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【闇の国の過保護君】
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、ゆーくん!あたし砂場で遊んでくる!」
「ダメダメ、伊織ちゃん!砂場はなにがいるかわからないし、危ないからダメだよ。」
幼稚園でも、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、ゆーくん!あたしみんなとドッチボールしてくるね!」
「ダメダメ、伊織ちゃん!ドッチボールなんて危ないからダメだよ。」
小学校でも、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、ゆーくん。あたしコンビニに行ってくるからね。」
「ダメダメ、伊織。コンビニなんて危ないところ行ったら危ないよ。」
中学校でも、
いつでも彼は、過保護であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇ!伊織!今日こそご飯でも行こうよ!」
「そそそそうだね!今日こそは!!」
チラッと時計を見ると17時を回っていた。
つい先ほどまで教室は生徒であふれていたが、現在は数人しか残っておらず、いつしか放課後の雰囲気へと変わっていた。
私、花園伊織はキョロキョロと廊下を見渡し安堵した。
「今日はいけるかも…。」
速やかにバックへと荷物を詰め込み、帰り支度を整える。
「花梨ちゃん!はやくいこう!」
教室のドアへと手を伸ばしたその時…、
“ガラッ”
私の一番恐れており、一番会いたくない人物が反対からドアを開けたのだった。
「伊織。遅すぎる。下駄箱で待っていたが、ここまで迎えに来たよ。」
「あっ。」
あまりのタイミングに一瞬時が止まり、息をすることを忘れた。
「ゆーくん。授業お疲れさま…。」
「帰るよ。」
そう言い残すと高身長の男は廊下を進んでいった。
「花梨ちゃん…ごめん…今日も先に帰るね…。」
「今日も王子のお迎えか~しょうがないね…また誘うよ!」
「…王子じゃなくてどちらかというと…」
悪魔だけどね。と言い残し伊織は教室を後にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
下駄箱にはまだ多くの生徒が残っており、友達とはしゃいでいる人やカップルでイチャイチャしている人たちであふれていた。
(みんな楽しそうだな…。)
私だって青春を謳歌したいと思う一人であったが、それを許さない人物が目の前にはいた。
甲賀 夢統(こうが ゆめと)、私の幼馴染である。
産まれてからお隣同士ということもあり、毎日顔を合わせて17年。
気が付けば17歳へとなっていた。
夢統こと、“ゆーくん”は私の言うこと言うことが気に入らないらしくことごとく、
「ダメだ。」と冷たく言うのであった。
昔はそれでもかわいいものであったが、お互いもう17歳である。
そろそろ私も放課後にカフェやカラオケにも行きたい。
それに年頃の乙女である。彼氏を作ってデートだってしてみたいのであった。
「ゆーくん…心配してくれるのはわかるけど…私も一人で帰れるし…」
「は?」
ゆーくんは、なにがいいたいの?と睨んでくる。
それでも今日の私は一味違うのであった。
「一緒に帰りたくないっていってるの!」
周りの生徒が盛り上がっていることが背中を押し、いつもは言わないことを行ってみた。
この歳になってまで幼馴染と帰るなんて少し変わっていると思う。
(私は間違ったことは思ってない!)
「理由は?」
いつも片っ端からダメと言われ続けていたため、理由を聞かれて驚いた。
「友達とカフェにいったり…カラオケに行ったり…私にもやりたいことが…「へぇ~。」」
途中まで言いかけて言葉は夢統によってかき消された。
「伊織。なにもわかってない。世間は伊織が思っているよりずっと危ないんだよ。」
そしてそこからは彼の“世間がいかに危ないか”についての説教が始まったのであった。
(またこうなってしまった…)
伊織は夢統の話を右から左へと聞き流していた。
(この話、100回は聞いたよ…。別にもう17歳だし大丈夫なのに…。)
そう、私の幼馴染は極度の心配性…“過保護”であった。
私の幼馴染が過保護の理由はわかっている。
家の環境上、仕方がないことだとも分かっている。
しかし、私はそれでも友達と出かけたいですし、彼氏もほしいのです。
幼馴染の家は、代々闇の組織の長をしておりまして
“世間は危ない”と教え込まれてきたのです。
このことは昔から有名でしたし、その幼馴染から寵愛を私が受けていることも周りには有名な話のようなので、異性から絡まれることなんて一度もないのが私の人生でした。
私は普通なのに、周りの環境のせいで避けられ、恐れられることも数多く経験しました。
「おい、伊織。先ほどから一点を見つめて、なにを考えている。」
「別に…。今日の夕飯は何かなって思ってるだけ…。」
こんな過保護な幼馴染ですが、別に嫌いなわけではないですよ。
気付いたときから毎日一緒にいますし、家族のようなものなのです。
「今日の夜行くね。」
「えっ。なんで?!」
「今日の夜、親父の客人が多いから。」
「はいはい…お母さんには言っとくよ。」
隣に住んでいる夢統は伊織の家によく遊びに来ていた。
親同士も仲がいいため夕飯を食べに来ることも頻繁である。
「今日の夕飯なんだろうね~!!」
「伊織はなんでもおいしそうに食べるからね。見ていて楽しいよ。」
フッと隣で夢統が口元を緩ませる。
(ゆーくんって普通にしていればかっこいいのに…なんで彼女をつくらないのかなぁ…。)
「どうしたの?どっからか殺気でも感じた?」
「…。いやそういうところが問題なんだろうな…。」
その後、伊織は一人で納得したのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さん~ただいま~。今日ゆーくんも夕飯ここで食べるって!!」
家に帰ると遠くからいい匂いがしてきた。
どうやら今夜はカレーらしい。
「あらっ!2人ともおかえりなさい~!!」
奥からスリッパの音が聞こえ、母親が顔を出した。
「幸さん、いつもお邪魔してすみません。」
「いいのよ~ゆーくんは家族みたいなものでしょ~!!」
「そんな…幸さん、伊織と僕が夫婦に見えるだなんて…。」
(…。そんなことは一言も言われてないよ。)
と心でツッコミを入れるが、多く関わるとすごく疲労がたまるためスルーをする。
「お母さん。お腹すいちゃった!!早くご飯にしよ~!」
私はさっさと部屋へと向かうのであった。
「ゆーくん、伊織は学校ではうまくできてるかしら?」
「幸さん、心配はいりませんよ。僕が付いてますから。」
そのゆーくんのおかげで彼氏もできないし、遊びにも行けないのに…
と伊織は唇を尖がらせた。
「ゆーくん王子様みたいね~!!これからも伊織をよろしくね~!!」
本日2度目ですが、王子様ではなくて、どちらかというと悪魔様ですがね。
と再びツッコミを入れた。
この後おいしくカレーを食べた2人はリビングでテレビを見ていた。
「あっ!!こないだ伊織がかっこいいって言っていた俳優さんがテレビに出ているわよ~!」
「へぇ~かっこいい俳優ね~」
「いやっ…そそそんなこと言ってたっけ?!」
伊織は隣からの強い視線を浴びていた。
(なんでこんなに睨まれてるの?!お母さん余計な事言わないでくれ~~!)
心の叫びもむなしく母親は続けた。
「結婚したいとか、抱きつきたいとか言ってたじゃない~!」
「…結婚?抱き着きたい?」
その後の夢統の言葉は意外なものであった。
「伊織は、この男のどこが好きなの?」
「えっと…茶色の髪の毛とか!細いけど筋肉のある体系とか!!かな…。」
“どこが”とピンポイントに聞かれてしまうと、
“どこが”というわけではなく、当たり障りのない答えを返した。
「ふーん…そうなんだ。」
夢統はそう言うとテレビを真剣に見始めたのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「幸さん、今日はごちそうさまでした。」
「あらま、ゆーくんもう帰っちゃうの?」
伊織母は残念そうに玄関まで夢統を送り出した。
「また、学校でね。」
伊織も後から追いかける。
「いいか、伊織。お風呂ではゆっくり温まること。あと夜更かしはし過ぎないように。」
「ふふふ。まるでお母さんみたいねぇ~。」
伊織母はニコニコしているが
いやいや母親より細かいよ…と伊織は心の中で突っ込んだ。
「わかってるよ。じゃあね。」
“バタンッ”
扉が閉まってしばらくして、外が何やら騒がしかったが、いつもの事なので気にしないでいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
“ガラッ”
家の大きな門を開けると
「若!おかえりなさいませ!」
(家はいつも騒がしくて苦手だ。)
夢統はため息をついたのであった。
「ヤス、いるか?」
「およびですか?」
玄関から身長190㎝を超すヤスと呼ばれたその男は出ていく。
「ちょっと頼まれごとをしてくれないか。」
「なんでしょう?」
「染粉を…。」
「染粉ですか?」
「茶色に髪の毛を染めたくてな。茶色の染粉を一通り買ってきてくれねぇか?」
「わかりました。すぐに行ってきますよ。」
誰か、車を回してくれ。
そういうとヤスは何人かと出かけて行った。
「ヤスさん。若は急にどうしたんでしょうね。」
「たぶん伊織ちゃんの影響だろうけどな。」
「今まで黒髪だったのに。」
ヤスは昔の話を思い出して少し懐かしくなる。
「あれもな、昔に伊織ちゃんが好きだったアニメのキャラクターが黒髪だからって理由だ。」
「…若はまっすぐだな。」
「あぁ。残念なほど一途でまっすぐだ。」
車内はその後も終始夢統の話で盛り上がる。
「あの2人、ひっつけばいいのにな。」
「…いやぁ、伊織ちゃんは鈍感だからな。」
「確かにそうですね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
“くしゅんっ”
「あら、くしゃみ?風邪かしら。伊織、大丈夫?」
そのころ伊織は急な寒気とくしゃみがしばらく続いたのであった。
「大丈夫。なんだか嫌な予感はしてるけど、風邪とかじゃないよ。今日は少し早めに寝るね。」
そう伝えると伊織は嫌な予感がプンプンしたまま、少し早めに布団へ入ったのであった。
(明日は平和な一日になりますように。)
そして伊織はあっという間に夢の世界へと引き込まれていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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「ねぇねぇ、ゆーくん!あたし砂場で遊んでくる!」
「ダメダメ、伊織ちゃん!砂場はなにがいるかわからないし、危ないからダメだよ。」
幼稚園でも、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、ゆーくん!あたしみんなとドッチボールしてくるね!」
「ダメダメ、伊織ちゃん!ドッチボールなんて危ないからダメだよ。」
小学校でも、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、ゆーくん。あたしコンビニに行ってくるからね。」
「ダメダメ、伊織。コンビニなんて危ないところ行ったら危ないよ。」
中学校でも、
いつでも彼は、過保護であった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇ!伊織!今日こそご飯でも行こうよ!」
「そそそそうだね!今日こそは!!」
チラッと時計を見ると17時を回っていた。
つい先ほどまで教室は生徒であふれていたが、現在は数人しか残っておらず、いつしか放課後の雰囲気へと変わっていた。
私、花園伊織はキョロキョロと廊下を見渡し安堵した。
「今日はいけるかも…。」
速やかにバックへと荷物を詰め込み、帰り支度を整える。
「花梨ちゃん!はやくいこう!」
教室のドアへと手を伸ばしたその時…、
“ガラッ”
私の一番恐れており、一番会いたくない人物が反対からドアを開けたのだった。
「伊織。遅すぎる。下駄箱で待っていたが、ここまで迎えに来たよ。」
「あっ。」
あまりのタイミングに一瞬時が止まり、息をすることを忘れた。
「ゆーくん。授業お疲れさま…。」
「帰るよ。」
そう言い残すと高身長の男は廊下を進んでいった。
「花梨ちゃん…ごめん…今日も先に帰るね…。」
「今日も王子のお迎えか~しょうがないね…また誘うよ!」
「…王子じゃなくてどちらかというと…」
悪魔だけどね。と言い残し伊織は教室を後にした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
下駄箱にはまだ多くの生徒が残っており、友達とはしゃいでいる人やカップルでイチャイチャしている人たちであふれていた。
(みんな楽しそうだな…。)
私だって青春を謳歌したいと思う一人であったが、それを許さない人物が目の前にはいた。
甲賀 夢統(こうが ゆめと)、私の幼馴染である。
産まれてからお隣同士ということもあり、毎日顔を合わせて17年。
気が付けば17歳へとなっていた。
夢統こと、“ゆーくん”は私の言うこと言うことが気に入らないらしくことごとく、
「ダメだ。」と冷たく言うのであった。
昔はそれでもかわいいものであったが、お互いもう17歳である。
そろそろ私も放課後にカフェやカラオケにも行きたい。
それに年頃の乙女である。彼氏を作ってデートだってしてみたいのであった。
「ゆーくん…心配してくれるのはわかるけど…私も一人で帰れるし…」
「は?」
ゆーくんは、なにがいいたいの?と睨んでくる。
それでも今日の私は一味違うのであった。
「一緒に帰りたくないっていってるの!」
周りの生徒が盛り上がっていることが背中を押し、いつもは言わないことを行ってみた。
この歳になってまで幼馴染と帰るなんて少し変わっていると思う。
(私は間違ったことは思ってない!)
「理由は?」
いつも片っ端からダメと言われ続けていたため、理由を聞かれて驚いた。
「友達とカフェにいったり…カラオケに行ったり…私にもやりたいことが…「へぇ~。」」
途中まで言いかけて言葉は夢統によってかき消された。
「伊織。なにもわかってない。世間は伊織が思っているよりずっと危ないんだよ。」
そしてそこからは彼の“世間がいかに危ないか”についての説教が始まったのであった。
(またこうなってしまった…)
伊織は夢統の話を右から左へと聞き流していた。
(この話、100回は聞いたよ…。別にもう17歳だし大丈夫なのに…。)
そう、私の幼馴染は極度の心配性…“過保護”であった。
私の幼馴染が過保護の理由はわかっている。
家の環境上、仕方がないことだとも分かっている。
しかし、私はそれでも友達と出かけたいですし、彼氏もほしいのです。
幼馴染の家は、代々闇の組織の長をしておりまして
“世間は危ない”と教え込まれてきたのです。
このことは昔から有名でしたし、その幼馴染から寵愛を私が受けていることも周りには有名な話のようなので、異性から絡まれることなんて一度もないのが私の人生でした。
私は普通なのに、周りの環境のせいで避けられ、恐れられることも数多く経験しました。
「おい、伊織。先ほどから一点を見つめて、なにを考えている。」
「別に…。今日の夕飯は何かなって思ってるだけ…。」
こんな過保護な幼馴染ですが、別に嫌いなわけではないですよ。
気付いたときから毎日一緒にいますし、家族のようなものなのです。
「今日の夜行くね。」
「えっ。なんで?!」
「今日の夜、親父の客人が多いから。」
「はいはい…お母さんには言っとくよ。」
隣に住んでいる夢統は伊織の家によく遊びに来ていた。
親同士も仲がいいため夕飯を食べに来ることも頻繁である。
「今日の夕飯なんだろうね~!!」
「伊織はなんでもおいしそうに食べるからね。見ていて楽しいよ。」
フッと隣で夢統が口元を緩ませる。
(ゆーくんって普通にしていればかっこいいのに…なんで彼女をつくらないのかなぁ…。)
「どうしたの?どっからか殺気でも感じた?」
「…。いやそういうところが問題なんだろうな…。」
その後、伊織は一人で納得したのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お母さん~ただいま~。今日ゆーくんも夕飯ここで食べるって!!」
家に帰ると遠くからいい匂いがしてきた。
どうやら今夜はカレーらしい。
「あらっ!2人ともおかえりなさい~!!」
奥からスリッパの音が聞こえ、母親が顔を出した。
「幸さん、いつもお邪魔してすみません。」
「いいのよ~ゆーくんは家族みたいなものでしょ~!!」
「そんな…幸さん、伊織と僕が夫婦に見えるだなんて…。」
(…。そんなことは一言も言われてないよ。)
と心でツッコミを入れるが、多く関わるとすごく疲労がたまるためスルーをする。
「お母さん。お腹すいちゃった!!早くご飯にしよ~!」
私はさっさと部屋へと向かうのであった。
「ゆーくん、伊織は学校ではうまくできてるかしら?」
「幸さん、心配はいりませんよ。僕が付いてますから。」
そのゆーくんのおかげで彼氏もできないし、遊びにも行けないのに…
と伊織は唇を尖がらせた。
「ゆーくん王子様みたいね~!!これからも伊織をよろしくね~!!」
本日2度目ですが、王子様ではなくて、どちらかというと悪魔様ですがね。
と再びツッコミを入れた。
この後おいしくカレーを食べた2人はリビングでテレビを見ていた。
「あっ!!こないだ伊織がかっこいいって言っていた俳優さんがテレビに出ているわよ~!」
「へぇ~かっこいい俳優ね~」
「いやっ…そそそんなこと言ってたっけ?!」
伊織は隣からの強い視線を浴びていた。
(なんでこんなに睨まれてるの?!お母さん余計な事言わないでくれ~~!)
心の叫びもむなしく母親は続けた。
「結婚したいとか、抱きつきたいとか言ってたじゃない~!」
「…結婚?抱き着きたい?」
その後の夢統の言葉は意外なものであった。
「伊織は、この男のどこが好きなの?」
「えっと…茶色の髪の毛とか!細いけど筋肉のある体系とか!!かな…。」
“どこが”とピンポイントに聞かれてしまうと、
“どこが”というわけではなく、当たり障りのない答えを返した。
「ふーん…そうなんだ。」
夢統はそう言うとテレビを真剣に見始めたのであった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「幸さん、今日はごちそうさまでした。」
「あらま、ゆーくんもう帰っちゃうの?」
伊織母は残念そうに玄関まで夢統を送り出した。
「また、学校でね。」
伊織も後から追いかける。
「いいか、伊織。お風呂ではゆっくり温まること。あと夜更かしはし過ぎないように。」
「ふふふ。まるでお母さんみたいねぇ~。」
伊織母はニコニコしているが
いやいや母親より細かいよ…と伊織は心の中で突っ込んだ。
「わかってるよ。じゃあね。」
“バタンッ”
扉が閉まってしばらくして、外が何やら騒がしかったが、いつもの事なので気にしないでいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
“ガラッ”
家の大きな門を開けると
「若!おかえりなさいませ!」
(家はいつも騒がしくて苦手だ。)
夢統はため息をついたのであった。
「ヤス、いるか?」
「およびですか?」
玄関から身長190㎝を超すヤスと呼ばれたその男は出ていく。
「ちょっと頼まれごとをしてくれないか。」
「なんでしょう?」
「染粉を…。」
「染粉ですか?」
「茶色に髪の毛を染めたくてな。茶色の染粉を一通り買ってきてくれねぇか?」
「わかりました。すぐに行ってきますよ。」
誰か、車を回してくれ。
そういうとヤスは何人かと出かけて行った。
「ヤスさん。若は急にどうしたんでしょうね。」
「たぶん伊織ちゃんの影響だろうけどな。」
「今まで黒髪だったのに。」
ヤスは昔の話を思い出して少し懐かしくなる。
「あれもな、昔に伊織ちゃんが好きだったアニメのキャラクターが黒髪だからって理由だ。」
「…若はまっすぐだな。」
「あぁ。残念なほど一途でまっすぐだ。」
車内はその後も終始夢統の話で盛り上がる。
「あの2人、ひっつけばいいのにな。」
「…いやぁ、伊織ちゃんは鈍感だからな。」
「確かにそうですね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
“くしゅんっ”
「あら、くしゃみ?風邪かしら。伊織、大丈夫?」
そのころ伊織は急な寒気とくしゃみがしばらく続いたのであった。
「大丈夫。なんだか嫌な予感はしてるけど、風邪とかじゃないよ。今日は少し早めに寝るね。」
そう伝えると伊織は嫌な予感がプンプンしたまま、少し早めに布団へ入ったのであった。
(明日は平和な一日になりますように。)
そして伊織はあっという間に夢の世界へと引き込まれていった。
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