わたし “へん” なんです

堀尾麗央

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わたしのSM 事始め

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 わたし 杏果 キョウカとご主人様 円城 渡 様は、36歳もの 歳の差のある だけで世間からは後ろ指を刺されるカップルです。
 ご主人様の名はエンジョウ ワタルと お読みするのですが、わたしには どうしても あのフランス人の作家“マルキ•ド•○○”大先生を連想してしまうのですが、わたし“へん”なのでしょうか?
 わたしの苗字をこれまで名乗っていませんでしたよね。“馬薗”と書いて“ウマゾノ”と読みます。もう おわかりですよね、気づかれましたよね!はい、“マゾのキョウカ”なのです。名前が先か、性癖が先かは 定かではありませんが…
 小学生3、4年生のころから わたしは、テレビでお姫様が悪者に捕まって縄で縛られているシーンを妙にドキドキしながら見ていたことを覚えています。もちろん、わたしが誘拐されて、犯人に縛り上げられるなんてことは、現実には起こるはずもありませんでした。まして 中学校から女子校だったこともあり、男の子と接する機会もほとんどなく、恋愛に対するより 縛られてみたいという あこがれが強い “へん” な女の子でした。
 高校生になったころに SMというものがあることを知り、コンピュータ操作を覚えてからはSMサイトを渡り歩くことになりました。モニターの中で 縛られ、責められている女性の姿が艶かしく、何もかもを与えられることでしか得られない、だからこそ欲する目が堪らなく美しく思えました。そしていつしか、その女の人に自分を重ねるようになりました。SMサイトを見ているうちに自然と指が自分の敏感なところを触るようになり、その興奮と快感を知ってしまいました。はじめのうちは 月に数回でしたが、だんだんその頻度が短くなって大学受験勉強中は、ほぼ毎日 自分のベットで夜にオナニーをすることが睡眠前の日課となってしまいました。
 そんな思いを持ちつつ、見るだけだった私は初めてSMを体験したのはそれからだいぶ時間が経った成人式が終わってからのことでした。
 ネットで探し当てた遠い地域のSMバーというところに足を踏み入れました。そこでお会いしたご主人様と何度かメールのやり取りを行ってから、ようやく調教していていただくことができました。初めての日、ご主人様の前で正座をし、ご挨拶を教えて頂き、体のチェックをして頂くとき、体に触れられじっとしていられず、お仕置きとして 乳首に洗濯バサミ…されたいと思っていたのに いざとなれば怖気付くわたし。摘まれそうになった瞬間に体を引いてしまいました。自分から来なさいとご主人様は待っていらっしゃいました。そのまま縛られ、電マで責められました。今まで体験したことのないような感覚で、痛いのか気持ち良いのか…頭が真っ白になり、自分の知っている快感とは全然違いました。
 それがわたしのSM初体験です。
 その後も数年間  年に数度は調教していただきました。でも、遠距離であり、わたしが留学で2年間ほど日本を離れたこともあって、縁遠くなってしまいました。わたしにマゾとしての楽しさを教えてくれたのは確かにこのご主人様でした。でも“調教” と書いたように、そこには先生と生徒 とか 師匠と弟子という上下関係があったことは確かで、どこかで「これは違う…」と思えたのも縁遠くなった一つの要因だったと思います。
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