(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……)

ダーリンが、攫われたなんて見つけなければと、必死にダーリンの気を探るが見つからない。

まるで、この世界から忽然と消えてしまったように……。

「そんなのは嫌だ、絶対に嫌だ。、ダーリンを失うなんて、ダメだ……」

自分でも、驚いたが前にもこの喪失感を味わった気がした。

そう考えた瞬間、脳裏に浮かんだそれは、だった。

頭の中に、ダーリンと愛し合うようになり、卵も授かった幸せな記憶が流れてきた。

幸せで眩しい世界。

最初は、怯えていたダーリンも私の愛に絆されて戸惑いはありながらも受け入れてくれた。

そして、ダーリンとふたりで愛を注いだ卵から、生まれた子供。

私にそっくりな男の子でやんちゃで、口が悪くて生意気だったが、愛おしい我が子と、最愛のダーリンと長く国を治めて末永く幸せに暮らしたはずだった。

しかし、ある朝、目覚めるとダーリンも息子も姿を消していて、結婚前に戻っていた。

そして、本来ならダーリンが嫁ぐはずが、ダーリンと同じ顔をした別人が花嫁としてやってきたので、私は冷たくそいつを突き放した。

(なぜなぜなぜなぜ……)

ダーリン以外、愛することなどできない。私は幸福な世界から残酷な世界に急に移動してしまった気がした。

鏡を見れば、先ほどのように私の瞳は金色から銀色に変化していた。

まるで、番いを喪失した世界から光が消えたように金色が失われていた。

そうして、私は気づいた。金色の瞳は番いがこの世界に居る者に現れる色で、銀色は……。

その瞬間、私は発狂した。

遠くから色々な声が聞こえた気がするが止まらない。

世界が凍っていく。まるで私の心のように冷たく……。全てを閉じ込めてしまおう、冷たく厚い氷の中に……。

「やめろ!!!!」

暴走する意識の中で、光が見えた気がした。そして、それと同時に懐かしい声がした。

光に包まれた私は、そのまま意識を手放した。
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