怜くん、ごめんね!親衛隊長も楽じゃないんだ!

楢山幕府

文字の大きさ
16 / 50
高等部二年生

015

しおりを挟む
「一般生徒は使わないって何だよ? 校則にも、生徒はみんな平等だって明記されてるのに、特権階級があるなんておかしいだろ!?」

 あー……そういえば、校則には平等だって書いてあるんだっけ……。
 建前ってやつだね。生徒間の実情はお察し。
 ただ先生たちは生徒のことを公平に扱ってくれるから、先生たちにしてみれば生徒が平等であるのは事実だ。
 よく通るゲーム主人公くんの声に、怜くんたちも階段のほうへ視線を向けた。

「あれは……編入生か」
七瀬ななせ都生ときくんだっけ? 二年生からの編入なんて珍しいよね。突然親御さんの海外赴任が決まって、全寮制の鳳来学園へ編入を決めたという話だけど」
「流石、眞宙様! お詳しいですね!」
「生徒会室に資料があったからね」

 ゲーム主人公くんは、七瀬くんって言うのか!
 ゲームプレイ時は、名前を変更してたから、デフォルト名が記憶に残ってなかったんだよね。

「親衛隊なんてのもわけ分かんねぇし。一生徒を『様』付けして特別扱いするなんて、どうかしてる」

 この言葉には、南くんの動きが止まった。
 あああ、七瀬くん声が通るから! 親衛隊には、枠組みを作ることで、狂信的な生徒を暴走させないって抑止力もあったりね! するんだけどね! 編入してきたばかりの七瀬くんには分からないよねー……。
 他にも風紀委員との情報共有があるけど、これはどちらかというと親衛隊員を守るためのものだ。

「どうかしてる、か……」

 怜くんが七瀬くんの言葉尻を拾うと、七瀬くんもぼくたちの存在に気付いた。
 分厚い瓶底眼鏡のせいで、その視線が誰の上で止まっているのかまでは分からない。
 けれど少なくともこれが、七瀬くんと怜くんとの出会いイベントになるはずだ。

「生徒会長だって一生徒であることには変わりないだろ? なのに『怜様』とか呼ばれて、一般生徒を従えるなんて、何考えてるんだ?」
「ふん、それがお前の理屈か」

 階段の傍で、こちらに体を向けて立つ七瀬くん。
 片や頬杖を付きながら、足を組んで座る怜くんの姿は、正に氷の帝王様だった。
 ただ座ってるだけでも絵になるなんて、怜くんはやっぱり格好良いなぁ。

「なるほど。お前の言う通り、生徒会長である俺も学園の一生徒に過ぎない。だから何だ? おかしいと感じるのは、お前の主観でしかない」
「それは……」
「この学園の現状について、異を唱えるのは簡単だろう。誰だって口では好きなように言えるからな」
「でもっ、おかしいのは確かだろ! 普通の学校じゃあり得ないことだ!」

 うんうん、鳳来学園は普通の学校じゃないからね。
 何せBL恋愛シミュレーションゲームの舞台だから。
 全寮制の男子校ってだけでも、特殊な環境だと思うよ。
 だから親衛隊っていう独自のルールもあるんだけど。
 今日一日で、外部生が学園の全てを理解するのは、無理な話だ。

 けどゲーム主人公くんだけあって、七瀬くんは怜くんに対しても引かない。
 そんな七瀬くんに、隣にいる上村くんは感心しているようだった。
 眞宙くんは、怜くんと七瀬くんのやり取りを面白そうに眺めている。
 ぼくはといえば、ようやく記憶が現状に追いついて、リアルの世界で再現されるゲームのやり取りにワクワクしています!

「だったら、お前は『新しい目』になれるか?」
「え……?」
「七瀬、お前にも特別な立場を用意してやる。そこから何が見えるか、何ができるか、よくよく考えてみるがいい」

 怜くんは言い終えると、七瀬くんから興味をなくしたように視線を円卓に戻した。
 そのさり気ない仕草は、正しくイエスッ、クールビューティ怜様!
 これで七瀬くんが生徒会に入ることが決まるんだよね!
 七瀬くんは呆然としてたけど、上村くんがフォローしてくれているみたいだった。

「眞宙、七瀬を監査役員の補佐に付けるぞ」
「え? 怜、本気なの?」

 監査役員は、会費が正しく使われているかを、その名の通り監査するのが仕事だ。
 各部活の財務資料を確認したり、私的流用などの不正がないかも調べるので、中々大変な役職だった。
 補佐といっても生徒会の役員に変わりはないので、もちろん発言権もある。
 怜くんとしては、監査からの視点で学園全体を見てもらい、七瀬くんの発言に期待したいんだろう。

「俺に面と向かって発言できる人間は少ない。圭吾はどちらかといえば、こちら側の人間だしな。それにあいつなら、俺たちとは違った視点からものを見れそうだ」
「ただ無知なだけかもしれないよ?」
「少なくとも学園外の『普通』を知っている時点で、無知だとも言い切れないだろう。使い物にならないようなら切り捨てるさ。保も構わないだろ?」
「ぼくは、まぁ……」

 ぼくが直接七瀬くんと関われるのも生徒会だけだ。
 よしっ、次からは取り乱すことなく、ちゃんと七瀬くんと対立するぞ!
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

【完結】婚約破棄したのに幼馴染の執着がちょっと尋常じゃなかった。

天城
BL
子供の頃、天使のように可愛かった第三王子のハロルド。しかし今は令嬢達に熱い視線を向けられる美青年に成長していた。 成績優秀、眉目秀麗、騎士団の演習では負けなしの完璧な王子の姿が今のハロルドの現実だった。 まだ少女のように可愛かったころに求婚され、婚約した幼馴染のギルバートに申し訳なくなったハロルドは、婚約破棄を決意する。 黒髪黒目の無口な幼馴染(攻め)×金髪青瞳美形第三王子(受け)。前後編の2話完結。番外編を不定期更新中。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

【完結】腹黒王子と俺が″偽装カップル″を演じることになりました。

Y(ワイ)
BL
「起こされて、食べさせられて、整えられて……恋人ごっこって、どこまでが″ごっこ″ですか?」 *** 地味で平凡な高校生、生徒会副会長の根津美咲は、影で学園にいるカップルを記録して同人のネタにするのが生き甲斐な″腐男子″だった。 とある誤解から、学園の王子、天瀬晴人と“偽装カップル”を組むことに。 料理、洗濯、朝の目覚まし、スキンケアまで—— 同室になった晴人は、すべてを優しく整えてくれる。 「え、これって同居ラブコメ?」 ……そう思ったのは、最初の数日だけだった。 ◆ 触れられるたびに、息が詰まる。 優しい声が、だんだん逃げ道を塞いでいく。 ——これ、本当に“偽装”のままで済むの? そんな疑問が芽生えたときにはもう、 美咲の日常は、晴人の手のひらの中だった。 笑顔でじわじわ支配する、“囁き系”執着攻め×庶民系腐男子の 恋と恐怖の境界線ラブストーリー。 【青春BLカップ投稿作品】

処理中です...