怜くん、ごめんね!親衛隊長も楽じゃないんだ!

楢山幕府

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高等部二年生

016※

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「えーと……それで、どうしてこんな状況に?」

 寮の怜くんの部屋で、うつ伏せになるぼく。
 その下には温かな体温があった。
 そして質問に対する答えは、頭上から聞こえてくる。
 見上げると、顎が怜くんの胸板に当たった。

「あの程度で嫉妬するぐらいだ。クラスが分かれてよほど寂しかったんだろ?」

 怜くんはベッドで仰向けになって、上にいるぼくを抱き締めながら、そんなことを言う。
 ぼく、寂しかったのかな……。
 中等部から分かっていた未来に、心の準備はできていると思ってた。
 けど、ぼくが考えていた以上に、備えられてなかったのかもしれない。
 だとすれば、あれだけ取り乱してしまったのも頷ける。
 しかし怜くんの上に乗ってしまっているこの体勢は、どうにかならないものか……。
 最初は二人でベッドをソファ代わりにしてたんだけど、気付いたら押し倒されるような形で転がって、この体勢で落ち着いた。
 押し倒されて反射的に強張った体も、怜くんに何度も頭を撫でられている内に弛緩している。
 今は怜くんに全体重をかけてしまわないよう、腰から下を彼の上からベッドに下ろすのに必死だ。

「あまりモゾモゾ動いてると襲うぞ」
「うぇ!? で、でも重くない?」

 そりゃ怜くんは見かけによらず、骨格はがっしりしてるけど!
 ぼくだって高等部に上がって、身長は一六五センチになったんだ。それ相応の体重もある。

「横になって重みが分散されてるからな。お前が思ってるほど重くはない。それよりお前も少しは体を鍛えろ。何だこの細い腰は」
「ひょっ!?」

 急に両手で腰を掴まれて焦る。
 怜くんの長い指が、脇腹にかかって余計焦る。
 他意はないんだろうけど、誰だって脇腹は敏感なはずだ。
 好きな人に触れられて、意識するなっていうほうが無理ー!
 慌てて怜くんの動きを制限するため、ぼくも手を重ねるけど、大した抑止力にはならず……。
 あろうことか怜くんは、体の厚みを測るためか、ぼくの腰周りを揉み出した。

「ウエストも六十センチはないんじゃないか?」
「っ……測った、こと、ないっ」

 これ以上は刺激に耐えられないと、ベッドに手を着く。そして起き上がろうとした途端、腰に腕を回された。

「怜くん!?」
「そう逃げなくてもいいだろ」

 がっちり腰をホールドされたので、ぼくはエビ反りの状態で、上半身だけを怜くんから離す格好になった。

「でも、眞宙くんが戻ってくるかもしれないし」
「そうだな。ベッドはパーテーションで区切られてるとはいえ、前を通れば丸見えだからな」

 寮の部屋の間取りはどこも変わらない。
 部屋の中央にパーテーションが置かれ、左右対称にベッドや勉強机が設置されている。
 同室になった生徒は、ドアの手前側か奥側、どちらのスペースを使用するか相談するところからはじまるのがお決まりだった。
 怜くんは奥側のスペースを使っているけど、部屋の中央を区切るパーテーションは、室内を行き来できるよう、片方の壁側に人が通れる空間が確保されている。
 わざわざ眞宙くんが怜くんのスペースに顔を出すとは思えないけど、出さないとも限らない。

「それに保は、声を抑えるのが苦手だからな」
「な、な、な!? っんきゃ!?」

 動揺していると、片手でお尻を掴まれた。
 抑えるべき「声」が何を指しているのか、見当がいって顔に熱が集中する。

「ほら、な」
「い、今のは怜くんが悪い! ってか、揉まないで……っ」

 既に指先がお尻の割れ目に入っていて気がきじゃない。
 腕から力が抜けて、また上半身を怜くんに密着させてしまう。
 こんなことなら、部屋着にしてるチェック柄のスウェットじゃなくて、ジーパンでも履いてくればよかった!

「一人のときはどうしてるんだ? まさか喘ぎ声を圭吾に聞かせてないだろうな?」
「聞かせるわけないでしょ!?」

 一人のときはトイレで静かにやってます!

