乙女な騎士の萌えある受難

悠月彩香

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外伝

第3話 幸せの家系図 *

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 てんわやんわだった王子の行方不明事件は解決し、だが代わりに、少々面倒な事件が勃発してしまった。
 国王の寝室には宮廷医師たちが群れなしてやってきて、俺の右手の治療にかかりきりだ。ディルアーツには幸いにしてかすり傷のひとつもなかった。
「幸いにしてお骨に異常は見当たらないようでございます。我ら宮廷医師団の調合したこの軟膏で冷やしておけば大事ないかと存じますが、最低でも五日程度は安静に願います」
「五日も手が使えないのでは、国務に差し障る。なんとかならないのか」
 思わずぼやくと、医師たちは困った顔を見合わせたが、幼い声が言った。
「父さま、医者の言うことは素直にきくものです。僕が父さまのお手伝いをしますので、彼らを困らせないであげてください」
「む……」
 ルディアがすぐ横でくすくす笑っているが、五歳児め……宮廷医師団までをも自らの傘下に収めてしまうとは。人心掌握の術をすでに身に着けているなんて、末恐ろしい子供だ。
「大丈夫ですよ、ディルアーツ。母さまはお父さまのお手伝いをするためにいるのですから」
「はい、母さま。父さま、ほんとうにごめんなさい。僕のせいでお怪我……」
「おまえのせいじゃないよ、父さまはおまえが無事でいてくれたならそれでいい。それに、よくあんな部屋をみつけたな。父さまも長いことこの城に住んでるけど、今日までまったく知らなかった。冒険家の才能もありそうだな」
「そうでしょう!? 壁が開いたら階段があったんです! それで僕、すごい発見だと思って!」
 しゃべりの導火線に火が点くと、ディルアーツの舌は回転速度を速める。しゃべるわしゃべるわ、聞いているこちらが苦笑するほどによくしゃべった。
 部屋で家族水入らずの夕食を摂り――このときばかりは、俺がルディアに「あーん」してもらっても、ディルアーツが邪魔してくることはなかった――、やがて就寝の時間になると奴は言った。
「僕、今日は自分のお部屋で寝ます」
「ひとりで大丈夫?」
 暗闇に長時間、ひとりきりでいたディルアーツを心配してルディアは言ったが、彼は首を振った。
「はい。ミミティアにご本を読んでもらう約束をしてるんです。それに母さまは、父さまが寝られるようにお手伝いしてさしあげてください」
 こうして外に控えていたミミティアに子供部屋へ連れて行ってもらうと、ディルアーツのいなくなった部屋には静寂が訪れた。
「本当に、よくしゃべる子ですね。キリアさまの遺伝でしょう?」
「そんなことはない。俺は静寂を尊ぶ心を持っていた」
「ラグフェス副将軍から聞きましたよ。キリアさまは幼い頃、病気がちではいらしたけれど、口先は誰よりもお元気だったとか。よく議論をふっかけられるので、それに対応できるよう必死にお勉強なさったと言ってましたよ」
「ラグフェスのヤツ、そんなことまでルディアに吹聴してたのか? あいつめ……」
 苦笑しつつも、なんだかルディアとふたりきりになるのが久しぶりな気がして、すこし気分が高揚する。怪我人とはいうものの、右手首が固定されているだけで、ほかには不調もない。
「まあいいや。ルディア、ボタン外してくれないか。さすがに片手だと」
 服のボタンを外してもらうと、最後のひとつが外れるのももどかしく上着を脱ぎ捨て、妻の頭を抱き寄せて唇を重ねた。
「キリア、さま……」
 ルディアは頬を染めて恥ずかしそうに睫毛を伏せたが、逆らわずにキスを受け入れてくれた。
 キスくらいは毎日しているが、身体を重ねるのは久しぶりだ。さすがの俺も、子供が寝ている横で行為に及ぶのは抵抗があり、昂ってしまわないよう、ベッドの中で彼女に触れることもあまりなかった。
 ルディアの胸元に左手を滑り込ませると、やわらかな感触がすぐに伝わってきた。ディルアーツが生まれて一年くらいは、授乳のために胸がかなり大きくなったが、今では昔とさほど変わらない大きさに戻っていて、ルディアはそれが無念でたまらないようだ。
 でも、俺はこっちのほうが安心する。彼女の胸が大きいと、子供のものを横取りしているような罪悪感が芽生えるのだ。まったく。
「この胸は俺のものだというのに……」
「え」
 つい本心が口をついて出てしまった。だが、尖った乳首を指でつまんで、くりくりと潰してやると、ルディアの唇から熱っぽい吐息が漏れた。
「ルディアンゼ、脱がせたいのは山々なんだけど、この通り手が使えない。脱いで?」
「……はい」
