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9話 アルケミストの武器
03.心強い同行者
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しかし、流石はエルトンの弟子・シノ。ご立腹の師匠に対し、果敢にも口を開いた。
「新しく打ち直すってのは駄目なんですか? ようは、これじゃなきゃ良いんでしょう?」
「そんな時間は無い。打ち直して貰えるのならば有り難いが、ヴァレンディアへいる間の繋ぎが必要だ」
「いや、お前の為に助言してやってるんだけどな。あたし」
その方法は他でもないアロイスが辞退してしまった。鉄製武器など使わないので何とも言えないが、新しく打つのには時間が掛かるという事で良いのだろうか。
「ちなみに、新しく造るとしてどのくらい掛かるんですか?」
「一月」
「長い……」
一月もギルドに居たらスポンサーから大目玉を食らってしまう。しかし、武器も持たないアロイスに無理を言ってヴァレンディアへ来て貰う事も出来ない。ナターリアに頼んだら着いて来てくれないだろうか。
いや、そもそもアロイスはどうするつもりなのだろう。待つのか、それとも代わりの武器を調達するのか。
「あ、アロイスさん、どうしますか……? 私一人だけでも、ヴァレンディアへ戻った方が良いでしょうか」
「早まった真似はするな。今俺もどうすべきか考えているから、少し待ってくれないだろうか」
「あっはい」
分かった、とシノが折衷案を口にする。
「あたしが、アロイスの玩具を直す。んで、一ヶ月後に師匠の打った新しい武器と交換すればいいじゃん。とはいえ、ただの見習の腕を信用するのならだけど」
「何と言われようと、俺はその大剣の補修はしない。他はどうなろうと知らんぞ」
「アロイスさん、シノの腕は確かだと思います。でも、私は手持ち武器を使わないのでよく分からないのも確かです!」
それぞれの言を聞いたアロイスは深く首を縦に振った。彼程、優柔不断という言葉が似合わない男はいないだろう。即断即決、状況判断能力の鬼だ。
「シノ、こちらは頼んだ。刃が欠けた剣を使い続けるのは危険だ、新しく打ち直そうと思う」
「毎度」
エルトンとシノの言葉が全く同時に響いた。見た目は全く似ていないが、やはり師弟である。
「じゃあ、アロイスさんよ。あたしとロビーで打ち合わせな。メヴィも来る?」
「えーっと、すいません。ナタ待たせてて。私が居なくても問題無いですよね?」
「無いけどさ。まあいいや。師匠、ちょっと出て来ます」
メイヴィスはその場を2人に任せ、待っているであろうナターリアを捜して駆け出した。あの2人は互いに自己主張が激しい方でも無いし、上手くやるだろう。後で経過を聞いておかなければ。
***
捜していたナターリアは存外すぐに見つかった。最後に別れた場所から全然移動していなかったからだ。しかし、先程まで自分が座っていた椅子には珍しい人物が鎮座している。
「ドレディさん? 珍しいですね、ギルドに居るの」
ウィルドレディア。コゼット・ギルドの魔女と名高い彼女は呼ばれた事に気付くと妖艶な笑みを浮かべた。
「あら。私も一応、ギルドのメンバーなのだけれど。まあ、今日は本当に偶然よ。というか、帰って来ていたのね」
「いやまあ、こっちも色々ありまして」
などと話をしていると、ナターリアが椅子から立ち上がった。
「よしっ! じゃあ、まずは庭へ行こうかメヴィ!」
「あっ、うん。じゃあ、ドレディさん。また今度」
「庭? クエストなら同行するわよ。今日はこの後、特に用事も無いし」
いやいや、違うの。とナターリアが首を横に振る。
「あたしはメヴィの稽古を付けてあげるんだよっ!」
「稽古?」
「はい。ナタに修行して貰うんです」
「……えぇっと、それは、何故?」
大変珍しい事に、というかおよそ初めてウィルドレディアが困惑するような表情を浮かべた。未来が見通せる魔女、そんな彼女には至極似合わない表情である。
「アロイスさんに怪我させちゃって。本人は気にしなくて良い、って言うんですけど。気にしますよね、普通。もうちょっと役立つようになれたら良いと思ったんです」
「……そう。そういう事ね。ふぅん、貴方ってただの才能の塊じゃなかったのね。道具の力さえあれば、いずれ勝手に無敵になるものだと思っていたわ」
「何ですかそれ。道具が使えるか否かは、結局は使い手の技量次第ですよ」
「それはそうなのだけれど、貴方が言うとあまり説得力が無いわ。私には天才の気持ちや考えなんて、微塵も理解出来ないもの。私が知り得る事は、ただの事実でしかない。当時の人間の感情やストーリーについてはよく分からないのよ」
「私にはドレディさんが何を言ってるのか微塵も理解出来ませんけど……」
「いいわ。私も同行するわよ。貴方に肉弾戦は不向きでしょうから、魔法の手解きなら任せなさい」
心強すぎる監督が加わった。大丈夫か、段々と大事になっていっている気がするが。
「新しく打ち直すってのは駄目なんですか? ようは、これじゃなきゃ良いんでしょう?」
「そんな時間は無い。打ち直して貰えるのならば有り難いが、ヴァレンディアへいる間の繋ぎが必要だ」
「いや、お前の為に助言してやってるんだけどな。あたし」
その方法は他でもないアロイスが辞退してしまった。鉄製武器など使わないので何とも言えないが、新しく打つのには時間が掛かるという事で良いのだろうか。
「ちなみに、新しく造るとしてどのくらい掛かるんですか?」
「一月」
「長い……」
一月もギルドに居たらスポンサーから大目玉を食らってしまう。しかし、武器も持たないアロイスに無理を言ってヴァレンディアへ来て貰う事も出来ない。ナターリアに頼んだら着いて来てくれないだろうか。
いや、そもそもアロイスはどうするつもりなのだろう。待つのか、それとも代わりの武器を調達するのか。
「あ、アロイスさん、どうしますか……? 私一人だけでも、ヴァレンディアへ戻った方が良いでしょうか」
「早まった真似はするな。今俺もどうすべきか考えているから、少し待ってくれないだろうか」
「あっはい」
分かった、とシノが折衷案を口にする。
「あたしが、アロイスの玩具を直す。んで、一ヶ月後に師匠の打った新しい武器と交換すればいいじゃん。とはいえ、ただの見習の腕を信用するのならだけど」
「何と言われようと、俺はその大剣の補修はしない。他はどうなろうと知らんぞ」
「アロイスさん、シノの腕は確かだと思います。でも、私は手持ち武器を使わないのでよく分からないのも確かです!」
それぞれの言を聞いたアロイスは深く首を縦に振った。彼程、優柔不断という言葉が似合わない男はいないだろう。即断即決、状況判断能力の鬼だ。
「シノ、こちらは頼んだ。刃が欠けた剣を使い続けるのは危険だ、新しく打ち直そうと思う」
「毎度」
エルトンとシノの言葉が全く同時に響いた。見た目は全く似ていないが、やはり師弟である。
「じゃあ、アロイスさんよ。あたしとロビーで打ち合わせな。メヴィも来る?」
「えーっと、すいません。ナタ待たせてて。私が居なくても問題無いですよね?」
「無いけどさ。まあいいや。師匠、ちょっと出て来ます」
メイヴィスはその場を2人に任せ、待っているであろうナターリアを捜して駆け出した。あの2人は互いに自己主張が激しい方でも無いし、上手くやるだろう。後で経過を聞いておかなければ。
***
捜していたナターリアは存外すぐに見つかった。最後に別れた場所から全然移動していなかったからだ。しかし、先程まで自分が座っていた椅子には珍しい人物が鎮座している。
「ドレディさん? 珍しいですね、ギルドに居るの」
ウィルドレディア。コゼット・ギルドの魔女と名高い彼女は呼ばれた事に気付くと妖艶な笑みを浮かべた。
「あら。私も一応、ギルドのメンバーなのだけれど。まあ、今日は本当に偶然よ。というか、帰って来ていたのね」
「いやまあ、こっちも色々ありまして」
などと話をしていると、ナターリアが椅子から立ち上がった。
「よしっ! じゃあ、まずは庭へ行こうかメヴィ!」
「あっ、うん。じゃあ、ドレディさん。また今度」
「庭? クエストなら同行するわよ。今日はこの後、特に用事も無いし」
いやいや、違うの。とナターリアが首を横に振る。
「あたしはメヴィの稽古を付けてあげるんだよっ!」
「稽古?」
「はい。ナタに修行して貰うんです」
「……えぇっと、それは、何故?」
大変珍しい事に、というかおよそ初めてウィルドレディアが困惑するような表情を浮かべた。未来が見通せる魔女、そんな彼女には至極似合わない表情である。
「アロイスさんに怪我させちゃって。本人は気にしなくて良い、って言うんですけど。気にしますよね、普通。もうちょっと役立つようになれたら良いと思ったんです」
「……そう。そういう事ね。ふぅん、貴方ってただの才能の塊じゃなかったのね。道具の力さえあれば、いずれ勝手に無敵になるものだと思っていたわ」
「何ですかそれ。道具が使えるか否かは、結局は使い手の技量次第ですよ」
「それはそうなのだけれど、貴方が言うとあまり説得力が無いわ。私には天才の気持ちや考えなんて、微塵も理解出来ないもの。私が知り得る事は、ただの事実でしかない。当時の人間の感情やストーリーについてはよく分からないのよ」
「私にはドレディさんが何を言ってるのか微塵も理解出来ませんけど……」
「いいわ。私も同行するわよ。貴方に肉弾戦は不向きでしょうから、魔法の手解きなら任せなさい」
心強すぎる監督が加わった。大丈夫か、段々と大事になっていっている気がするが。
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