15 / 50
高等部二年生
014
しおりを挟む
昼食の取り方は人それぞれだけど、一番生徒の利用数が多いのが食堂だった。
食堂での食事は全て無料だからね。
料理は個別に注文するか、ビッフェ形式か選べる。
午前中に連絡すれば配達サービスも受けられるけど、こっちは有料。
他にも、人混みを嫌う生徒なんかは、購買部や喫茶スペースなどの有料サービスを利用していた。
食堂は広く、一階に二百席が設けられている他、テラス席もある。
更に一階より一メートルほど床を上げた半二階席もあり、ぼくたちはそちらへ向かう。
腕を組んで歩くなんていつぶりだろう? すぐに思いだせないほど昔なのは確かだ。
つい手と足が同時に出てしまいそうになるのは許して欲しい。
だってなんか気恥ずかしいんだもん! 怜くんはエスコートに馴れてるから、動じてないけどさ!
階段でつんのめりそうになりながら、ぼくは意識して足を動かした。
学園には常に「目立つ生徒」というのが存在する。
半二階席は、そんな彼らであっても他の生徒の視線を気にすることなく食事が取れるようにと、学園側の配慮で造られたものだ。
だから自ずと使用者は限られる。
怜くんなんて、その代表みたいなものだよね。
今も食堂に姿を見せただけで、一階席の生徒がざわついてたし。
ソファが置かれた歓談スペースを通り過ぎ、円卓の席に腰を下ろす。
席に着くと、係の人がメニューを持ってきてくれた。
これも半二階席ならではのサービスだ。
一階席は利用者数が多いから、セルフサービスとなっている。
うーん、シェフの日替わりランチでいいかな。今のところハズレはない。
係の人にメニューを伝えると、怜くんも決めたらしくメニューを返しているところだった。
「もう落ち着いたか?」
「うん、怜くん、ごめんね。腰大丈夫だった?」
「それはもう忘れろ。お前の腕はどうなんだ」
「腕……?」
何のことかと首を傾げれば、朝の、と答えがあって合点がいく。
もしかしてずっと心配してくれてたのかな?
「忘れてたぐらいには大丈夫!」
えへへ、と笑いかければ、怜くんは肩から力を抜いた。
「ならいいが。それと、今後は嫉妬にかられたとしても穏便に頼むぞ」
「はい……」
何度も怜くんの体に痣を作っている身としては、素直に反省するしかない。
今回のは痣にならなかったよね?
「でも、とても情熱的な告白でした!」
「南くんはマネしないようにね」
「眞宙様に抱き付くなんて、ボクには恐れ多くて無理です!」
どうやら南くんの目には、ぼくが怜くんに勢い良く抱き付いたように見えたみたいだ。
間違いではない……のかな?
「そういえば怜は、何を楽しそうに話してたの?」
眞宙くんの怜くんへの質問に、ぼくはテーブルの下でギュッと手を握った。
聞きたいような、聞きたくないような……そんな相反する感情に、胸がざわつく。
一方尋ねられたほうの怜くんは、困ったように視線を宙に彷徨わせた。
「何を……と言われてもな。俺にはあまり自覚がないんだが」
あぁ、無意識の内に笑顔になるほど楽しかったんだ。
やっぱりゲーム主人公くんは凄いな。
きっと簡単に怜くんの心を開いてしまったに違いない。
「強いて面白かったことと言えば、圭吾が友人を作っているのを目撃したことか? あんな口の悪い奴相手と関係を築こうなんて、物好きもいたものだな、と」
ほら、やっぱりゲーム主人公……くん? あれ?
「怜くんが、ゲ……じゃない、えーと、編入生くんと喋ってたんじゃないの?」
「別に何も話してないぞ? 圭吾は話してたがな。外部生同士で話が合ったんだろ」
あれぇー?
ちょっと待って、ゲーム主人公くんが出会うのって桜川くんのほうが先だっけ? ……そっか、友達枠だもんね。じゃあ怜くんとは?
記憶の中から、ゲーム主人公くんが怜くんと出会うイベントを探す。
えーと……なるほど、始業式や教室では一方的に見てるだけだったんだね。目立つ人がいるなーと。
ってことは、完全にぼくの早とちりじゃないか! 恥ずかしいっ!
そりゃ突然怜くんにタックルかまして、睨み付けられたらゲーム主人公くんも驚くよね!
「保、どうしたの? 顔が真っ赤だけど」
「今はそっとしておいて……」
額に手をやって熱を計ろうとしてくれる眞宙くんに、大丈夫だからと答えながら、両手で顔を覆う。
落ち着こう、落ち着くんだ。
まだイベントが発生していないということは、正式な怜くんとの出会いイベントが別にあるはずで。
確かゲーム主人公くんの存在感を見せ付ける一幕だった。
「うわっ、なんだここ!?」
「半二階席は、特別仕様なんだ。一般生徒は使わない」
少年らしい高めの声と、低い声が聞こえてきて、階段のほうを振り向く。
そこには半二階席に上がってきた、もっさりとした黒髪に分厚い瓶底眼鏡のゲーム主人公くんと、風紀委員長になった上村くんの姿があった。
ゲーム主人公くんの背は高くなく、上村くんのほうが、顔半分ほど高い。
二人が並んでいる光景を見て、ぼくは怜くんとの出会いイベントを思いだした。
そうだ! 食堂の造りの違いを見たゲーム主人公くんが、それはおかしいって言い出すんだ!
