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7話 日常と旅支度
01.報告会
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スポンサー様の有り難い資金援助の話から1日が過ぎた。浮かれ過ぎて、昨日はあの場にいた人達以外に例の話をしていないがどうなっているのだろうか。ギルド生活は継続するつもりだが、まずは1週間程ギルドを空けなければならない。
友人達に昨日の話をしようとギルドにやって来ていたメイヴィス・イルドレシアはぐるりとロビーを見回した。うっかり寝坊したので昼近い時間だが、ナターリアくらいならばこの時間でもギルドで駄弁っていそうだ――
「あ」
何と間の良い事だろうか。偶然にもナターリアとシノ、そしてヒルデガルトが一つのテーブルで昼食を摂っているのを発見した。シノとナターリアはともかく、ここにヒルデガルトがいると違和感倍増だ。
大手を振りながらテーブル女子会に声を掛ける。
「おはよう。相席していい?」
「メヴィ! 昨日はどこへ行ってしまったのかなっ!? いきなりいなくなったから、捜したんだよ!」
浮かれ過ぎて別れの挨拶すらせずに出て行ってしまったらしい。申し訳無い気持ちになりながらも、遠慮なく空いた椅子に腰掛ける。
ヒルデガルトが自身の食べていたリゾットに視線を落としながら訊ねた。
「メヴィ、貴方は昼食を召し上がらないのですか?」
「寝坊しちゃって、朝昼兼用で食べてきちゃいました」
「そうですか。きちんと三食召し上がった方が良いですよ。健康的にも」
ところでさ、とシノが口を挟む。
「お前、何か面白い事になってるって? うちのお師匠が言ってたよ。つっても、あの人無口だから詳しい話は聞けなかったけど」
「ああ、そうだった! 聞いて下さいよ、実は――」
メヴィ、と聞き覚えのある爽やかな声に事情説明の言葉を掻き消される。見れば、正面からヘルフリートが駆け寄って来るのが見えた。何か急ぎの用事なのだろうか、爽やかな好青年の笑みは消え困惑の表情を浮かべている。
「すまない、少し訊きたい事が――」
「ちょっと! 今、あたし達がメヴィにお話を聞いているんだよっ! 順番!」
「じゅ、順番!? いや、いい。多分君の聞きたい話と、俺が聞きたい話は一緒だ。相席するぞ」
椅子が無かったので4人掛けテーブルから椅子を1つ拝借してきたヘルフリートが周囲の話も聞かず輪に加わる。変な所で図々しい事だ。
用事は良いのかとも思ったが、彼もそれ以上の言及をしなかったので先に昨日の出来事を話す事にした。
「イケメン貴族からの大手依頼があったじゃないですか。私、それを達成してローブの布地を昨日、提出したんですよ」
「そういえばそんな話あったな。おめでとさん」
「そしたら、その依頼人が私に投資してくれるって言うんで、ちょっと旅に出る事になりました」
「はぁ!?」
ナターリアとシノの悲鳴のような奇声が被った。
一方でヒルデガルトは穏やかな笑みを浮かべる。
「それは! おめでとうございます。錬金術師への第一歩ですね。アロイス殿が護衛なら請け負う、と少し前に仰っていましたよ。声を掛けてみてはどうでしょう?」
「メヴィ、もうアロイス殿には声を掛けたんじゃないのか?」
ヘルフリートの言葉は正解だったが、彼の用事が判明した。アロイスの事を聞きに来たのだろう。メイヴィスは若い騎士の言葉に頷く。
「いや、その場にアロイスさんはいたので1週間程、私の護衛として隣の大陸へ付いてきて貰う事になりました」
「えぇっ!? ちょ、メヴィ? それホント!?」
「ちょ、ナタ、顔が近い……」
何故か興奮しているナターリアがそのままの勢いで机を叩いた。机が真っ二つになったが、ヒルデガルトが慌てて机上の食べ物を支えたので悲惨な状況は免れる。
動じず水を一杯一気に飲み干したヘルフリートがそうか、と深刻そうに頷いた。
「1週間で帰るのか……」
「え、アロイスさんがいないと困りますか? なら、別に護衛を雇いますけど」
「ああいや! そうじゃないんだが、あの人、割とふらふらしている所があるしギルドから出て行ってしまったらどうしようかと思っただけだ」
「ええ? ギルドは原則出入り自由ですからね。他人の行動を拘束するのは難しいと思いますよ、ヘルフリートさん。そんなにアロイスさんと仲良かったんですか?」
「んー……。仲が良いとか悪いとかじゃなくて、居て貰わないと困るんだよ。ああ、変な意味じゃなくて鍛錬の相手として。大先輩に胸を貸して貰える機会なんてそうそう無いだろ?」
――何か怪しいな……。
凄く早口に説明してくるところなんかが非常に気分を不安定にさせる。本当はギルドからアロイスを連れ出されるのに大変困る事があるような、そんな調子ではないだろうか。流石はみんなのアイドル、アロイスさん。
やっぱり護衛は別の人を雇った方が良いかもしれない――
などと考えた矢先だった。それまで俯いて小刻みに振るえるだけだったナターリアがついに口を開く。
「2人旅!! あんた、しっかりやりなさいよ! チャンスじゃない!!」
「ナターリア、化けの皮剥がれてるよ。そうやって私の旅の目的が不純に満ち溢れてるような言い方は辞めて貰える!?」
「つかメヴィ出て行くのかよ。私と世界一の鍛冶職人になる、つったじゃん」
