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第3話 ドワーフ女性
しおりを挟む「えー…では、はじめまして。私はあなたの担当になりました長谷川と申します」
「よっ…よろしくお願いしマス!」
異世界結婚相談所ファーレの業務はその名の通り、婚活に悩む男女のサポートをすることである。今日1人目の相談者はドワーフの女性、マグゴックさんである。
「マグゴックさん、緊張なさらず。今日はあなたのプロフィールを作成するためにお話を聞かせてください」
ドワーフといえばファンタジー作品では欠かせない有名種族だろう。この仕事をするようになってから知ったが、向こうの世界とこちらの世界では共通する種族が多く存在することが分かった。こっちではファンタジー作品で出てくる空想上の種族だと思われていたのが…
「う、ウス…」
目の前にいる女性を見れば、これが現実であることは疑いようもない。
ドワーフの特徴は背が低く、筋肉質で屈強な体格、女性でもヒゲが生えているという説もあるがどうやらそれは違ったらしい。マグゴックさんは濃茶の長いウェーブ髪に白い肌、赤目のぱっちりお目目のとても可愛らしい女性だ。
「ドワーフ族の生活も含め、いくつか質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
マグゴックさんは首を小さく縦に振った。シャイな性格なのだろうか。こちらのドワーフのイメージでは性格も大胆で陽気、少々血の気の多い印象だったが、マグゴックさんはどうも違うようだ。
「現在はドワーフ族の里に住んでいるとのことですが、ご両親と同居でお間違いないでしょうか?」
「…ス!ワタシの族の住処は地下で、大きな洞窟を切り開いて作った。何百年の歴史があって、多くのドワーフが暮らしいてる…。ドワーフの女は基本結婚するまでは家はでれない」
婚活市場において実家暮らしはプラス要素ではない。
家事能力の低さの危惧や親から金銭的な自立ができていないことは男女ともにネックな条件になることが多い。…が、種族の掟とあらば話も変わってくるだろう。
「洞窟を切り開いた巨大なドワーフ都市ですか…!個人的にはとても興味深いです。マグゴックさんはご年齢35歳とのことですが、これは成人されているということで間違いないですか?」
「ハイ、ドワーフは14歳で成人扱いされます」
早いなドワーフの成人年齢。なお無類の酒好きで知られるドワーフだが、酒は14歳の成人より前、6歳ぐらいからみんな飲み始めるらしい。大丈夫なのだろうかそれ…。
「今まで異性との交際歴は…お一人ですか?」
「あぁ、親の決めた婚約者だ。ドワーフは基本自由恋愛が多いが…わたしはこんな性格なので心配した親が知り合いの工房の息子を紹介してきた…」
「その方とはどうしてお別れに?」
マグゴックさんはしばらく黙っていたあと、言いにくそうに話しだした。
「わたしにもとても優しくしてくれて、工房の息子だからと奢ることなく研鑽を積んでいる将来有望なお方だった…。まめにデートにも行き、奥手なワタシに合わせてゆっくりと関係を築いてくれて…」
聞いている限りだとここまでは絶賛することしかないが…このパターンはあれだな。
「…その、とあるデートでキ………………キスをする流れになったのですが……………………無理でした!!!!!!!!!」
ハイきた、生理的に無理ってやつ~ぅ。
「手をつないでいるときから違和感があったのだが、キスしようって時にはっきりと分かってしまったのです…!!え、無理って…」
「…ちなみに、その婚約者男性が無理だったのか、男性全般が無理だったのかでいうと?」
「…婚約者です。多分」
同じ男として不憫だ婚約者くん…。
「…というか、ドワーフ男性がみんな、無理かも」
「…………なるほど!」
聞く限りだとドワーフという種族はそこそこ閉鎖的な空間で暮らしており、血縁を大事にしているようにも見える。基本的に異世界のほうは種族も多く、そのほとんどが血を残すために同族婚を推奨している。さらに親の紹介だった婚約者を振ったということは、現状マグゴックさんの肩身は相当狭いだろう。
「ご両親にはマグゴックさんがドワーフ男性との婚姻が難しいことをすでにお伝え済みですか?」
「ハイ………………………………………………」
…………これは相当揉めたのだろう。
「では、マグゴックさんの理想の男性条件をお伺いしたいのですが」
人間の結婚相談所では見た目は二の次、年収や能力、内面の相性などを重視するが、ファーレでは異種族同士の婚活であることもふまえ容姿の好みも反映した紹介をさせてもらっている。
「……長身で、スレンダーで、さわやかな感じがいい。男臭くて泥臭いのはちょっと…。中性的な男性が好きだ」
「なるほど…エルフ男性のような方がお好みでしょうか?」
「!!」
確かドワーフとエルフは犬猿の仲だったはずだが…
「…………ハイ」
真っ赤なマグゴックさんの顔はとても愛らしく、初恋もまだのうぶな少女のようだ。
なるほど、確かにこれはファーレの案件だ。
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