食堂での食事は全て無料だからね。
料理は個別に注文するか、ビッフェ形式か選べる。
午前中に連絡すれば配達サービスも受けられるけど、こっちは有料。
他にも、人混みを嫌う生徒なんかは、購買部や喫茶スペースなどの有料サービスを利用していた。
食堂は広く、一階に二百席が設けられている他、テラス席もある。
更に一階より一メートルほど床を上げた半二階席もあり、ぼくたちはそちらへ向かう。
腕を組んで歩くなんていつぶりだろう? すぐに思いだせないほど昔なのは確かだ。
つい手と足が同時に出てしまいそうになるのは許して欲しい。
だってなんか気恥ずかしいんだもん! 怜くんはエスコートに馴れてるから、動じてないけどさ!
階段でつんのめりそうになりながら、ぼくは意識して足を動かした。
学園には常に「目立つ生徒」というのが存在する。
半二階席は、そんな彼らであっても他の生徒の視線を気にすることなく食事が取れるようにと、学園側の配慮で造られたものだ。
だから自ずと使用者は限られる。
怜くんなんて、その代表みたいなものだよね。
今も食堂に姿を見せただけで、一階席の生徒がざわついてたし。
ソファが置かれた歓談スペースを通り過ぎ、円卓の席に腰を下ろす。
席に着くと、係の人がメニューを持ってきてくれた。
これも半二階席ならではのサービスだ。
一階席は利用者数が多いから、セルフサービスとなっている。
うーん、シェフの日替わりランチでいいかな。今のところハズレはない。
係の人にメニューを伝えると、怜くんも決めたらしくメニューを返しているところだった。
「もう落ち着いたか?」
「うん、怜くん、ごめんね。腰大丈夫だった?」
「それはもう忘れろ。お前の腕はどうなんだ」
「腕……?」
何のことかと首を傾げれば、朝の、と答えがあって合点がいく。
もしかしてずっと心配してくれてたのかな?
「忘れてたぐらいには大丈夫!」
えへへ、と笑いかければ、怜くんは肩から力を抜いた。
「ならいいが。それと、今後は嫉妬にかられたとしても穏便に頼むぞ」
「はい……」
何度も怜くんの体に痣を作っている身としては、素直に反省するしかない。
今回のは痣にならなかったよね?
「でも、とても情熱的な告白でした!」
「南くんはマネしないようにね」
「眞宙様に抱き付くなんて、ボクには恐れ多くて無理です!」
どうやら南くんの目には、ぼくが怜くんに勢い良く抱き付いたように見えたみたいだ。
間違いではない……のかな?
「そういえば怜は、何を楽しそうに話してたの?」
眞宙くんの怜くんへの質問に、ぼくはテーブルの下でギュッと手を握った。
聞きたいような、聞きたくないような……そんな相反する感情に、胸がざわつく。
一方尋ねられたほうの怜くんは、困ったように視線を宙に彷徨わせた。
「何を……と言われてもな。俺にはあまり自覚がないんだが」
あぁ、無意識の内に笑顔になるほど楽しかったんだ。
やっぱりゲーム主人公くんは凄いな。
きっと簡単に怜くんの心を開いてしまったに違いない。
「強いて面白かったことと言えば、圭吾が友人を作っているのを目撃したことか? あんな口の悪い奴相手と関係を築こうなんて、物好きもいたものだな、と」
ほら、やっぱりゲーム主人公……くん? あれ?
「怜くんが、ゲ……じゃない、えーと、編入生くんと喋ってたんじゃないの?」
「別に何も話してないぞ? 圭吾は話してたがな。外部生同士で話が合ったんだろ」
あれぇー?
ちょっと待って、ゲーム主人公くんが出会うのって桜川くんのほうが先だっけ? ……そっか、友達枠だもんね。じゃあ怜くんとは?
記憶の中から、ゲーム主人公くんが怜くんと出会うイベントを探す。
えーと……なるほど、始業式や教室では一方的に見てるだけだったんだね。目立つ人がいるなーと。
ってことは、完全にぼくの早とちりじゃないか! 恥ずかしいっ!
そりゃ突然怜くんにタックルかまして、睨み付けられたらゲーム主人公くんも驚くよね!
「保、どうしたの? 顔が真っ赤だけど」
「今はそっとしておいて……」
額に手をやって熱を計ろうとしてくれる眞宙くんに、大丈夫だからと答えながら、両手で顔を覆う。
落ち着こう、落ち着くんだ。
まだイベントが発生していないということは、正式な怜くんとの出会いイベントが別にあるはずで。
確かゲーム主人公くんの存在感を見せ付ける一幕だった。
「うわっ、なんだここ!?」
「半二階席は、特別仕様なんだ。一般生徒は使わない」
少年らしい高めの声と、低い声が聞こえてきて、階段のほうを振り向く。
そこには半二階席に上がってきた、もっさりとした黒髪に分厚い瓶底眼鏡のゲーム主人公くんと、風紀委員長になった上村くんの姿があった。
ゲーム主人公くんの背は高くなく、上村くんのほうが、顔半分ほど高い。
二人が並んでいる光景を見て、ぼくは怜くんとの出会いイベントを思いだした。
そうだ! 食堂の造りの違いを見たゲーム主人公くんが、それはおかしいって言い出すんだ!
182
あなたにおすすめの小説
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。
天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。
成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。
まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。
黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
朝目覚めたら横に悪魔がいたんだが・・・告白されても困る!
渋川宙
BL
目覚めたら横に悪魔がいた!
しかもそいつは自分に惚れたと言いだし、悪魔になれと囁いてくる!さらに魔界で結婚しようと言い出す!!
至って普通の大学生だったというのに、一体どうなってしまうんだ!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる