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2009年作品
ネコネコ通信
しおりを挟む近藤君って、素敵!
みんなはエースの上村君がカッコイイとか、キャプテンの松田君がいいとか言っているけど、私は断然、近藤君!
実夏ちゃんたちにそう話したら、『信じらんなーい!』だって。なんでだろう?
上村君や松田君も、確かにいいけど、でも、みんな好き勝手にボールを投げて、バットをぶんぶん振り回しているだけ、でも、近藤君は自分がアウトになるのを承知で、ボールをピッチャーの前に転がして、ランナーを進めるのが上手!
昨日も、みんながバットを思いっきり振って、遠くへボールを打つ練習をしていたのに、近藤君だけ、黙々とバットを抱くようにして、ボールにぶつかっていき、ボールを転がす練習をしてた。
なんだか、みんなは好き勝手なことをしているのに、ひとりだけチームのためにプレーしている近藤君って、私はすごく素敵だと思うけどなぁ~
私が学校を終わって家に帰ってくると、今日もどこからともなく、玉三郎が現れて、足元にちょこんと座る。
よしよしってなでてやると、ご機嫌さんで、のどをゴロゴロ鳴らしてくれる。
それから、晩ご飯のカリカリを皿に用意してあげるんだけど……
「あっ、ママ! 玉三郎、また福島さんに煮干をご馳走になってきたみたいだよ!」
玉三郎の名前付きの首輪、小さな紙切れが結びつけられていた。近所の福島さんが、玉三郎を可愛がって、煮干しをご馳走してくれるのだけど、そのせいで、我が家での玉三郎の食欲が落ちて、心配しちゃいけないというので、小さく裂いたチラシの裏に、そのことを毎回書いて、首輪に結びつけてくれるのだ。
でも、福島さんって、どこのうちの人だろう?
近所の家に福島って表札のかかっているうちなんてないし、福島っていう人の噂だって聞いたことがない。
「玉、お前いつもどこのおうちで、煮干しもらってくるの?」
玉三郎、みゃ~ぁ って返事しただけ。
家の奥から、ママの声がした。
「あらあら。舞、玉ちゃんのご飯、少し減らしてね」だって。
玉三郎、残念だったね。
次の日も、家に帰ると、玉三郎がどこからともなく私の足元に現れて、私に甘えた。
でも、今日は、その玉三郎を追って、男の子が一人ついてきた。
「こ、近藤君!」
「お、山本! 玉三郎って、山本の家の猫だったのか?」
「え? う、うん……」
もしかして、私、顔が赤くなってない? あ、でも、今夕方で、夕日が当たってるから、気づかれないかな? 近藤君と二人っきりで会話するなんて、ど、どうしよう!
「そっか、うちのばあちゃんが、いつも玉三郎を膝に乗っけて、昼寝してるから、どこの猫かなって」
「そ、そうなの。へぇ~ 近藤君ちにも玉三郎、遊びにいってたんだ」
「うん、いつもばあちゃん、玉三郎に煮干しをあげるんだけど、今日は手紙をくくりつける前に、玉三郎が帰っていっちゃったから、慌てて追いかけてきたんだ。あ、コレ、ばあちゃんから」
近藤君が私に手紙をくれた。なんか、なんか、すごくうれしい!
で、その手紙、いつもの見慣れた小さく裂いたチラシの裏に、『煮干し5匹上げました。福島』って。
「え? 福島さんって、近藤君のおばあちゃん?」
「ああ、母さんの母さんだから、近藤って名字じゃないんだ」
「そ、そうなんだぁ~」
「じゃ、そろそろ俺、帰るわ」
「うん。またね」
「ああ、また明日」
私、夕日を浴びて去っていく近藤君をいつまでも見送っていた。
「ねえ、ママ、玉三郎、また煮干しもらってきたんだって」
家の奥から、いつものママの声。
「舞、玉ちゃんのご飯、少し減らしてね」
「うん!」
玉三郎のご飯、もちろん今日は大盛り。ガツガツ食べている背中を優しくさすってあげる大サービスつき。
「玉三郎の旦那、いい仕事しますねぇ~」
みゃ~ぅ!
誇らしげにシッポを揺らす猫が、そこにいた。
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