疲れた公爵令嬢はもう寝たい〜婚約破棄？……承認しましょうか〜

話題

侍女に起こされ目を覚ます。手元の時計を見るとそれは7時を指していた。小一時間ほど寝ていたようだ。

鏡を見ると目元にははっきりとしたクマが。今日は学園がありますので軽く化粧をして隠さなければ……






ここはラルシエンス学園。7～16歳の貴族の子が集まり学ぶ場所。


…正直私は勉強は小さい頃から特別に叩き込まれてますので来る必要があるのかどうか微妙ですけどね…
まあ人と交流するということもこの学園の存在意義の一つではあるので来ますけども。

はあ、それにしても

開かれた木製の立派なドアを抜けた先、広いエントランスでふと足を止め周りを見渡すと、そこには私を遠巻きに見る生徒の群。まったくなんですか？普段から家柄のせいか自身のせいか、少し距離を取られてはいますけどなんだか今朝は様子が違うようです。どうやらなにかをしきりに囁いているのですけどうまく聞き取れませんわね…


そんなことを考えていると、一人の女子生徒がこちらへ向かって来ているのが分かった。


「あら、セレーネ様、ごきげんよう。」

今こちらへ来たのはスレイン侯爵家の令嬢、セレーネ様。
ほとんどの方はやはり公爵家ということで同学年であろうと距離を感じる中、この方だけは気軽に話せるのですよね。さっぱりしていて、貴族には珍しく必要以上にお世辞ばかりを言い連ねて中身のないような会話といったものを嫌う傾向にあります。私もどちらかといえばそういった会話は嫌いですのでこの方と話すのは気楽ですね。世間一般で言うところの……友達、というものなのでしょうか。


彼女の顔を見つめてそんなことを思っていると、どうやらあちらはなにかただごとでないことが起こっていることが予測された。

さっぱりしているとはいえ侯爵家のご令嬢。普段は一挙一動に品があり、落ち着いている方だというのになぜだか今は走りはしていないもののカツカツカツカツと急ぎ足で、顔も取り繕うこともせずに、焦燥の念が見て取れます。


「ごきげんよう、レイリア様。」

「それで、どうなさいました？そんなに急いで。」

そう言うと、彼女は「やはり聞いていませんよね？」と小さくつぶやきこちらに顔を向けて喋りだす。

「レイリア様、どうなさったもなにも、貴女に関係することで今大変なことが起きてますの！」

そして聞こえてきたのは信じられないような言葉だった。


「アレン王子が貴女と婚約破棄をするだなんてほざいていらっしゃいます。」


……はい？