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8話 魔道士の国
05.店主、ユリアナ
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「店主、ユリアナが経営するマジックアイテムショップ。『フェリーチェ』です」
シオンに案内されたのは、可愛らしく且つシックな趣のある店だった。店主は名前からして女性だろうか。可愛い物が好きな、割とお洒落な感じの女性が勝手にイメージされる。
店主の姿は見当たらないが、勝手知ったるようにシオンは中へと入って行った。新品の匂い。建って間がない事をありありと物語っている。
「あれ~、シオンさんこんにちは~」
呼び鈴が鳴ったからか、店の奥から女が駆けてきた。淡いブロンドをお下げにした、エメラルドグリーンの双眸。桃色のワンピースに、一応店員である事をアピールしているのか前掛けを装着している。
出て来た彼女に対し、軽く会釈したシオンは事実だけを蕩々と述べた。
「先日言っていた、錬金術師のメイヴィス様をお連れしました」
「わあ~、有り難うございます。メイヴィスちゃん、私、店長のユリアナです~。これからよろしくお願いしますね」
――良い人そう!
柔らかな物腰、細かい事を気にしなさそうな謎の大らかさ。ギルドが自由人の集まりだったので拘束がキツそうな職場だったらどうしようかと思ったが、穏やかそうだ。
「メイヴィスです、どうぞよろしく。あ、周りからはメヴィって呼ばれてます!」
「うふふ~、立ち話も何だし、店の奥へ行きましょうか~。え~っと、早速お仕事をお願いしても良いのかしらね~」
「あ、頑張ります!」
私は館へ戻ります、とここでシオンが離脱した。迷いのない足取りで店から出、元着た道を戻って行く。案内する為だけに来てくれたのだろうか。申し訳無い。
「そうだ! ユリアナさん、こちらはアロイスさんです。私の護衛っていうか、保護者っていうか……」
「どちらもであるな。よろしく頼む」
「護衛ですか~。うんうん、ヴァレンディアにあるまじき力強さを感じますぅ。じゃあ~、早速お仕事の話を始めますね。ちょっと~、納品の関係とかあるので先に説明しておかないと~、後で慌てちゃいますから~」
適当な椅子に座る事を勧めたユリアナが従業員の控え室、その壁に掛かっていた紙の束を手に取る。
「えっと~、これが納品リクエストの紙です~。お客様の、こんな物あったらいいな~、入荷したら教えて欲しいな~、というアイテムのメモって感じなんですよぅ」
「こんな物があったらいいな? 随分と漠然としているな」
「は~い、そうなんですよぅ。うちの国って最近出来たばかりで~、とーっても小さいんですよねえ。貿易とかぜーんぜん安定してなくて~。夏に防寒具が届いたり~、冬に夏服が来たりするんです~。入荷の期間もまちまちで、欲しい物が欲しい時に手に入らないんですよね~」
ヴァレンディア国、小国だとは聞いていたが予想以上だったようだ。一見するとアイテムショップばっかりだったのもそれが関係しているのかもしれない。
「じゃあ、私はそのリストにある品を作れば良いんですか?」
「お願いしますね~。でも~、中には実現が難しいアイテムの要求なんかもあるので~、臨機応変、片付けられる物から片付けた方が良いかもしれません~」
後ですね、とユリアナは若干店の方に視線を向けた。
「メヴィちゃんの~、作ったアイテムを並べるスペースも用意しました~。私の方で、一度買い取ってから並べますね~。新商品ブースの隣がそのスペースなんですけど~、錬金術の修行をしに来たんですよね、メヴィちゃんは。私が責任を持ってアイテムの管理をするので~、効能とか教えておいて下さい~。お店の事は手伝わなくて大丈夫ですから~」
「あっ、いえ、手が空いている時は手伝います」
「そうして貰えると~、助かりますぅ」
寝床を借りているので全く手伝わず錬金術の修行に明け暮れている訳にはいかない。ギルドに居た頃は日付を跨いで拘束される事もあったので、日中お店の手伝いくらいなら朝飯前だ。
1日の行動予定を思い浮かべながら、渡された納品リストに視線を落とす。冬だからだろう、身体を温めるアイテムや風邪対策のアイテムが人気のようだ。
自分のアイテムを置けるブースに並べるのは、防寒グッズが最適かもしれない。どんなペースで売れるのか分からないので、最初は少なめに作るとしよう。一点物は置いてもいいのだろうか、考えるべき事が山積みだ。
ともあれ、この納品リストを片付ける事から始めよう。
まずはポケットに入れているだけで温かいアイテム? こういうアイテムの類は確か、今は手持ちがない。工房で新たに作成する必要がある。この喉が感想し辛いマスクというのも同様だ。今は手持ちがない。
「メヴィ、今からどうする?」
「えーっと、取り敢えず勝手が良く分からないので、まずはこの納品リストを消化しようと思います。この辺りなら材料さえあればすぐに作れますし」
「了解。……だそうだ、地下に工房を借りていると館の主人に聞いた。案内して貰って良いだろうか?」
こっちですよ~、と相変わらずのんびりユリアナが腰を浮かせる。地下の工房に案内してくれるとの事だったので、何を錬金すべきかを頭の隅で考えながら後に続いた。
「店主、ユリアナが経営するマジックアイテムショップ。『フェリーチェ』です」
シオンに案内されたのは、可愛らしく且つシックな趣のある店だった。店主は名前からして女性だろうか。可愛い物が好きな、割とお洒落な感じの女性が勝手にイメージされる。
店主の姿は見当たらないが、勝手知ったるようにシオンは中へと入って行った。新品の匂い。建って間がない事をありありと物語っている。
「あれ~、シオンさんこんにちは~」
呼び鈴が鳴ったからか、店の奥から女が駆けてきた。淡いブロンドをお下げにした、エメラルドグリーンの双眸。桃色のワンピースに、一応店員である事をアピールしているのか前掛けを装着している。
出て来た彼女に対し、軽く会釈したシオンは事実だけを蕩々と述べた。
「先日言っていた、錬金術師のメイヴィス様をお連れしました」
「わあ~、有り難うございます。メイヴィスちゃん、私、店長のユリアナです~。これからよろしくお願いしますね」
――良い人そう!