 ベッドの横に立ったまま、ルディアンゼは恥ずかしそうにドレスを脱いでいく。白い肩がむき出しになり、細い腰が露わになる。シュミーズもそっと外してルディアが下着だけの姿になると、俺の理性はかんたんにどこかへ消え失せた。
 髪を留めていた飾りを外し、その細い身体を抱き寄せてベッドにもつれこんだ。艶やかなブロンドがベッドの上に広がると、これから始まる大人だけの時間に気分は最高潮だ。
 下着をよけて乳房をむき出しにすると、それを口に含んで舌でくすぐった。
「ぁ……あっ」
 俺の背中にまわされた彼女の手に、力がこもる。舌だけでは足りず、右手は肘をついて身体を支え、自由な左手でルディアのなめらかな背中を撫で、ぷりっとしたかわいいお尻をなぞり、そのまま内腿に這わせた。
「んっ――くすぐっ……」
 腿の付け根を指で触れ、下着の淵のぎりぎりを行き来する。そのたびに彼女の呼吸が速まり、俺の首にすがりついてきた。
「あぁっ、キリアさま――そんな、焦らしちゃ……っ」
「久しぶりだし、すぐ終わらせちゃうのはもったいないよ。次、いつこんな機会があるかわからないし――」
 下着の上から、彼女の割れ目をなぞる。そこはとっくに濡れていて、久々のまぐわいに彼女も期待でいっぱいだったことを知らせてくれた。
 胸を隠す下着を外して投げ捨て、俺は唯一自由になる左手でルディアの肌の感触を堪能するように滑らせる。唇を這わせ、舌でぺろりと舐めるのも忘れない。
「――――っ」
 震えるような小さな吐息を耳元に聞きながら、ルディアの腕が必死に俺に抱きついてくるのを心地よく感じた。彼女の唇も、俺の首筋をなぞり、耳たぶを甘噛みしてくる。
「ルディアンゼ、俺も脱がしてよ」
 上衣はとっくに脱いでいたが、下はまだベルドで固定されたままだ。
 彼女の上体を抱き起こすと、ルディアは遠慮がちに手を伸ばし、ベルドを外し、ズボンを下ろす。下着の中はすでに猛り狂っていて、それを視界に留めた途端、ルディアンゼの頬が赤らむのを見た。
 夫婦になってもう六年も経とうというのに、彼女の恥じらいは新鮮なままだ。下手に慣れてしまわれるより、ずっといい。
 隠し切れないモノをがんばって隠している下着も、ルディアに脱がせてもらう。
「舐めてもいいよ?」
「あ、あのっ」
 おっかなびっくりするルディアがかわいくて、ついついからかってしまうが、彼女はすなおにこくんと頷いて、俺の正面に正座したまま、俺の息子を口に咥えた。
 いきなりこんなことをさせるなんて、当然抵抗がくると思っていた俺のほうが戸惑ってしまった。だが、彼女の小さな口が必死にそれを咥え、しゃぶる姿を見ていると心臓音が乱れた。
 女性はきっとこういう行為は好きではないだろうから、しょっちゅうこんなことをしてもらっているわけではない。きっと今日は、怪我をしているから、手伝ってくれているのだろう。
「ん――ルディア、気持ちいい」
 彼女の手に握りしめられ、動かされる。先のほうの筋を舌先でくすぐられると、あまりにも気持ち良すぎて、こちらが先に降参してしまいそうだ。
「あぁっ、もちょっと――手加減してっ、出そ……」
 まだ彼女を気持ちよくもしていないのに終了では、男として情けなさ過ぎるじゃないか。必死に呼吸をして吐精をこらえるとルディアの上体を強引に抱き寄せて、その薄っぺらい下着の中に左手を挿しこんだ。
 中指を彼女の割れ目に沿って走らせると、溜まった蜜がとろりと溢れだして、あっさり俺の指を受け入れた。
「んぁっ、あぁあ……っ、や――」
 にちゃにちゃと淫らな音が鳴り、ルディアンゼの切ない吐息がそれに混じる。俺も昂ぶりを煽られて、目を閉じたまま文字通り手探りで彼女の秘所を苛めた。
「キリアさまっ――もっと、して……」
 俺の肩に手を置き、もどかしげにルディアは腰をくゆらせる。だが、右手が使えないのは意外に不便だった。思ったように態勢を変えられず、時々、痛みに気を取られてしまい、彼女を快楽の泉に完全に沈めてしまうまでいかないのだ。
 一瞬、顔をしかめたところをルディアに見られてしまい、彼女は快感交じりの霞んだ瞳で俺を心配そうにのぞきこんだ。
「あの、やっぱり今日は……」
「やめないよ。ルディアンゼ、こっちにおいで」
 彼女を俺の膝の上に跨らせると、張りつめたモノを彼女の秘裂に宛がうように押しつける。
「このまま動いて」
 濡れた秘裂に埋もれた俺の息子はたちまち蜜まみれになった。ぬるぬるしていてあたたかかくて、最高に心地のいいベッドにくるまれているような気分だ。
 ルディアは割れ目に沿って熱を持ったモノにそこを犯され、でも遠慮がちに腰を上下に動かし始めた。時々、秘裂の奥に押しつけるように腰を浮かせてやると、ルディアの表情が乱れに乱れる。
「キリアさまの――熱い……あぁっ」
「ルディアのここも、すごく熱いよ」
 そして、目の前で揺れる朱色の粒を口に含んで吸う。すると、彼女は俺の頭をぎゅっと胸に抱え込み、俺の息子を割れ目の深くまでいざなった。
