ちっともファンタジーじゃない僕等の旅〜お家帰りたい〜

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1章 王国

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「わっ、ぶっ、冷たッ!!」。

水面に胴体を叩きつけ体重で押し出された水が飛沫となって鮮やかに煌めき虹が掛かる。

噴水だ、まごうこと無き噴水だ。嫌がらせだろうか、嫌がらせだろう。手間を掛けられたから、少し位イタズラしてやろうとか思ったのだろう。はっはっは、可愛い奴め、俺は大人だから、こんな事笑って許してやろう、はっはっはっは……


「──ぶち殺すぞ、コノヤロウ」。

アブミは普通にキレた。

    1 

びしょ濡れになったジャージを絞っていると目の前をトカゲ顔の四足獣が引く馬車的な乗り物が通り過ぎる。

やれやれ本当に来てしまった様だ。アブミは天を見上げてため息を一つ。

何時までも干渉に浸っている場合では無い事は重々理解している。しているとはいえ、ニワカには信じ難い状況である事は言わずもがなであった。

道行く人々は男に奇異の横目をチラつかせた。金や朱色のカラフルな頭髪、宗教チックでド派手な服装、「ジャージ」を羽織ってびしょ濡れなアブミの事が気になる事は必然と言えば必然かもしれない。

身につけてるものはウニクロで安売りしていたそこそこデザイン良さげな(諸説あり)ジャージが一枚、長年使いふるしたせいか肩にかけて毛玉がついている。あとは充電が切れそうなスマートフォン、に財布(千円札六枚と小銭が少々)後は……ん、何だ、これは…?

ポケットにあるを弄った。

── ガムの包み紙とレシートか ──

何か、すごい物が出てくると思っただろ、残念レシィィトですぅ。

現実はそんなに甘く無いようで【初期装備】だの【小さな小袋に入った小金】だの、そんなもの無いようだ。
そして必然的にジュピルから受け取った『恩寵(仮)』は物では無い事が分かった。

物で無いなら、【無限の魔力】とか【圧倒的な剣の才】とか、特殊能力的な何かなのだろうか。ジュピルあいつの『クリスマスの時の母さんのノリ的な何か』のせいで分からず仕舞いだ。

【生涯遊んで暮らせる金】とかもらっておけば良かったと後悔をした。

テンプレート的に行けば『美少女と奇跡的な出会い』みたいなの起きて第一イベントが発生するとかが主だが実際の所どうなのだろう。

意味有りげに又、意味深長にその場に立ち尽くす。意味は無い、信念も無い。只何かを抱えているような、ドラマが生まれるような、そんな顔で。


───何も起きなかった、というか起きる訳がなかった。美少女どころか一般人ですらなんか避けられている、辛い。

さて、当分の目標は衣食住という事になるだろうが、衣は取り敢えず良いとして『食』と『住』に関しては只のこれっぽっちも宛が無い。

「へい、ニィちゃん200コルンだよ!!」

アブミは徐ろに千円札を取り出し八百屋の親父の腕にぽんっと置いた。

「誰だよ、このハードボイルドなおっさんは。こっちは忙しいンだよ!!冷やかしなら帰ってくれ」。

───と、まぁこんな訳で六千円と言う十代には中々の大金もこちらではイカしたおっさんがプリントされた只の紙になる訳だ。

右も左もわからない面白ワールド、ノーマネーでノージョブ、大剣抱えたウルフマンにロケットモヒカンのトゲトゲ肩パットが街を出入り……


───あれ、これ以外と俺やばくね?






    
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