柔らかな物腰、細かい事を気にしなさそうな謎の大らかさ。ギルドが自由人の集まりだったので拘束がキツそうな職場だったらどうしようかと思ったが、穏やかそうだ。
「メイヴィスです、どうぞよろしく。あ、周りからはメヴィって呼ばれてます!」
「うふふ~、立ち話も何だし、店の奥へ行きましょうか~。え~っと、早速お仕事をお願いしても良いのかしらね~」
「あ、頑張ります!」
私は館へ戻ります、とここでシオンが離脱した。迷いのない足取りで店から出、元着た道を戻って行く。案内する為だけに来てくれたのだろうか。申し訳無い。
「そうだ! ユリアナさん、こちらはアロイスさんです。私の護衛っていうか、保護者っていうか……」
「どちらもであるな。よろしく頼む」
「護衛ですか~。うんうん、ヴァレンディアにあるまじき力強さを感じますぅ。じゃあ~、早速お仕事の話を始めますね。ちょっと~、納品の関係とかあるので先に説明しておかないと~、後で慌てちゃいますから~」
適当な椅子に座る事を勧めたユリアナが従業員の控え室、その壁に掛かっていた紙の束を手に取る。
「えっと~、これが納品リクエストの紙です~。お客様の、こんな物あったらいいな~、入荷したら教えて欲しいな~、というアイテムのメモって感じなんですよぅ」
「こんな物があったらいいな? 随分と漠然としているな」
「は~い、そうなんですよぅ。うちの国って最近出来たばかりで~、とーっても小さいんですよねえ。貿易とかぜーんぜん安定してなくて~。夏に防寒具が届いたり~、冬に夏服が来たりするんです~。入荷の期間もまちまちで、欲しい物が欲しい時に手に入らないんですよね~」
ヴァレンディア国、小国だとは聞いていたが予想以上だったようだ。一見するとアイテムショップばっかりだったのもそれが関係しているのかもしれない。
「じゃあ、私はそのリストにある品を作れば良いんですか?」
「お願いしますね~。でも~、中には実現が難しいアイテムの要求なんかもあるので~、臨機応変、片付けられる物から片付けた方が良いかもしれません~」
後ですね、とユリアナは若干店の方に視線を向けた。
「メヴィちゃんの~、作ったアイテムを並べるスペースも用意しました~。私の方で、一度買い取ってから並べますね~。新商品ブースの隣がそのスペースなんですけど~、錬金術の修行をしに来たんですよね、メヴィちゃんは。私が責任を持ってアイテムの管理をするので~、効能とか教えておいて下さい~。お店の事は手伝わなくて大丈夫ですから~」
「あっ、いえ、手が空いている時は手伝います」
「そうして貰えると~、助かりますぅ」
寝床を借りているので全く手伝わず錬金術の修行に明け暮れている訳にはいかない。ギルドに居た頃は日付を跨いで拘束される事もあったので、日中お店の手伝いくらいなら朝飯前だ。
1日の行動予定を思い浮かべながら、渡された納品リストに視線を落とす。冬だからだろう、身体を温めるアイテムや風邪対策のアイテムが人気のようだ。
自分のアイテムを置けるブースに並べるのは、防寒グッズが最適かもしれない。どんなペースで売れるのか分からないので、最初は少なめに作るとしよう。一点物は置いてもいいのだろうか、考えるべき事が山積みだ。
ともあれ、この納品リストを片付ける事から始めよう。
まずはポケットに入れているだけで温かいアイテム? こういうアイテムの類は確か、今は手持ちがない。工房で新たに作成する必要がある。この喉が感想し辛いマスクというのも同様だ。今は手持ちがない。
「メヴィ、今からどうする?」
「えーっと、取り敢えず勝手が良く分からないので、まずはこの納品リストを消化しようと思います。この辺りなら材料さえあればすぐに作れますし」
「了解。……だそうだ、地下に工房を借りていると館の主人に聞いた。案内して貰って良いだろうか?」
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