「んんっ……キリアさまっ、これじゃ……」
「物足りない?」
「お願い――もっと、中も……」
 かわいいおねだりに、俺の息子のやる気がいや増す。そのまま彼女の膣に楔を食い込ませ、深く打ち込んだ。
 数ヶ月ぶりに入ったルディアの中はきつくて、こんなに強く締めつけられるとは思いもよらずに、眉根に皺が寄った。
「ひ、っん――! キリアさまぁ……!」
 俺が何か言わなくても、ルディアは自ら腰を上下に揺らして俺を咥えこむ。
 繋がり合う場所から蜜が溢れ、ぶつかりあう肌を汚し、シーツにも淫らな染みを作った。ああ、気持ちいいけど、もどかしい。もっと、もっと深くまで貫きたい。
「ルディアンゼ」
 腰を揺らせる彼女の唇を捕らえ、獰猛にキスを仕掛けると、そのままベッドに押しつけて唇を貪った。唾液が混ざり合い、たちまちそれはいやらしい接吻へと移り変わる。
 ふと唇を離し、呼吸を落ち着けてから、俺はなんとなく言い出せずにいた言葉を口にした。
「ねえ、もうひとり、子供欲しくない?」
「あ……」
 とろんと恍惚の表情を浮かべるルディアは、俺の言葉を反芻するように目を大きく開いた。
「欲しいです――けど、でも」
 ディルアーツが生まれてから、出産後の彼女の身体の負担を考えると、なんとなく二人目という発想には至らなかった。身体を重ねても、無意識に避妊薬を使いつづけていたせいか、ルディアは俺がもう子供を欲していないのだろうと思っているようだ。
 それに、もうひとつ。
「別に子供がいやなわけじゃないよ。ただ、出産のときの辛そうな姿見たら、なんだか申し訳ない気がして」
 陣痛に悲鳴を上げる妻を見て、青ざめない夫がいるだろうか。気丈なルディアをしても、長時間の気が遠くなるような痛みに何度も意識を失いかけていた。あの姿を目の当たりにしてしまうと……。
「そんなこと、おっしゃらないでください。私、キリアさまの子供なら、何人だって欲しいです。次は女の子とか、どうですか?」
 乱れた呼吸の合間に、ルディアは笑って言う。
「いいね、今度はルディアンゼが妬くくらいに俺にベッタリな娘がいいね」
「――キリアさま、妬いてらしたんですか……?」
「当たり前だろ。俺のルディアンゼにべとべとと……気づけば君の胸元に手をツッコんで寝てるヤツに何度嫉妬したことか!」
 ルディアは冗談と受け取って笑ったが、半分くらいは本心だ。でも今日、俺にすがりついて泣いていたディルアーツを抱きしめていたら、やはりたまらなく愛おしくなって、ルディアンゼとの間になら何人でも子供が欲しいと思ったんだ。
「だから……」
 ふたたび唇を重ねながら、彼女の頬に手を当て、胸を滑らせ、臍をなぞって下腹部にそっと忍び込む。膣内を俺に犯されたまま、指で花唇も責めたてられて、たちまちルディアの表情が切なく歪んだ。
「んん――う、ぁっ、キリアさま、そんな、奥……あぁあっ!」
 ゆっくり引いて、襞を震わせるように擦りつけながら、最奥を貫くように入り込む。背中を逸らせたルディアの胸を食み、指は割れ目の泉に沈んでいる蕾を潰し、可能なかぎりの快感を彼女の身体の内と外から同時に刻みつけた。
「ひぁっ――ああぁ、も、ぉ……っ」
 ぶるっとルディアの身体が強張り、震えた。その強張りに絞られるように、咥えられた部分が締めつけられ、彼女の中に放った。
 次の世代に繋がる、新しい命の胤を。
 まさか双子を授かるとは思わなかったけど。
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みんなの感想(1件)

月乃ひかり
2017.02.12 月乃ひかり

悠月彩香さま

はじめまして。初めて感想を投稿いたします。
実はムーンさんの方でずっと拝読しておりまして、書籍化を知り大変嬉しく思っております。おめでとうございます!
ムーンさんでは削除となって寂しく思っていましたが、またアルファさんの方で上げていただいて、嬉しくて読み返しています。
ルディとキリアのお話大好きな作品でした!
書籍となるのを楽しみにしています。
また、アルファさんの更新を引き続き楽しみにしています!

悠月彩香
2017.02.12 悠月彩香

月乃ひかりさま
はじめまして、コメントありがとうございます!
ムーンさんのほうでお読みくださっていたのですね、うれしいです^^
みなさんのおかげで書籍として出せることになりました、ありがとうございます!
そして再読もありがとうございます。外伝まできっちり掲載いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします☆

解除
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