「本当か? こんな簡単に声が出るのに?」
「ひぁっ!?」

 お尻ばかり意識していたら、前から股間に手を当てられる。
 あんまりだと睨み付けると、口端だけクッと上げたニヒルな表情を返された。

「セクハラよくない!」
「今更だろ。前と後ろ、どっちを揉まれたい?」
「や、だぁ……!」
「そうか、どっちもか」
「ひん!?」

 酷い質問に嫌だと答えたにもかかわらず、怜くんの両手が動き出す。
 臀部の感触を楽しむように、むにむにと揉まれながら、股間に置かれていた手で竿の形を探られた。

「んんっ、や……だめ、だって……ふっ」

 前後同時に刺激を与えられる手から逃げたくて腰を左右に動かすけど、イタズラな手は執拗にあとを追ってくる。

「ほら、もう前は硬くなってきた」
「怜くん、お願い……も、放して……っ」

 今ならまだ我慢できる。
 深呼吸すれば、体を落ち着かせられる。
 そう思うのに。

「ダメだ。眞宙がいつ戻ってきてもいいように、声を抑える練習だと思えばいいだろう?」
「そん、な……あっ!」

 遂に前にあった手が、下着の中に差し込まれた。
 ジーパンだったら、もう少し時間が稼げたかもしれないけど、スウェットのゴムに怜くんの手を阻む力があるはずもない。

「声、抑えろ」
「で、でも……んんっ」

 無茶な注文をしないで欲しい! いや、ここは頑張るべきなの!?
 怜くんの指先が、竿の付け根から裏筋をそろりと辿る。
 でも声は出しちゃいけなくて、とりあえず片手で自分の口を覆った。

「ふっ……っ……ん」

 何とか声は我慢してるけど、痛くしないよう加減されている動きがもどかしい。
 あくまで怜くんは指先で優しくぼくの中心を撫でるだけだった。
 潤滑油かゴムがあったら……って、何を考えてるんだ、ぼくは。
 脳裏を過ぎる願望に慌てて首を振るけど、体はもう熱くなってるのに、ゾワゾワとする細やかな快感だけを与えられる現状も辛い。
 感じるポイントを怜くんの指が通る度に、ヒクッと喉を鳴らすのが続く。

「物足りないか?」
「んっ……」

 微熱があるような気だるさで、怜くんを見上げる。
 ぼやける視界の中では、エメラルドグリーンの瞳が細められていた。

「眞宙が戻ったら止めるからな」

 言うなり、怜くんはズボンのポケットからゴムのパッケージを取り出すと、その端を口に咥えて引き千切った。
 躊躇いのない馴れた動作に見惚れていれば、下着ごとスウェットを少し下ろされる。
 ここまでくると、ぼくはもうされるがままだ。
 怜くんは手でスウェットの中に空間を作りながら、ぼくの中心にゴムをつける。
 ヌルッとした感触に亀頭が包まれ、腰が震えた。
 ズボンのポケットに入っていたからか、ゴムに冷たさはない。
 怜くんの指が輪っかを作り、ぼくの中心の根元を掴む。
 あぁ、やっと……。
 望んでいた刺激を与えられる期待で、ぼくの胸は高鳴った。
 その期待に応えるように、怜くんの指が上下に動き出す。
 キュッと竿を根元から締められ、絞り出されるような上下運動に、次第に息が上がっていく。

「ふっく……んっ、んっ!」

 ぼくの喘ぎは鼻を通って抜け、下腹部では、にちゃにちゃとゴムに付けられたローションが音を立てていた。
 自分でするより人にされるほうが、同じ動きでも気持ち良く感じるのはどうしてだろう。
 時折ズレる上下運動の間隔にさえも、熱情を煽られる。

「んっ、んっ、んっ」

 気付いたときには、額を怜くんの胸にこすり付けながら、自分でも腰を動かしていた。
 こんなところを眞宙くんに見られたら、言い訳のしようがないのに。
 早く、早く、と気持ちが急かされるのは、見られてしまうかもしれない焦りからなのか、ただの欲望からなのか分からない。
 腰の動きに合わせて、怜くんの手に圧力をかけられ瞼が震えた。
 先ほどの中途半端な刺激とは違い、明確な目的を持った動きに、熱が急速に集まっていく。
 そんなとき、ガチャッと部屋のドアが開けられる音が聞こえた。

「っ……っ……!」

 けどもう迫り来る熱量に動きは止められなくて。
 怜くんも手の動きを止めずぼくを絞り上げると、カリ首のくびれ部分を指先で撫でた。
 土壇場で異なる快感を与えられ、目の裏がチカチカする。

「ぁふっ、ふっ、んんー!!!」

 堪らず、怜くんのシャツを握り締めた。
 そして一気に脱力した後のことは、よく覚えていない。
 そっと掛け布団をかけられて――。

「次はお前が俺に奉仕しろよ」

 なんて物騒なことを、布団の上からポンポンと叩かれながら言われた気がしないでもないけど。
 ……聞かなかったことにしていいかな?
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