女剣士の道は険しい?

星野 夜空

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本編

事情把握.1

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 そもそもドーレが私に引っかかってきたのは、何も私が男子しかいないはずの攻撃系統寮に何故いるか、だけじゃない。私がいることによって婚約者の精神面メンタルを気にしたがゆえだ。後で知ったことだけど。
 でもドーレはあっさり負けた。理由は後述するとして、以来彼はちょくちょく絡んでくるようになってきたのだ。側から見たら婚約者がいるのにと思うだろうけど──実際相談を受け始めた当初の私もそれを指摘した──絶対人目がある場所でしか話しかけてこなかったし、話す内容がその婚約者についてお悩み恋愛相談だ。近くで話を聞こうと側耳を立てていた人から、逆に私に対して励ましてくるほどの、ね。
 つまるところ、あいつの話は九割九分がリンの話しかなかった。残り一分は一番最初に食堂で話しかけてきたあれしかない。
 さて、肝心の相談内容はというと、ご存知リンの家事情と、それに付随する家督関連、及びドーレ自身の問題についてだ。
 と、ここまでリンに説明したところで待ったがかけられた。

「ドーレが貴方に喧嘩を売ったというの? その理由が私で、その後の話す内容も全部私なの?」
「うん、偽りなく」

 信じられないみたいな顔しないでよ。話してて私もげんなりするから。これから。

「ドーレはね、リンの前だと素直に言葉が言えないんだって。だからどうしたら良いのかって、そういうことが多かったんだけどさ。何かどうも話を聞いてたら二人の話に食い違い? 齟齬? があるように思えて、よくよく聞いたら二人とも、ちゃんと話し合ってなかったみたいだから」
「話し合ってない?」
「んー、と。自分の気持ちを話すその前にさ、認識の違いがありそうだと思って」

 リンの話を聞いてやっぱりと思ったのは内緒。
 まず、ドーレは領主に関して魅力を感じてない。その過酷さを歳の離れた兄への教育の様子と、様々な可能性の想定から自身も受けた経験から嫌だと思ってる。どちらかというと体を動かしていたい彼は本人の魔力適性も踏まえて軍関連に所属したいらしい。
 その為の体力がドーレは圧倒的に足りない。その代わりといったらおかしいかもしれないけど、授業で行った事務仕事にあたる書類整備作業や予算確認とその為の計算といった方が得意、な様に見受けられる。多分ここはそれまでの経験が成せる技だろう。これは本人からの受け売り。
 なお体力面に関しては系統や男女関係なく貴族事情あるあるらしい。魔力や魔法のコントロールは必須だから仕方ないとして、普通に稽古して下手に怪我をさせたら教師側に罰がくるかもしれないから、とのこと。女性の場合は特に必要もないから尚更ね。
 最近の彼を始め、貴族出身と思われる人らを見てるとそう思う。継続は力なりとはよく言ったもので、最近ようやく私に負けることが少なくなってきた。男女差を魔法で埋めてるからそこは言い訳させないし出来ない。
 他系統ならともかく、攻撃は庶民と貴族で体つきが明らかに違うからどうしても分かっちゃうんだよね。
 閑話休題。何が言いたいかというと、彼に現場職は厳しい、ということをリンは知らない。それどころか彼が軍の仕事をしたいことすら聞かされてないのだ。
 他でもないドーレが彼女に話せてないから。
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