「言ってないよ、言ってない!! しかも私! アルケミスト!!」
収拾が付かない事態になってきた。とはいえ、この喧騒とも一時お別れだと思うとどことなく寂しい気もする。
友人達に昨日の話をしようとギルドにやって来ていたメイヴィス・イルドレシアはぐるりとロビーを見回した。うっかり寝坊したので昼近い時間だが、ナターリアくらいならばこの時間でもギルドで駄弁っていそうだ――
「あ」
何と間の良い事だろうか。偶然にもナターリアとシノ、そしてヒルデガルトが一つのテーブルで昼食を摂っているのを発見した。シノとナターリアはともかく、ここにヒルデガルトがいると違和感倍増だ。
大手を振りながらテーブル女子会に声を掛ける。
「おはよう。相席していい?」
「メヴィ! 昨日はどこへ行ってしまったのかなっ!? いきなりいなくなったから、捜したんだよ!」
浮かれ過ぎて別れの挨拶すらせずに出て行ってしまったらしい。申し訳無い気持ちになりながらも、遠慮なく空いた椅子に腰掛ける。
ヒルデガルトが自身の食べていたリゾットに視線を落としながら訊ねた。
「メヴィ、貴方は昼食を召し上がらないのですか?」
「寝坊しちゃって、朝昼兼用で食べてきちゃいました」
「そうですか。きちんと三食召し上がった方が良いですよ。健康的にも」
ところでさ、とシノが口を挟む。
「お前、何か面白い事になってるって? うちのお師匠が言ってたよ。つっても、あの人無口だから詳しい話は聞けなかったけど」
「ああ、そうだった! 聞いて下さいよ、実は――」
メヴィ、と聞き覚えのある爽やかな声に事情説明の言葉を掻き消される。見れば、正面からヘルフリートが駆け寄って来るのが見えた。何か急ぎの用事なのだろうか、爽やかな好青年の笑みは消え困惑の表情を浮かべている。
「すまない、少し訊きたい事が――」
「ちょっと! 今、あたし達がメヴィにお話を聞いているんだよっ! 順番!」
「じゅ、順番!? いや、いい。多分君の聞きたい話と、俺が聞きたい話は一緒だ。相席するぞ」
椅子が無かったので4人掛けテーブルから椅子を1つ拝借してきたヘルフリートが周囲の話も聞かず輪に加わる。変な所で図々しい事だ。
用事は良いのかとも思ったが、彼もそれ以上の言及をしなかったので先に昨日の出来事を話す事にした。
「イケメン貴族からの大手依頼があったじゃないですか。私、それを達成してローブの布地を昨日、提出したんですよ」
「そういえばそんな話あったな。おめでとさん」
「そしたら、その依頼人が私に投資してくれるって言うんで、ちょっと旅に出る事になりました」
「はぁ!?」
ナターリアとシノの悲鳴のような奇声が被った。
一方でヒルデガルトは穏やかな笑みを浮かべる。
「それは! おめでとうございます。錬金術師への第一歩ですね。アロイス殿が護衛なら請け負う、と少し前に仰っていましたよ。声を掛けてみてはどうでしょう?」
「メヴィ、もうアロイス殿には声を掛けたんじゃないのか?」
ヘルフリートの言葉は正解だったが、彼の用事が判明した。アロイスの事を聞きに来たのだろう。メイヴィスは若い騎士の言葉に頷く。
「いや、その場にアロイスさんはいたので1週間程、私の護衛として隣の大陸へ付いてきて貰う事になりました」
「えぇっ!? ちょ、メヴィ? それホント!?」
「ちょ、ナタ、顔が近い……」
何故か興奮しているナターリアがそのままの勢いで机を叩いた。机が真っ二つになったが、ヒルデガルトが慌てて机上の食べ物を支えたので悲惨な状況は免れる。
動じず水を一杯一気に飲み干したヘルフリートがそうか、と深刻そうに頷いた。
「1週間で帰るのか……」
「え、アロイスさんがいないと困りますか? なら、別に護衛を雇いますけど」
「ああいや! そうじゃないんだが、あの人、割とふらふらしている所があるしギルドから出て行ってしまったらどうしようかと思っただけだ」
「ええ? ギルドは原則出入り自由ですからね。他人の行動を拘束するのは難しいと思いますよ、ヘルフリートさん。そんなにアロイスさんと仲良かったんですか?」
「んー……。仲が良いとか悪いとかじゃなくて、居て貰わないと困るんだよ。ああ、変な意味じゃなくて鍛錬の相手として。大先輩に胸を貸して貰える機会なんてそうそう無いだろ?」
――何か怪しいな……。
凄く早口に説明してくるところなんかが非常に気分を不安定にさせる。本当はギルドからアロイスを連れ出されるのに大変困る事があるような、そんな調子ではないだろうか。流石はみんなのアイドル、アロイスさん。
やっぱり護衛は別の人を雇った方が良いかもしれない――
などと考えた矢先だった。それまで俯いて小刻みに振るえるだけだったナターリアがついに口を開く。
「2人旅!! あんた、しっかりやりなさいよ! チャンスじゃない!!」
「ナターリア、化けの皮剥がれてるよ。そうやって私の旅の目的が不純に満ち溢れてるような言い方は辞めて貰える!?」
「つかメヴィ出て行くのかよ。私と世界一の鍛冶職人になる、つったじゃん」
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収拾が付かない事態になってきた。とはいえ、この喧騒とも一時お別れだと思うとどことなく寂しい気もする。
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