37 / 65
第37話 再会
しおりを挟む
目を開いた時、あたたかい腕の中にいた。
それはとても懐かしく、ついこの間まで当たり前にあった感覚だった。
「ダーリン」
顔を上げると、そこには優しく甘い笑顔を浮かべたエリアスがいた。
その光景に、涙が溢れそうになる。ほんの少し前まで当たり前だった光景がひどくいとおしいのだ。
「エリアス、僕は……」
「ダーリン、また会えて本当によかった」
エリアスの腕に抱かれて、恥ずかしさよりずっといとおしい気持ちが溢れてきた。
最初は、この世界は夢だと思っていた。だから、目が覚めて気づいたら元の世界に戻るのだと思っていた。
けれど、今は元の世界に帰りたくないと思った。
この世界には、エリアスがいる。誰よりも美しく恐ろしくけれど、誰よりも僕を愛してくれる人外でいとおしい僕の番い。
「エリアス、僕は僕は……」
気づいたら、泣きながらその胸に顔を埋めていた。僕が泣き止むまで、エリアスはずっと優しく背中を撫でてくれた。しばらく嗚咽する僕がやっと落ち着くと、ゆっくりエリアスは今の状況を話してくれた。
僕たちがいるのは帝国との話し合いの前日であまり時間が残されていないこと、真の敵を見つけ出して本来のこの世界のハッピーエンドにする必要があることを教えてくれた。
そして、その時にディアスの正体を知った。
あの子は、本来、この世界が迎えるはずのハッピーエンドの先で、僕とエリアスとの間に生まれた子供だと言うのだ。
(だから、あの小さな子は、僕をママと呼んだのか)
僕を、この世界に戻してくれたあの男の子は、ディアスだったのだろう。僕たちのために、力を使い果たしたのだと聞いて胸が痛くなった。
「エリアス、ディアスを僕らの未来を必ず取り戻しましょう」
「ダーリン、もちろんですよ」
ふたりで決意した。
今度は、僕が前世だと話していた元の世界で思い出したことをエリアスに伝えた。
僕が、最初にこの世界の原作だと思っていた話は、翻訳版でエリアスが話した僕がいない世界の話のようだと言う事と、その翻訳版を書いたのが小野崎エリックという僕の同僚であり、推測だが、小野崎は翻訳版で僕ではなく、自身を主人公に変更したのではないかと考えている。
その言葉に、エリアスは納得したようにうなずいた。
エリアスが僕を失い狂った世界。
それが、翻訳版の世界でエリアスが苦しんだ世界だと理解した。
僕は、翻訳版の世界が、後悔に満ちた世界が好きだった。ドアマット主人公の復讐劇を楽しく見ていたのだ。
しかし、それは、エリアスの地獄であり、悲しみであり、痛みに満ちた世界だと知り、急に悲しくなった。
そして、僕はずっと不思議に思っていることがある。
小野崎は、主人公の名前を書き換えて自分の名前を主人公にするほど原作を好んでいた。だとしたらなぜあのようにバッドエンドの世界を翻訳版にしたのだろう?
小野崎は、この世界の主人公になり変わりたかったはずだ。ならば、原作をそのまま翻訳し自身がハッピーエンドを迎える世界を描けばよかったのに、なぜ小野崎はそうしなかったのか。
「私たちのハッピーエンドを迎えるにはエリック、彼が何らかの妨害をしている可能性が高いですね。右大臣、エリックに関する調査内容をまとめて欲しい」
「御意」
まだ、考える事は山積みだが、今の僕はひとりではないエリアスがいるのだから、必ず成し遂げられるはずだと強く思った。
それはとても懐かしく、ついこの間まで当たり前にあった感覚だった。
「ダーリン」
顔を上げると、そこには優しく甘い笑顔を浮かべたエリアスがいた。
その光景に、涙が溢れそうになる。ほんの少し前まで当たり前だった光景がひどくいとおしいのだ。
「エリアス、僕は……」
「ダーリン、また会えて本当によかった」
エリアスの腕に抱かれて、恥ずかしさよりずっといとおしい気持ちが溢れてきた。
最初は、この世界は夢だと思っていた。だから、目が覚めて気づいたら元の世界に戻るのだと思っていた。
けれど、今は元の世界に帰りたくないと思った。
この世界には、エリアスがいる。誰よりも美しく恐ろしくけれど、誰よりも僕を愛してくれる人外でいとおしい僕の番い。
「エリアス、僕は僕は……」
気づいたら、泣きながらその胸に顔を埋めていた。僕が泣き止むまで、エリアスはずっと優しく背中を撫でてくれた。しばらく嗚咽する僕がやっと落ち着くと、ゆっくりエリアスは今の状況を話してくれた。
僕たちがいるのは帝国との話し合いの前日であまり時間が残されていないこと、真の敵を見つけ出して本来のこの世界のハッピーエンドにする必要があることを教えてくれた。
そして、その時にディアスの正体を知った。
あの子は、本来、この世界が迎えるはずのハッピーエンドの先で、僕とエリアスとの間に生まれた子供だと言うのだ。
(だから、あの小さな子は、僕をママと呼んだのか)
僕を、この世界に戻してくれたあの男の子は、ディアスだったのだろう。僕たちのために、力を使い果たしたのだと聞いて胸が痛くなった。
「エリアス、ディアスを僕らの未来を必ず取り戻しましょう」
「ダーリン、もちろんですよ」
ふたりで決意した。
今度は、僕が前世だと話していた元の世界で思い出したことをエリアスに伝えた。
僕が、最初にこの世界の原作だと思っていた話は、翻訳版でエリアスが話した僕がいない世界の話のようだと言う事と、その翻訳版を書いたのが小野崎エリックという僕の同僚であり、推測だが、小野崎は翻訳版で僕ではなく、自身を主人公に変更したのではないかと考えている。
その言葉に、エリアスは納得したようにうなずいた。
エリアスが僕を失い狂った世界。
それが、翻訳版の世界でエリアスが苦しんだ世界だと理解した。
僕は、翻訳版の世界が、後悔に満ちた世界が好きだった。ドアマット主人公の復讐劇を楽しく見ていたのだ。
しかし、それは、エリアスの地獄であり、悲しみであり、痛みに満ちた世界だと知り、急に悲しくなった。
そして、僕はずっと不思議に思っていることがある。
小野崎は、主人公の名前を書き換えて自分の名前を主人公にするほど原作を好んでいた。だとしたらなぜあのようにバッドエンドの世界を翻訳版にしたのだろう?
小野崎は、この世界の主人公になり変わりたかったはずだ。ならば、原作をそのまま翻訳し自身がハッピーエンドを迎える世界を描けばよかったのに、なぜ小野崎はそうしなかったのか。
「私たちのハッピーエンドを迎えるにはエリック、彼が何らかの妨害をしている可能性が高いですね。右大臣、エリックに関する調査内容をまとめて欲しい」
「御意」
まだ、考える事は山積みだが、今の僕はひとりではないエリアスがいるのだから、必ず成し遂げられるはずだと強く思った。
849
あなたにおすすめの小説
婚約破棄を提案したら優しかった婚約者に手篭めにされました
多崎リクト
BL
ケイは物心着く前からユキと婚約していたが、優しくて綺麗で人気者のユキと平凡な自分では釣り合わないのではないかとずっと考えていた。
ついに婚約破棄を申し出たところ、ユキに手篭めにされてしまう。
ケイはまだ、ユキがどれだけ自分に執着しているのか知らなかった。
攻め
ユキ(23)
会社員。綺麗で性格も良くて完璧だと崇められていた人。ファンクラブも存在するらしい。
受け
ケイ(18)
高校生。平凡でユキと自分は釣り合わないとずっと気にしていた。ユキのことが大好き。
pixiv、ムーンライトノベルズにも掲載中
遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。
月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」
幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。
「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」
何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。
「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」
そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。
僕、殿下に嫌われちゃったの?
実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しております
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる