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第2話 転職
しおりを挟む突如夜空に光輝く魔法陣が現れ、巨大な塔がそびえ立ち、異世界と地球がつながったあの日から3年ー…、俺は32歳になっていた。
巨大な塔は"ゲート"と呼ばれ、ここ数年急加速に異世界との交流が進んでいた。
例えば交通網。
向こうの世界では魔法があり、転移魔法陣による瞬間移動が存在した。日本にも多くはないが各都道府県に1~3箇所、転移魔法陣が設置されたワープステーションが作られた。
とはいえ、まだ国営で運営されている異世界技術ということもあり、高額で誰もが使えるわけではない。民営化されて設置箇所が増えていけば便利で安価な移動手段としてさらに普及していくだろう。数年前まで営業マンとして各地におもむいていた俺としては早めにお願いしたいところである。
地球ほどではないがワープステーションが貴重なのは異世界でも同じらしく、向こうでの主な移動手段は馬車だそうだ。なんというか、魔法世界では魔法の有無により技術レベルに差がありすぎる気がする。
地球側はワープステーション技術と交換で自動車やバイクを提供した。それに伴い道の舗装技術も提供され、異世界にコンクリート道路が誕生したのである。
「長谷川さーん!おはようございます」
「おはよう三田さん」
出社に向かう俺に朝から元気よく声をかけてきたのは三田オリヴィアさん。日本人の父とイギリス人の母のハーフだそうだ。今働いている会社の先輩である。
「今日は案件が3件、男性1件、女性2件です。頑張ってください長谷川さん!」
「はい!三田さんは相談所回りでしたっけ?」
「はい~!条件に合う方がいらっしゃるので詳しいお話を先方に伺ってきます!」
三田さん、今日も笑顔が素敵だ。
3年前、異世界と地球がつながった日。
俺には何も起こらなかった。
魔法が使えるようになることもなく、当たり前に次の日が訪れ、状況が分からない中とりあえず出社した。
巨大な塔ができたこと以外、何の変哲もないことに世の中は安堵、困惑していた。
変わらない日々を数日過ごし、お気に入りの定食屋で昼飯を食べていた時、そのニュースが流れた。
『ーーー地球の皆さん、』
「っ……………!?!」
定食屋にいた全員が思わず固まった。
いや、多分、このニュースを見ているこの世の全員が思わず呼吸を止めただろう。
ニュースに映っていたのは青い翼の生えた、青い髪に金の瞳のお姉さんだった。コスプレなどでなはない。翼は呼吸に合わせ上下するように動き、青い髪も金の瞳も生まれてからずっとこうであったように自然に馴染んでいた。
本物だ、と誰もが感じた。
人間ではないその見た目に不気味さも感じたが、それよりもなんて美しいんだという感嘆の気持ちが大きかった。
『ーはじめまして、私は先日できた巨大な塔の向こうの世界に住む、セイレーンです』
「セイレーン…!!」
俺は思わず声を上げた。
確か美しい声で人を魅了する女性の顔を持った鳥だったか…?なるほど、目を惹きつけられる力があったのはそういう特性のせいでもあったのか。
テレビの中のセイレーンを名乗る女性は塔の先には彼女の暮らす地球とは全く違う異世界があり、なぜこのようなことが起きたか原因を探っている最中であることを述べていた。そして、地球人の俺達とは争わず、平和的に親交を深めていきたいと…。
「すごい…こんなことが…ほんとに…!!」
俺は休憩時間がとっくに過ぎていることも忘れ、そのニュースに、いやセイレーンのお姉さんに魅入っていた。
セイレーンがいるなら、エルフだっているのではないだろうか。エルフの中にはおっぱいが大きくて、清楚で、美人なそんな俺の理想の彼女もいるんじゃないか。
あの塔の先にー…!
そしてその日、俺は休憩から帰り、気づくと辞表を会社に提出していた。
その足で塔に向かい、運命的なご縁があり、現在の職に就けたわけである。
我ながらなんと突拍子もなく、思い切った行動だったことだろう。
チンッとエレベーターが開き、俺と三田さんはゲート15階で降りた。ここが俺達が働くー…
"異世界結婚相談所ファーレ"である。
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