初夜に「お前を愛するつもりはない」と言われて冷遇されるはずが、狂愛されています。タスケテ

ひよこ麺

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第52話 幸福な人生02(???視点)

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その作品を読んだ時、僕が共感したのはヒーローのエリアスだった。

彼からは僕と同じ匂いがした。全てに恵まれた幸福な存在。成功も何もかもが約束された選ばれた存在。

しかし、彼が惹かれたのは見目以外取り柄のない青年だった。

なぜか、それがイライラした。

不幸な生い立ちを持ちながらもエリアスに愛されて幸せになる。

その筋書きが気に入らない。不幸な存在は幸せにはならない。ずっと足掻いて足掻いて苦しむだけだ。

実際、僕がなぜか目で追ってしまうあの冴えない顔だけの負け犬だっていくら小さなことに幸せを感じてもすぐに現実に飲み込まれて不幸になっていた。

昨日も、彼の上司に当たられて仕事を押し付けられて、家に帰れずそのまま働いている。

不幸でいつもボロボロ、でもなぜか目で追ってしまう存在。

あの作品のヒロインのように幸せになる日は来ない。

そう考えた瞬間、昏い喜びが湧き上がるのがわかった。自分の中にあるなにかいけないものが目を覚ました気がした。それと同時に小説の主人公であるフェリックスも幸せにしたくなくなった。

だから、幸せになるキャラクターの名前を自分の名前にした。そうした瞬間なぜか胸がすいた。

しかし、奇怪なことが起きた。自分の名前にした瞬間、どんなに正しく翻訳をしても話が違うものになってしまった。

仕事として請け負っているからにはそれは致命的な問題となった。

間に誰か入る仕事なら誤魔化せたが、簡単なことだとひとりで受けてしまった。結果取り返しがつかないミスになり結果的に部署異動、事実上の出世コースからの脱落をしてしまった。

失意の中、彼が僕の失敗作の翻訳を読んでいるのを見たのだが、見たこともない恍惚に似た笑顔を浮かべていた。

その表情に今まで感じたことがない感情の扉が開いた。

ひどく歪んだそれは奇しくも彼と同じ部署になり特等席で彼の不幸を眺められるようになりより酷さを増した。

彼が苦しみながら、束の間の喜びを得る様がひどく狂おしく愛おしくて可愛くて可愛くて潰してやりたくなるのだ。

潰したい、噛みつきたい、いや、壊してしまいたい。

衝動は大きくなる。

現実では彼にしたことは仕事を間接的に押し付けて帰るくらいだったが、頭の中では常に彼を傷つけて苦しめるイメージが埋め尽くした。

そんな時、僕は夢を見るようになった。

翻訳したあの小説の世界に入り込み、主人公として苦しめられる夢。

それは僕に残るわずかな良心が見せるものだと思っていたが、同時にこうも思った。

この夢の中に彼を、あの元の主人公として迎えいれたらどうだろう、そして、僕が彼から全て奪い尽くして傷つけて苦しめる。

現実にはできない酷いことをして彼を苦しめ尽くしたら、可愛い可愛い可愛い彼を世界で一番可愛い彼を潰したら……。

-最高に、気持ちが良いだろう。

そう願った時、体から奇妙なものが溢れた気がした。それは真っ黒な糸のようなものになり夢の住人に、彼に巻き付いた。

「ははは、もうすぐ、もうすぐだ。僕の望みが叶う」

それが夢か現実かは関係ない。

僕はもうすぐ、僕の望みを叶える。だって僕は全ての願いを叶えて、幸せになることを約束された存在なのだから……。
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