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13話 獣達の庭園
01.アルケミストの致命的問題
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再びヴァレンディア国に戻って来たメイヴィスは、ユリアナの店、地下工房に来ていた。というのも、先日はやれミズアメタケだのミスリルだのと大盛り上がりだった訳だが、肝心要の金が発生する依頼を解決していない。
フィリップの『常に夜の館』。
イアンの『召喚獣を簡単に召喚出来るアイテム』。
自由研究以外の研究が目白押し状態。このままでは仕事だけがどんどん増えて積み重なっていくだけだ。どうにか先に依頼をこなしてしまわなければ。
しかも、フィリップに至ってはヴァレンディアへ来た目的そのもの。流石に最近は遊びすぎているし、そろそろ真面目に依頼の一つでもこなすべきだろう。尤も、その依頼もすぐに終わるとは限らないのだが。
――フィリップさんの依頼を済ませてしまうと、ヴァレンディアにいる意味が無くなっちゃうな……。先にイアンの依頼をやろう。
心中で一人呟き、空っぽの錬金釜に目を落とす。
順序を決めたものの、一つ致命的な問題があった。
イアンの注文は召喚術に関するもの。魔法界隈の中でも錬金術の次くらいにマニアックな部門で、そもそもが集団戦法を得意とする魔道士にとってあまり意味を成さない魔法。それこそが召喚術だ。
前置きはこれくらいにして。
何が問題なのかと言うと――メイヴィス自身、召喚術は囓った事すらなく、当然使えるはずも無い上に原理すら不明という事だ。
***
分からない問題を自分で幾ら悩もうが同じ。早々にそう判断をしたメイヴィスは、仕方なく工房を出て1階の店内へ戻って来た。
幸い、ここは魔道士の国。
これだけ魔道士がいれば、召喚術を使える人物の一人や二人くらい居るはずだ。というか、居て然るべきだ。
「あっ、アロイスさん。おはようございます!」
最近、自分が地下にいる時の定位置、椅子に腰掛けて店内を見回していた護衛騎士に朝の挨拶をする。相も変わらず穏やかな表情の彼はこちらを見ると、やはり穏やかな笑みを浮かべてみせた。
などと格好良く言ったはいいが、要はかなり暇そうである。毎回毎回、こちらの事情に付き合わせているが護衛の仕事をするのも嫌になったりしないのだろうか。
勝手な想像にはなってしまうが、アロイスは金で動く人物では無い。本格的に暇を持て余したら、そのままフェードアウトしてしまうのではないだろうか。
「おはよう。今日は随分と早くから地下に籠もっていたそうだな、メヴィ。何か新しい研究でも始めたのか?」
「うーん、イアンちゃんの召喚術用アイテムを作ろうと思いまして。ほら、正式な依頼ですし」
「そうか。そういえば、そんな話も出ていたな。どうだ? 完成の目処は立ったか?」
問いに対し、メイヴィスは首を横に振った。
「それが久しぶりに行き詰まっていまして。構想自体はあるんですけど……割と致命的な問題もある状況ですね」
「珍しいな。お前の知恵と知識を絞っても解決しない問題なのか?」
「はい、こればっかりは。私には召喚術の知識が微塵も無いので、原理もよく分からないんですよね」
「それは理解する必要があるものか?」
「出し入れする、つまりはアイテムのエンジン部分の構造が分からない感じです」
「成る程、致命的だな」
錬金術の知識など欠片も無いはずのアロイスは、やはり聡い人物だ。言葉を変えればすぐに理解を示し、深く頷く。
「毎度役に立てなくて済まないが、俺も流石に召喚術は使わないな。悪い」
「いえいえ! アロイスさんには、いつもお世話になっていますから!」
「俺が召喚術について伝えられる事があるとすれば――そうだな、召喚獣との戦闘ぐらいだな。やはり、力にはなれないようだ」
そういえば、騎士なのだから召喚獣と相対する時も生身なのか。聞けば聞く程、騎士とは人間を辞めた人間が多い。
「――えーっと、錬金術には全く関係無いですけど、ちなみにどうやって生身で召喚獣を相手にするんですか? 例えば、キメラとか。もう私ではキメラが出て来た時点で対抗出来ないので呆気なく餌になる他無いですけど」
自分自身とキメラが対峙している瞬間を思い浮かべる。凶暴な獅子の頭に虎の身体、尾は蛇になっている合成獣。魔法生物だからか、魔法の通りは悪い。というか、自分の魔法ではあの巨体を押し潰せるものがない。
想像の翼を広げていると、アロイスが事も無げに応じた。
「まずは前足や後ろ足などの末端部を潰す。その後、届く範囲に落ちて来た頭を潰すだけだな。とはいえ、相手は生き物。立ち止まってくれている訳ではないから、後は経験則で動きを読み切る事になるが」
「あっ、私にはどう足掻いてもどうしようもないやつですね。キメラって獣だから、走って逃げても無駄でしょうし」
「召喚獣と戦う予定でもあるのか? 確かに、魔道士が1人で相手をするには難しいかもしれないな」
難しいというか、大抵の場合は無理だ。魔法は間髪を入れず撃てるものではない。威力を削って、即時発動出来るものも世の中にはあるがキメラには通らない魔法と成り果ててしまう事だろう。
やはり、魔道職でキメラに対抗する為には同じく召喚術を使用するしか無いようだ。
フィリップの『常に夜の館』。
イアンの『召喚獣を簡単に召喚出来るアイテム』。
自由研究以外の研究が目白押し状態。このままでは仕事だけがどんどん増えて積み重なっていくだけだ。どうにか先に依頼をこなしてしまわなければ。
しかも、フィリップに至ってはヴァレンディアへ来た目的そのもの。流石に最近は遊びすぎているし、そろそろ真面目に依頼の一つでもこなすべきだろう。尤も、その依頼もすぐに終わるとは限らないのだが。
――フィリップさんの依頼を済ませてしまうと、ヴァレンディアにいる意味が無くなっちゃうな……。先にイアンの依頼をやろう。
心中で一人呟き、空っぽの錬金釜に目を落とす。
順序を決めたものの、一つ致命的な問題があった。
イアンの注文は召喚術に関するもの。魔法界隈の中でも錬金術の次くらいにマニアックな部門で、そもそもが集団戦法を得意とする魔道士にとってあまり意味を成さない魔法。それこそが召喚術だ。
前置きはこれくらいにして。
何が問題なのかと言うと――メイヴィス自身、召喚術は囓った事すらなく、当然使えるはずも無い上に原理すら不明という事だ。
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分からない問題を自分で幾ら悩もうが同じ。早々にそう判断をしたメイヴィスは、仕方なく工房を出て1階の店内へ戻って来た。
幸い、ここは魔道士の国。
これだけ魔道士がいれば、召喚術を使える人物の一人や二人くらい居るはずだ。というか、居て然るべきだ。
「あっ、アロイスさん。おはようございます!」
最近、自分が地下にいる時の定位置、椅子に腰掛けて店内を見回していた護衛騎士に朝の挨拶をする。相も変わらず穏やかな表情の彼はこちらを見ると、やはり穏やかな笑みを浮かべてみせた。
などと格好良く言ったはいいが、要はかなり暇そうである。毎回毎回、こちらの事情に付き合わせているが護衛の仕事をするのも嫌になったりしないのだろうか。
勝手な想像にはなってしまうが、アロイスは金で動く人物では無い。本格的に暇を持て余したら、そのままフェードアウトしてしまうのではないだろうか。
「おはよう。今日は随分と早くから地下に籠もっていたそうだな、メヴィ。何か新しい研究でも始めたのか?」
「うーん、イアンちゃんの召喚術用アイテムを作ろうと思いまして。ほら、正式な依頼ですし」
「そうか。そういえば、そんな話も出ていたな。どうだ? 完成の目処は立ったか?」
問いに対し、メイヴィスは首を横に振った。
「それが久しぶりに行き詰まっていまして。構想自体はあるんですけど……割と致命的な問題もある状況ですね」
「珍しいな。お前の知恵と知識を絞っても解決しない問題なのか?」
「はい、こればっかりは。私には召喚術の知識が微塵も無いので、原理もよく分からないんですよね」
「それは理解する必要があるものか?」
「出し入れする、つまりはアイテムのエンジン部分の構造が分からない感じです」
「成る程、致命的だな」
錬金術の知識など欠片も無いはずのアロイスは、やはり聡い人物だ。言葉を変えればすぐに理解を示し、深く頷く。
「毎度役に立てなくて済まないが、俺も流石に召喚術は使わないな。悪い」
「いえいえ! アロイスさんには、いつもお世話になっていますから!」
「俺が召喚術について伝えられる事があるとすれば――そうだな、召喚獣との戦闘ぐらいだな。やはり、力にはなれないようだ」
そういえば、騎士なのだから召喚獣と相対する時も生身なのか。聞けば聞く程、騎士とは人間を辞めた人間が多い。
「――えーっと、錬金術には全く関係無いですけど、ちなみにどうやって生身で召喚獣を相手にするんですか? 例えば、キメラとか。もう私ではキメラが出て来た時点で対抗出来ないので呆気なく餌になる他無いですけど」
自分自身とキメラが対峙している瞬間を思い浮かべる。凶暴な獅子の頭に虎の身体、尾は蛇になっている合成獣。魔法生物だからか、魔法の通りは悪い。というか、自分の魔法ではあの巨体を押し潰せるものがない。
想像の翼を広げていると、アロイスが事も無げに応じた。
「まずは前足や後ろ足などの末端部を潰す。その後、届く範囲に落ちて来た頭を潰すだけだな。とはいえ、相手は生き物。立ち止まってくれている訳ではないから、後は経験則で動きを読み切る事になるが」
「あっ、私にはどう足掻いてもどうしようもないやつですね。キメラって獣だから、走って逃げても無駄でしょうし」
「召喚獣と戦う予定でもあるのか? 確かに、魔道士が1人で相手をするには難しいかもしれないな」
難しいというか、大抵の場合は無理だ。魔法は間髪を入れず撃てるものではない。威力を削って、即時発動出来るものも世の中にはあるがキメラには通らない魔法と成り果ててしまう事だろう。
やはり、魔道職でキメラに対抗する為には同じく召喚術を使用するしか無いようだ。
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